『命のバトン』
〈中略〉
実は、おじさん、ちょーど君たちと同じ年頃のころ、ときどき眠れない夜がありました。
自分が「死んだ」ことを想像すると眠れなくなってしまったのね。自分がこの世から消えてなくなってしまうことを考えると、もう、怖くて怖くて・・・。
だってさ、誰だってさ、生まれてきたものは、死ぬわけでしょ、絶対に死ぬでしょ、死んじゃうでしょ、死ぬことはさけられないことだよね。
でもさ、こんなこと考えると、逆に死にたくないって強く思うよね、なのにゼッタイ死んでしまう。そしてね、ゼッタイ死ぬのに、なんでワザワザ生まれてきたんだろうって考えちゃうよね。そう思わない?。
ゼッタイ死ぬなら、そんなの最初から生まれてこなきゃいいのにって。
〈中略〉
おじさんは今年で40歳になります。現在の日本人の平均寿命はだいたい80歳だから、普通に生きているとすれば、おじさんは、今、人生の折り返し地点にいると言えるよね。それで「ゴール」を「死ぬ」ってことにすれば、毎日、毎日、そのゴールに近づいているわけだから、死ぬことがどんどんどんどん自分に近づいてるって意味になるよね。こんなふうに考えると、なんだか怖くなるよね。だけど、不思議なことに今はそれほど怖いとは思わなくなったよ。
みんなぁ、目を閉じてくれるかなぁ、そして机に伏せてくれるかなぁ
今からみんなを時空の旅に招待しようと思います。
みんなは宇宙の歴史は知っているかなぁ?。
宇宙の誕生は137億年前頃だったと言われています。ビックバンと呼ばれる大爆発によって宇宙は誕生し、次々と数えきれないほどの星雲が生まれたと考えられています。
最初はチリやガスなんだけど、それが次第に集まりだしていろんな大きさの星が生まれて、今から120億年前頃に2000億個以上の星やガスが集まって銀河系ができました。
地球は太陽を中心に回っている10数個の惑星のうちの一つだけど、地球は今から46億年前に銀河系の隅っこで生まれました。
地球は生まれた最初からだいたい今ぐらいの大きさだったらしいけど、生まれたすぐの頃は、隕石がたくさん衝突していて、ぶつかったときのエネルギーでめちゃくちゃ熱かったらしいです。そして地球の上空には衝突したときに発散したガスや水蒸気が分厚い雲を作って地球を覆っていましたが、あるとき、突然、雨となっていっきに降りだしました。その雨は、雨なんて生易しいものじゃなくて、嵐にちかかったと考えられていますが、その嵐は全地球上で一度ももやむことなく1000年続いたそうです。
そして、今から43億年前に原始の海がようやく出来上がりますが、そのころはまだ生物はいませんでした。それから最初の生命体が現れるまで3億年かかり、40億年前頃になってようやく細菌程度の生物が生まれました。細菌の大きさは1ミクロン、1mmの1/1000くらいの小さな小さな生き物です。その細菌の時代は長く続きました。約30億年間が細菌や微生物の時代だったと考えられています。ですが、10億年前くらいに地球は全て氷に閉ざされる時代があって、そのときに多くの微生物は死んでしまったと考えられています。
だけど、このときに生き残った生物は、氷が解けたあとに爆発的な進化をとげて、その頃になってやっと虫みたいな生物やコケみたいな植物が生まれました。そして3億年前ぐらいになると、昆虫、魚、両生類や爬虫類などの生物たちで地球は生命にあふれました。
だけど、また問題が発生します。2億5千万年前に、シベリアで日本の面積の5倍以上のドロドロに溶けた熱い溶岩が地中からいっきに噴き出してくるという大異変が起こって、そのとき、全地球上の95%の生物が絶滅しました。だけど、生物ってのはホントにしぶとくてたくましくって、その生き残りが恐竜として、その後、地球上で大繁栄したのです。しかし、恐竜も6千5百万年前には絶滅しちゃうよね。それは隕石の衝突による環境の大きな変化が原因だったんだよね。
恐竜が絶滅してからが哺乳類の時代になるんだけど、人類の祖先が現れるのは500万年前頃。そして100万年前からはだいたい10万年を周期に氷河期と温かい時期が繰り返して、最後の氷河期が終わったのが1万年前。ちなみに、僕たちが暮らしている県では9万年前に阿蘇山が大噴火を起こして、九州の生物の多くはそのときの大爆発の熱と灰で殆どが死滅しています。
さて、ここまで駆け足で地球の歴史を旅してきたけど、どうだろう、地球の歴史ってのは実は無数の生命が生まれては死んで、生まれては死んでの繰り返しだったことに気づいてもらえたかな。
