「吹き出物がいっぱい」、それは火山のことです。みなさんご存じのように、日本は火山が多いです。資料によりますと、過去1万年以内に活動があった火山は108個で、過去200万年に遡ると245個の火山があるそうです。ちなみに、日本の火山の平均寿命は40万年くらいだそうです。地球カレンダーでは45分です。
ところで、みなさんには知っていてもらいたいことがあります。日本には世界の気候に大きな影響を及ぼすような巨大噴火を起こした火山があるということです。それらは、九州、北海道、東北地方にある大規模カルデラ火山です。左の図は、それらのカルデラ火山の位置を示しています。阿蘇カルデラもそのうちの1つです。
さて、カルデラという専門用語が出てきましたが、「カルデラ」とは火山性の大型の陥没地形を表します。日本では直径が2km以上のものをカルデラと呼んでいます。また、「カルデラ」の語源ですが、これはポルトガル語の「大鍋」という意味からきています。つまり、大規模な火山性陥没地のようすが、あたかも「大鍋」のようにみえるので、このような名前がついたということです。
さて、そのようなカルデラがどのようにして出来たかを説明したのが、こちらの左の図になります。
要するに地下に溜まった大量のマグマが一度に噴出して、陥没したというものです。ただし、その噴火たるやそれは想像を絶するものです。このときの噴煙は、成層圏(高度2万m)を突き抜けます。その後、自重により噴煙は崩れ落ち、500°以上の高温粉体流が周囲を焼き尽くします。この高温粉体流を火砕流と言いますが、大規模火砕流の場合、千~数千km2(平方キロ)の範囲が、この高温の火砕流堆積物によって覆われてしまいます。
この写真は、砂嵐の写真ですが、おそらく500°以上の高温粉体流が都市を襲うときは、こんなかんじだと思います。粉体流のスピードは時速100キロから200キロで、これが都市部を襲えば、逃げることはまず不可能です。こないだの津波どころの騒ぎではないようなことが起こるということです。
実は、日本ではこういうことが過去に何度も起こっています。
身近な阿蘇を例に紹介したいと思います。
阿蘇火砕流の噴火は約27万年前に始り、約9万年前の間に4回の大規模な活動あったとされています。これらの大噴火と噴出物は古い方からAso-1、Aso-2、Aso-3、Aso-4と呼ばれていますが、このうち最後に起こった約9万年前のAso-4が最も規模が大きかったとされています。このときの火砕流は、阿蘇火山の周囲に広い台地を作り、さらに谷沿いを下り九州の東・北・西の海岸に到達すると、一部は海を流走して天草下島や山口県の秋吉台にまで達しました。想像を絶する超巨大噴火と言えます。 熊本県内では、これらの火砕流堆積物が溶結凝灰岩としていたるところで観察され、高千穂峡では100m近く堆積しています。また上空に舞い上がった火山灰は北海道にまで達し、約15cmの堆積があったことが知られています。このときの大噴火は、さながら「日本埋没」であったと言えます。
しかし、このような「日本埋没」は阿蘇に限った話しではありません。
最近12万年に日本で起こった噴出量100km3(立方キロメートル)に近いからそれ以上の超巨大噴火は9回起きています。このような超巨大噴火は一文明を滅ぼすほど巨大なものであるので、私は「壊滅噴火」と名付けています。一方、噴出量が30km3(キロ立方)の「破局噴火」を加えると、17回となり、7000年に1回の割合で破局噴火以上の大噴火が起こっていることになります。日本列島最後の超巨大噴火は7300年前の喜界カルデラの噴火ですので、日本列島では巨大噴火が秒読みに入っていると言えます。ちなみにAso-4クラスの壊滅噴火が現代で起こったとすると、犠牲者は1000万人を超えると推定されます。経済活動は完全にストップします。道路や電気送電は完全にマヒし、原発などでは完全電源喪失となり、核爆発がたぶん起こり、結果として火山灰とともに世界に放射性物質がまき散らされることになると思います。世界を巻き込んだ大災害ってところです。ちなみに、「破局噴火」クラスでは数十万人から数百万人の犠牲が出るとされています。
なんだか、大変、暗い話題になってしまいましたが、日本に住んでいる以上、このことは避けて通ることはできない話しなので、あえて紹介いたしました。最後の巨大噴火は7300年前なんですが、そのころには、日本人の祖先となるはずだった縄文人がいたわけですが、残念ながら、この出来事で九州の縄文文化は途絶えてしまいました。
さて、次の話題にいこうと思います。