2月23日、朝イチで大分県日田市の中心地から、北に向かって車を走らせました。
国道212号からそれて山道に入ると、次第に人家がなくなり、急坂の連続。40分近く走ると、谷筋にできた小さい集落に到着しました。
小鹿田(おんた)焼の里です。
小鹿田焼陶芸館の駐車場に入ると、他に観光客は来ていませんでした。
駐車場にあった見晴らし台に来ると、この風景。
陶芸館にあった説明によると、ここで窯が開かれたのは1705年のこと。以来、一子相伝で技法が伝えられてきて、現在、9軒の窯元があるそうです。
陶芸館から出て来ると、集落のどこかで、何か物がぶつかるような、かすかな音。
「ギー、ドスン! ギー、ドスン!」
この音の発生源、後で分かりました。
地図を片手に、集落の中の一本道を下りて行きました。
集落の真ん中を流れる谷川。右手には登り窯。
集落の真ん中に来ました。大きな共同の登り窯です。
窯の口をのぞき込むと、いい色に焼けたレンガ。
「ガーデニングに欲しいなぁ」
と思っていたら、思い出しました。
「ここ、サスペンスのロケ地じゃない!」
帰って調べたら、やはり!
片平なぎささん主演の『豊後一子相伝殺人事件』のロケ地でした。
気づくと、このあたりでも、あの音。
「ギー、ドスン! ギー、ドスン!」
音の方向に行ってみると、
石臼です。陶土でしょうか、杵で土をついていました。
反対側に回ると、
なるほど、谷川の水を利用して杵を動かしていたんですね。
上の高台で聞いた音の発生源、これでした。
谷川の隣りのお宅はというと…、
「寅さんのロケ地だ!」
ほら、
『男はつらいよ』第43作のオープニングの場面ですね。
ご当主が出て来られたので聞くと、土をついていたあれ、唐臼(からうす)だそうです。
各窯元には無人の販売所がありました。ちょっとのぞくと、
これが柳宗悦(やなぎむねよし)が「世界一の民芸」と称賛した小鹿田焼です。この図柄、小鹿田焼の代表的な技法飛び鉋(かんな)です。
B級品もあったので買いました。
左はB級の八寸大皿700円、右はB級のご飯茶碗400円。
いいお土産が買えました。
集落の一番下にあるそば屋のあたりに来ると、ここにも唐臼。
しばらく唐臼の音を聞いた後、
「さぁ、帰りましょ」
引き返していたら、共同窯の先の電柱の陰に、
「何だろう?」
下りて来るときには、気づきませんでした。
駐車場に戻ってくると、車が2台増えていました。
見晴らし台にもう一度立つと、あっちからも、こっちからも、唐臼の音が響いていました。
「ギー、ドスン! ギー、ドスン!」
この日見たあの風景は国の重要文化的景観、小鹿田焼は国の重要無形文化財、あの音は日本の音風景100選に認定されているそうですよ。