みんな目を開けていいよ。
じゃぁ、みんなに質問。地球の46億年の歴史を1年にたとえると、人間の寿命ってどのくらいでしょう。
あのね、おじさん計算してみました、答えは0.5秒、たったの0.5秒。めちゃくちゃ短いよね。地球の歴史から考えるとね、人間の寿命なんてホントに短いんだよ。生きてるか死んでるかわからないくらい短くて、どうだっていいようなものなんだよね。取るに足りないない下らないものって考えることだってできるよね。
だけどね、君たちに気づいてもらいたいことがあるの。
それは何かっていうと、僕達が、今、ここにいるのは、40億年前から始まった命のリレーのおかげなんだってこと。
今、僕達は、生きてるみんなは、その命のリレーのトップを走っているんだ。みんなはトップランナーで、40億年前からの命のバトンが、みんなに託されているってことなんだね。
おじさんが、最初に話した子供の頃の疑問を憶えてる?。
「ぜったい死んじゃうのに、なんでワザワザ生まれてきたんだろう」って。
おじさん、最近ね、命のバトンを渡すことが生まれた理由じゃないのかなぁって思うようになったよ。
自分の命は自分だけの命のように思うけど、40億年の命のリレーが今の自分の姿であることを思うと、こりゃぁやっぱり大事にしていかないといかんなぁって思うわけ。確かに、地球の歴史からすると、人間の命なんて一瞬でチッポケでどうだっていいようなものなんだけど、パッと輝いているに違いないよね。おじさんは、目を閉じて命のことを考えると、今は無数の輝きを感じることができます。その輝きは、たぶん、君たちなんだろうね。
今日、君たちは、この道徳の授業を通して命の大切さを学んだことと思うけど、おじさんは今日、君たちに命のバトンを渡せたような気がします。
次は、君たちが次の世代に命のバトンを渡してください。
お話し聞いてくれてありがとう。
その後、命の授業を受けた子供たち全員から手紙が届きました。
その幾つかを紹介したいと思います。
東さんへ
東さん、先日は、おいそがしい中、仕事もとちゅうでやめてきて下さって、ありがとうございます。ぼくは、東さんの話の中で「命は42億年前くらいから、命のリレーがつづいている」と「人間の命は、地球の歴史を1年間でたとえると0.5秒」ということが心に残っています。東さんが「時空の旅」といって想像するのが簡単でした。ぼくも、ねながら、死んだらどうしようと思う事もたまにあります。でも、この話をきいて恐くなくなりました。
宇宙から始まり、生き物の死んだり生まれたりと命のリレーが続いていて、今度は、バトンを次にぼくたちがわたす番です。だから精一っぱい生きていきたいと思います。ぼくたちは、平均じゅみょうは80才で、あと約68年もあります。なので、自殺のような事はせず、生きていきたいと思います。東さん、本当にありがとうございました。また、よろしくお願いします。
桜丘東小学校6年2組 Y・S
東さんへ
先日は、おいそがしい中、私達のためにきてくださってありがとうございました。東さんの話はとてもためになりました。
いつもは、話をしんけんにきかない私が、いつのまにか、東さんの話をしんけんに聞いていました。
私達に分かりやすく、楽しく話してくれて、話したいこと東さんの気持ちがよく伝わってきました。
私達はどうせ死ぬうんめい、もう、もどらない命、でも、その一生を大切に精いっぱい生きるということを、東さんの話で分かりました。
私も、先祖からもらった命、私の命を大切にして精いっぱい生きたいと思います。ありがとうございました。
6年2組 S・M
東さんへ
先日はお忙しい中、わざわざぼくたちのために、おいで下さり誠に有難うございました。目をとじて、時空の旅に行ったとき、東さんのお話と、宇宙の映像が合ってとてもわかりやすかったです。何十億年を1年にたとえて、人間のじゅみょうは0.5秒ということがわかりました。そして、何十億年を1年にたとえてではなく、1日でたとえてみると、0.0013698・・・・・・・とずっと続いていました。
ぼくも、時々死について考えたことがあります。「なんで生まれてきたのだろう」や「生まれてこなかったらどうしよう」などと考えてみましたが、東さんの話をきいて、「命のバトン」をつなぐために生まれてきたんだなと思いました。このたびは本当においそがしい中、本当に有難うございました。
6年2組 N・ H
涙なしでは読めなかった。
子供たちに思いを伝えることができて本当に嬉しかった。
