朽ち木の中を主な生活場所とするマメクワガタやチビクワガタなどの
フィグルス属 FIgulus のクワガタムシは成虫の雌雄判別がたやすくない種が多く
イオウマメクワガタ(以下イオウマメ)も例外ではありません。
飼育下ではそういった種の雌雄判別は蛹期と成虫の交尾時に行うのが
より確実で、簡単な方法とされています。
↓ イオウマメの新成虫
↓ イオウマメの蛹 メス
↓ ①イオウマメの蛹オス 交尾器露出
↓ ②イオウマメの蛹 オス
↓ ③イオウマメの蛹 オス
↓ ④イオウマメの蛹 オス
↓ ⑤イオウマメの蛹 オス
上画像①~⑤のように
オスはほとんどの角度でゼンマイ状の交尾器が見て取れるため判別は簡単です。
また、イオウマメの蛹の大きさは10mm程度と小さいので
見えにくい時はスマホのカメラなどで拡大するとよく見えます。
↓ メス ゼンマイ状の交尾器は見当たらない
幼虫期の雌雄判別
クワガタムシの場合、多くの種でメスの幼虫期には
腹部末端から3~4節目あたりの背中側体内に左右一対の卵巣が見て取れ
それをもって雌雄判別することができます。
当然、オスにはそれがありません。
↓ ヒョウタンクワガタの卵巣 終齢初期幼虫
幼虫の卵巣は
体が透けて見える終齢初期あたりが最も確認しやすく
成長するにつれ体の透明度は低くなるため見え難くなる傾向にあります。
また、マルバネクワガタのように卵巣そのものが見えにくく
幼虫期の雌雄判別が困難な種もいます。
↓ 参考画像:クワガタの幼虫は終齢後期になると体の透明度が低くなる
↓ チャイロマルバネの幼虫 終齢後期 雌雄不明
では、イオウマメの幼虫はどうでしょうか?
終齢初期の幼虫の側面~背中側を見ると
腹部末端から3~4節目あたりに左右一対の卵巣が見えるので
イオウマメは幼虫期でも雌雄判別が可能です。
ただし、先述の通り体内が透けて見え
ある程度にまで成長した終齢初期が雌雄判別の好機であることは言うまでもありません。
↓ イオウマメのメス 白っぽく見える班(卵巣)が左右一対ある
↓ 幼虫終齢初期のメス ピンぼけだが左右に卵巣が見える
卵巣は画像より実物のほうがわかりやすく、発見するのに苦労しませんでした。
↓ 終齢中~後期の幼虫 卵巣は見えにくい
↓ メス 終齢後期になると卵巣はわかりずらい
↓ 成虫での雌雄判別は難しい
↓ 羽化からある程度経過して黒くなった固体
羽化と共生酵母の取り込み
今回は、「イオウマメの幼虫期に見るオスとメス」と題しましたが
成虫時に雌雄判別が難しい種は
よりわかりやすく確実な蛹期に雌雄判別すればよいのですが
そのためにメスを蛹室から取り出して
人口蛹室やマット上など別の環境に移して羽化させる場合
気に留めておきたいことがあります。
メスの共生酵母の取り込みです。
記事「シェンクリングオオクワガタ・2-羽化」の『おまけ』の項↓
https://blog.goo.ne.jp/hiphop2121/c/963e731484331d1607af364bdf1f61e7
でも書きましたが
「生物の科学 遺伝vol.72 2018 No.4 [特集Ⅰ]クワガタムシ研究最前線」
棚橋薫彦,2018.クワガタムシの菌嚢と共生酵母. によると
幼虫の糞で固められた蛹室には
菌嚢由来の共生酵母が付着していると考えられており
クワガタムシのメスは(一部の種を除く)
羽化後に菌嚢を露出させて蛹室壁にこすりつけ
蛹室作成時に排出した共生酵母を再び菌嚢に取り込んでいるらしいのです。
そのため人工蛹室で羽化したメスは体内に共生微生物を取り込めず
それを次世代に伝えることができなくなるというのです。
↓ マット上で羽化したメスと、オスの蛹
↓ マット上で羽化したメスは共生酵母を体内に取り込めない?
自然蛹室外で羽化したメスの場合
その個体及びその子供たちにどのような影響が出るのかは定かではありませんが
雌雄判別等のため蛹室からメスの蛹を取り出し本来でない環境で羽化させるときは
必要最小数にとどめるのが好ましいのかもしれません。
参考文献:
棚橋薫彦,2018.クワガタムシの菌嚢と共生酵母.
「生物の科学 遺伝vol.72 2018 No.4 [特集Ⅰ]クワガタムシ研究最前線」
.株式会社エヌ・ティー・エス.
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