駄楽器駄日記(ドラム、パーカッション)

ロッキンローラーの打楽器日記

ロックンロール・ビートの真髄(2)

2008年02月18日 | ドラム&パーカッション
その2.ニュービートの呪縛からの解放
バンド活動を始めていろいろな曲をコピーし、様々なパターンの8ビートを学んだ。
だが自分の中には、まずこの「ドンパン・ドドパン」という絶大なるフレーズがあった。
あとのパターンといえば、バリエーションでバスドラを変化させるだけで自分のドラミングは表現できるのではないだろうか、といった感じだった。
あくまでもスネアは強く鋭く、2拍4拍のアタックこそがドラムの命、みたいな強い気持ちは変わらなかった。
勿論今でもその気持ちは忘れることはないのだが。
その後何年か経過してもなお、2拍4拍以外にスネアを入れることが「かっこ悪い」と感じてしまっていたのは、それは多分に教則レコードの洗脳によるものであったのだろうと思う。
例えば高校3年生の学園祭でベンチャーズの「ワイプ・アウト」をコピーしたとき、“「ドンパパ・ドンパ」というイモなフレーズ”を叩くのが恥ずかしく感じて、多少なりとも抵抗があった。
そんな当時の自分にとっての流行りは、キャロルのユウ岡崎氏のロックンロールだった。
2拍4拍にしっかりとバックビートを打ち込む、自分にとって典型的なニュービートだった。
キャロルは70年代のジャパニーズ・ロックンロールの王道で、そのコピーバンドは楽しかったし自分も得意だった。
すっかりロックンロールドラムのとりこになった自分にとって、「ドンパンドドパン」のリズムパターンは唯一無比、自分を表現できるものはこれ以外にないというくらいだった。

イアン・ペイスやジョン・ボーナムといった当時最強のロックドラムのバックビートにも強く影響されて、できる範囲でコピーしまくった。
今、考えてみてよく理解できるのは、当時のトップ・ドラマーのプレイは、いろいろなスネア打ちのパターンを熟知していてその上で2拍4拍の強力なバックビートを選択していた。
それに引き換え、自分はそれしか知らない井の中の蛙だった。

この時から現在まで自分の基本スタイルは変わっていないけれど、その後成人して参加したいろいろなバンドで出合ったブルースやソウル・ファンクという、3連系とか4ビート、16ビートのハネたリズムを学び、ロックンロール以外のリズムも面白いと思うようになって練習するようになった。
特に、4ビート系のハネたリズムには奥深い限りないバリエーションの難しさを、やればやるほど思い知らされてテクニックのない自分にとって、とことん思い悩んだ。
更にその後、オールディーズ・バンドに参加するようになって、オールド・ミュージックを聞き勉強する機会ができて、更に深く悩むこととなった。
オールディーズのレコードで聞くことのできるロックドラムというのは、軒並み“「ドンパパ・ドンパ」というイモなフレーズ”だった。
しかも、コピーしようにもベードラが聞こえなかったり、スネアだけしか聞こえなかったり、どう考えても二人以上のパーカッショニストでリズムを作っていたりと、ドラムセットという固定観念を外して聴かないとドラマーは何を叩いているか分からないという状況もあった。
しかし全般的に、ロックンロールからポップスまで、軽やかなリズムの多くのドラムパターンは、「ドンパパ・ドンパ」だった。そして、どのリズムもこれ以上ないというくらい曲にマッチしていて、どう考えてもカッコイイフレーズと認めざるを得ないのであった。

この頃、自分の前にあった大きな壁をどう打ち壊すか、悩みに悩んで一つの行動を起こすことにした。
それはただ単に基礎練習をストイックに行うということだった。
すると、見えなかったものが見えてくるようになった。難解なフレーズの輪郭が見えるようになったり、自分を縛り付けていた固定観念の殻が壊れていくような気がした。
自分としても、その昔の「ドンパン・ドドパン」の呪縛から離れないことには、コピーすら出来ないという状況になって新たに一から出直すような感じでコピーし直したものだった。
しかも、何度もレコードを繰り返し聴くうちに、同じ「ドンパパ・ドンパ」というリズムでもいろいろな表情があるということが分かってきて、今度はその奥の深いニュアンスの練習に取り組んだ。
簡単な例を述べると、「ドンパパ・ドンパ」の最初のパ、つまり2拍目にアクセントを入れるか、次の8分音音符のパにアクセントを入れるか、或いは4拍目のみにアクセントを入れるとか、更には全てにアクセントを入れるだとか、全ての表情が違って真剣にやればやるほど難しくて、しかし面白くなった。
それにしても、スティックのリムショットに掛ける位置が違うと、音色やアクセントがその都度変わってくるので、同じ「ドンパパ・ドンパ」でも音が変わってしまうので、安定させると言うことが思いのほか難しいのである。
自分がそんな叩き方のちょっとしたニュアンスで悩み倒して、ある程度安定するコツをやっと掴んで、「ドンパン・ドドパン」の呪縛から解放されたのは恥ずかしながら40歳を超えてからだ。

最初に8ビートを叩いてから、実に30有余年という年月が経過して今では自信を持って言えることだけど、最も熱い8ビートは、半世紀前にレコーディングされたドラマーの叩いたリズムと同じく、「ドンパパ・ドンパ」というリズムパターンである。
断言してもいいだろう。
コメント (2)
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