ありがとう。
〈中略〉
実は、おじさん、ちょーど君たちと同じ年頃のころ、ときどき眠れない夜がありました。
自分が「死んだ」ことを想像すると眠れなくなってしまったのね。自分がこの世から消えてなくなってしまうことを考えると、もう、怖くて怖くて・・・。
だってさ、誰だってさ、生まれてきたものは、死ぬわけでしょ、絶対に死ぬでしょ、死んじゃうでしょ、死ぬことはさけられないことだよね。
でもさ、こんなこと考えると、逆に死にたくないって強く思うよね、なのにゼッタイ死んでしまう。そしてね、ゼッタイ死ぬのに、なんでワザワザ生まれてきたんだろうって考えちゃうよね。そう思わない?。
ゼッタイ死ぬなら、そんなの最初から生まれてこなきゃいいのにって。
〈中略〉
おじさんは今年で40歳になります。現在の日本人の平均寿命はだいたい80歳だから、普通に生きているとすれば、おじさんは、今、人生の折り返し地点にいると言えるよね。それで「ゴール」を「死ぬ」ってことにすれば、毎日、毎日、そのゴールに近づいているわけだから、死ぬことがどんどんどんどん自分に近づいてるって意味になるよね。こんなふうに考えると、なんだか怖くなるよね。だけど、不思議なことに今はそれほど怖いとは思わなくなったよ。
みんなぁ、目を閉じてくれるかなぁ、そして机に伏せてくれるかなぁ
今からみんなを時空の旅に招待しようと思います。
みんなは宇宙の歴史は知っているかなぁ?。
宇宙の誕生は137億年前頃だったと言われています。ビックバンと呼ばれる大爆発によって宇宙は誕生し、次々と数えきれないほどの星雲が生まれたと考えられています。
最初はチリやガスなんだけど、それが次第に集まりだしていろんな大きさの星が生まれて、今から120億年前頃に2000億個以上の星やガスが集まって銀河系ができました。
地球は太陽を中心に回っている10数個の惑星のうちの一つだけど、地球は今から46億年前に銀河系の隅っこで生まれました。
地球は生まれた最初からだいたい今ぐらいの大きさだったらしいけど、生まれたすぐの頃は、隕石がたくさん衝突していて、ぶつかったときのエネルギーでめちゃくちゃ熱かったらしいです。そして地球の上空には衝突したときに発散したガスや水蒸気が分厚い雲を作って地球を覆っていましたが、あるとき、突然、雨となっていっきに降りだしました。その雨は、雨なんて生易しいものじゃなくて、嵐にちかかったと考えられていますが、その嵐は全地球上で一度ももやむことなく1000年続いたそうです。
そして、今から43億年前に原始の海がようやく出来上がりますが、そのころはまだ生物はいませんでした。それから最初の生命体が現れるまで3億年かかり、40億年前頃になってようやく細菌程度の生物が生まれました。細菌の大きさは1ミクロン、1mmの1/1000くらいの小さな小さな生き物です。その細菌の時代は長く続きました。約30億年間が細菌や微生物の時代だったと考えられています。ですが、10億年前くらいに地球は全て氷に閉ざされる時代があって、そのときに多くの微生物は死んでしまったと考えられています。
だけど、このときに生き残った生物は、氷が解けたあとに爆発的な進化をとげて、その頃になってやっと虫みたいな生物やコケみたいな植物が生まれました。そして3億年前ぐらいになると、昆虫、魚、両生類や爬虫類などの生物たちで地球は生命にあふれました。
だけど、また問題が発生します。2億5千万年前に、シベリアで日本の面積の5倍以上のドロドロに溶けた熱い溶岩が地中からいっきに噴き出してくるという大異変が起こって、そのとき、全地球上の95%の生物が絶滅しました。だけど、生物ってのはホントにしぶとくてたくましくって、その生き残りが恐竜として、その後、地球上で大繁栄したのです。しかし、恐竜も6千5百万年前には絶滅しちゃうよね。それは隕石の衝突による環境の大きな変化が原因だったんだよね。
恐竜が絶滅してからが哺乳類の時代になるんだけど、人類の祖先が現れるのは500万年前頃。そして100万年前からはだいたい10万年を周期に氷河期と温かい時期が繰り返して、最後の氷河期が終わったのが1万年前。ちなみに、僕たちが暮らしている県では9万年前に阿蘇山が大噴火を起こして、九州の生物の多くはそのときの大爆発の熱と灰で殆どが死滅しています。
さて、ここまで駆け足で地球の歴史を旅してきたけど、どうだろう、地球の歴史ってのは実は無数の生命が生まれては死んで、生まれては死んでの繰り返しだったことに気づいてもらえたかな。
