こだわりメモ帳

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・ 百先生月を踏む

2011年10月12日 | ◆ こんな本



 この本とどこで出会ったか定かでない。
この物語は作者のフィクションと巻末に付記されているが、
好きでたまらないという風情が、隅々まで溢れていて、
文章まで似てるのでないかと思ってします。
執筆中に急逝とあり、未完で末章はおわっているが、
本で読む縦書きの日本語のうつくしさ、つづりかたの美しさが独特である。

百先生月を踏む  より

 四月某日。
 久しぶりに日記をつけてみようか、という気になった。長つづきするかしないかは、私の周辺に何が起こるか次第であって、私の克己心や精神の持続性のせいではない。
 春先から左の耳の奥で遠慮がちにヴァイオリンが鳴り出し、桜のころに何やら感傷的なメロディーになったと想ったら、昨日それがサラサーテの<チゴイネルワイゼン>だと判ったので、早速小田原のレコード屋で買ってきて、右の耳で聴き比べてみたら、やはり<チゴイネルワイゼン>だった。岡山の中学生だったころから聴き憶えはあったが、なぜいまごろ帰ってきたのか解らない。
・・・・・・

百日記帳  より

内田百の小屋
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