クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

ゲンシミヤマ・3-長い蛹室のわけ

2021-02-27 15:33:07 | ゲンシミヤマ

ディンティクルスゲンシミヤマ(以下ゲンシミヤマ)の羽化(脱皮)を観察しました。

 

 管理温度:19〜22度くらい

 幼虫期間:14ヶ月前後

 幼虫の餌:よく発酵した黒いマット約70%と黒土約30%

通常、クワガタムシの羽化は蛹がうつ伏せ状態になり

背中(前胸)あたりから腹部・頭部へと殻が縦に割けて脱皮をはじめます。

その様子を例えるなら

背中にファスナーが付いた「着ぐるみ」を四つん這いになって脱ぐような感じです。

↓ 背中の殻が割けて羽化が始まる(クルビデンスオオクワガタ オス)

↓ ジャワパリーオオクワガタの羽化(オス)

↓ ネパールコクワガタの羽化(オス)

また、飼育の場合、蛹室の大きさはマットや菌床の詰まり具合・水分・劣化等の

外部環境に影響されることは珍しくありませんが

物理的には成虫時の体長に加え、後翅が後ろに伸ばせる大きさであれば事は足ります。

↓ マルバネの蛹室は成虫より大きい程度(オキナワマルバネ メス)

↓ ドウイロクワガタの蛹室(オス)

↓ シェンクリングの蛹室

↓ マットが緩いため広くなった蛹室(パリーオオクワガタ オス) 

ゲンシミヤマは比較的硬く詰まったマットであっても

成虫体長の倍以上あるような長い蛹室を作りました。

↓ ゲンシミヤマ オスの蛹室

飼育ではありがちなことなので最初は気に留めませんでしたが

残りの個体も同様に長い蛹室を作るため羽化のタイミングを見計らい

その様子を覗いてみることにしました。

↓ 別固体の蛹室 →  約80mm ← (2021年2月26日現在前蛹) 

 

長い蛹室のわけ

今回飼育したゲンシミヤマの羽化は

先述のクワガタムシの一般的な脱皮スタイルとは少し異なり

頭部と胸部の境あたりから殻が割け、そのまま前進して抜けて出るような方法をとりました。

そのため脱皮直後は前胸以下の殻と生体が縦一列に並ぶので

ゲンシミヤマが飼育下で作った長い蛹室は

外部環境云々というよりも、必要な長さだったようです。

↓ 前胸部がほぼそのまま残る

↓ 殻と生体が縦一列に並ぶ(2021年2月14日 0:11撮影)

↓ 2021年1月17日 羽化当日のメス

⇩ 羽化後は殻を前方に移動させる

⇩ 羽化24時間ほどで上翅は黒くなった(メス)

↑ 腹部の膨らみはものすごい!

⇩ 羽化後19日経過、腹部は収まらない(メス)2021年2月5日

↓ 2021年2月5日 オスの蛹

↕ オスの交尾器

↓ 羽化当日 オス 2021年2月13日

↓ 殻を抜けて出る感じ

↓ 羽化後は殻を前方に引き寄せ羽の邪魔にならないようにする

↓ オス 胸部の横筋がはっきり見える

↓ 羽化から約10時間後 上翅の色付きは早い

↓ 羽化から約16時間後

ゲンシミヤマは羽化から1ヶ月以上経過しても腹部が上翅内に収まりません。

テネラルを終えて活動を始めるには時間がかかるようです。

また、体色は黒色〜赤みがかったものまで存在するそうで

今回羽化したメスは数日で黒色に安定しましたが

オスは羽化から2週間過ぎても赤みがあります。

↓ 羽化から41日経過のメス 腹部はまだ収まらない

↓ オス 羽化から2週間経過、赤みがある

☆画像追加(これより14枚):2021年4月18日 メスの羽化(深夜)

↓ 蛹室は中央付近が少し盛り上がる

↑ 羽化は頭部前方に空間を保って始まる

↓ 背中が割けてきた

↓ 胸部あたりから殻が割ける

↓ 中・後脚は既に脱皮済  後脚は殻を脱ぐのに重要な役割を果たす

↓ 後翅が出るころに蛹室の前方へ移動する

↓ 蛹殻がうまく剥がれないため生体についてきてしまった

↓ 羽化までの時間は約1時間・菌嚢が露出

↓ 菌嚢は、時間の経過とともに体内に格納されるはず?

 

人工蛹室について

最近は「人口蛹室」というのがよく使われ

観察や羽化不全防止等に一役買うこともありますが

ゲンシミヤマを人口蛹室で羽化させる場合

脱皮殻と生体が一時期縦並びするかもしれないことを意識するのもよいかもしれません。

また、これまで幾度か記事に書いてきましたが

メスの「共生酵母類取り込み」について

羽化後のある一定時間帯に行われる菌嚢(メスの体内にある器官)への

*共生酵母類取り込みを考慮するなら

ほとんどの種のメスは自然蛹室で羽化させるのが良いと思います。

 (*共生酵母菌類を蛹化時に排出して蛹室内壁に付着させ

 羽化後に露出した菌嚢を蛹室内壁にこすりつけて

 再び共生酵母菌類を体内に取り込み、それを菌嚢で育成する。

 そして、産卵時には菌嚢を露出させて

 卵にそれらの菌類を付着させることで母虫由来の菌類を子孫に伝搬する)

 

参考文献:

 棚橋薫彦, クワガタムシの菌嚢と共生酵母.

 「生物の科学 遺伝vol.72  2018  No.4 [特集Ⅰ]クワガタムシ研究最前線」

  発行: 株式会社エヌ・ティー・エス(2018年7月1日).

参考URL:

 クワガタムシ・コガネムシ類における昆虫-菌類の

 共生関係の解明と保全生物学的応用

 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J09621/2016/

 



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (鈴木裕之)
2021-03-03 01:28:24
こんばんは。お久しぶりです。 
以前の野外採りオオクワの所にコメント入れてます。見つかるようなら確認して下さい。
返信する
お久しぶりです。 (こよみ)
2021-03-03 21:30:08
こんばんは
コメントありがとうございました。
野外採りオオクワのほうにコメント入れました。
ラインのほうも登録ありがとうございました。
返信する

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