みんな目を開けていいよ。
じゃぁ、みんなに質問。地球の46億年の歴史を1年にたとえると、人間の寿命ってどのくらいでしょう。
あのね、おじさん計算してみました、答えは0.5秒、たったの0.5秒。めちゃくちゃ短いよね。地球の歴史から考えるとね、人間の寿命なんてホントに短いんだよ。生きてるか死んでるかわからないくらい短くて、どうだっていいようなものなんだよね。取るに足りないない下らないものって考えることだってできるよね。
だけどね、君たちに気づいてもらいたいことがあるの。
それは何かっていうと、僕達が、今、ここにいるのは、40億年前から始まった命のリレーのおかげなんだってこと。
今、僕達は、生きてるみんなは、その命のリレーのトップを走っているんだ。みんなはトップランナーで、40億年前からの命のバトンが、みんなに託されているってことなんだね。
おじさんが、最初に話した子供の頃の疑問を憶えてる?。
「ぜったい死んじゃうのに、なんでワザワザ生まれてきたんだろう」って。
おじさん、最近ね、命のバトンを渡すことが生まれた理由じゃないのかなぁって思うようになったよ。
自分の命は自分だけの命のように思うけど、40億年の命のリレーが今の自分の姿であることを思うと、こりゃぁやっぱり大事にしていかないといかんなぁって思うわけ。確かに、地球の歴史からすると、人間の命なんて一瞬でチッポケでどうだっていいようなものなんだけど、パッと輝いているに違いないよね。おじさんは、目を閉じて命のことを考えると、今は無数の輝きを感じることができます。その輝きは、たぶん、君たちなんだろうね。
今日、君たちは、この道徳の授業を通して命の大切さを学んだことと思うけど、おじさんは今日、君たちに命のバトンを渡せたような気がします。
次は、君たちが次の世代に命のバトンを渡してください。
お話し聞いてくれてありがとう。
その後、命の授業を受けた子供たち全員から手紙が届きました。
その幾つかを紹介したいと思います。
東さんへ
東さん、先日は、おいそがしい中、仕事もとちゅうでやめてきて下さって、ありがとうございます。ぼくは、東さんの話の中で「命は42億年前くらいから、命のリレーがつづいている」と「人間の命は、地球の歴史を1年間でたとえると0.5秒」ということが心に残っています。東さんが「時空の旅」といって想像するのが簡単でした。ぼくも、ねながら、死んだらどうしようと思う事もたまにあります。でも、この話をきいて恐くなくなりました。
宇宙から始まり、生き物の死んだり生まれたりと命のリレーが続いていて、今度は、バトンを次にぼくたちがわたす番です。だから精一っぱい生きていきたいと思います。ぼくたちは、平均じゅみょうは80才で、あと約68年もあります。なので、自殺のような事はせず、生きていきたいと思います。東さん、本当にありがとうございました。また、よろしくお願いします。
桜丘東小学校6年2組 Y・S
東さんへ
先日は、おいそがしい中、私達のためにきてくださってありがとうございました。東さんの話はとてもためになりました。
いつもは、話をしんけんにきかない私が、いつのまにか、東さんの話をしんけんに聞いていました。
私達に分かりやすく、楽しく話してくれて、話したいこと東さんの気持ちがよく伝わってきました。
私達はどうせ死ぬうんめい、もう、もどらない命、でも、その一生を大切に精いっぱい生きるということを、東さんの話で分かりました。
私も、先祖からもらった命、私の命を大切にして精いっぱい生きたいと思います。ありがとうございました。
6年2組 S・M
東さんへ
先日はお忙しい中、わざわざぼくたちのために、おいで下さり誠に有難うございました。目をとじて、時空の旅に行ったとき、東さんのお話と、宇宙の映像が合ってとてもわかりやすかったです。何十億年を1年にたとえて、人間のじゅみょうは0.5秒ということがわかりました。そして、何十億年を1年にたとえてではなく、1日でたとえてみると、0.0013698・・・・・・・とずっと続いていました。
ぼくも、時々死について考えたことがあります。「なんで生まれてきたのだろう」や「生まれてこなかったらどうしよう」などと考えてみましたが、東さんの話をきいて、「命のバトン」をつなぐために生まれてきたんだなと思いました。このたびは本当においそがしい中、本当に有難うございました。
6年2組 N・ H
涙なしでは読めなかった。
子供たちに思いを伝えることができて本当に嬉しかった。
ありがとう。