これは、今から30年以上前の出来事だ。ある春の日、マタギは、当時元気だった母を連れて山菜採りに出かけた。山形から100㎞以上も離れた場所だったが、山菜の宝庫と言ってよい場所で、ここでなら母親も喜んで山菜採りを楽しんでくれるだろうと考えてのことだった。
ところが、目的地が近づくにつれて異常に気が付いた。途中から後ろについてきていた車がどこまでも離れないのだ。マタギの車は、山奥の林道に入る。しかし、その車も後をついてくる。
結局、目的地の林道終点まで後ろについてきた。車を止めると、後続の車から出てきたのは、同じく母親を乗せてきたT氏だった。
その後、二世帯の家族で山菜採りを堪能して帰ることができた。
「たくさん採れて良かったわねえ。」
「ほんとうに。」
喜ぶ親たちを見ながら、
「なんで同じ日の同じ時刻に同じ場所に集まれるんだず。」
「ふっふっふ、おらだ(俺達)は、赤い糸で結ばっているんだず。」
「んだみだいだな。」
・・・
さて、本日。ちょっと、山の様子を調べるために、朝仕事に某所に出かけてみた。平日の早朝だから、当然誰もいないと思っていたのだが、
林道終点に見覚えのある車
もしかしたら・・・。 山菜の様子見のために山に入っていくと、やっぱりいました
A氏です
申し合わせとかは、一切していないんだけど、会っちゃうんだよなあ。直近では一昨年だっけか。S川の源流でも出会ってしまいましたね。
T氏にA氏。この山の同窓会メンバーとは、連絡を取り合って同行することが基本なんだけど、連絡してなくてもピタリと合ってしまうんですよ。原因究明の必要はなかろう。とにかく、この3人は、赤い糸で結ばれているんだと思います。これからも、よろしくね。
さて、これで話が終わってしまうのはもったいないので、続きの話を少々。
聞けば、やっぱり、A氏もタラノメやコシアブラの状況を確かめたくて来たんだそうだ。
川沿いの山桜
「普通は、山桜が咲くころ、タラノメなんかもちょうど良くなるんだけどね。」
コシアブラも
タラノメも
もう一息です。
「F沢の様子を少し見に行ってみる。」
「そうか。俺は、ヤブカンゾウを少しもらって帰る。」
「次どうするか、また連絡するね。」
「んじゃあ。」
目的地や時間は同じでも、狙いが完全に同じなわけではない(かなり近いけど)。
マタギの場合、2日前の山行で、次出かけたらコゴミが真っ盛りになると予想できたので、うちの冷蔵庫にあるコゴミを消費しなければならないことに気づいたんですね。そのために思いついた料理にヤブカンゾウが必要だと思ったのでこの地を訪れたんです。で、
ヤブカンゾウを少々いただいて帰りました。
ここから、山菜料理の話に変わります。作りたかったのは、
≪春山菜のナムル≫です
残っているコゴミだけでは、ちょっと物足りないので、新鮮な山菜を加えたい。しかも、すぐに手に入るものと考えていたんです。
下ごしらえ・調理の部
・カンゾウは葉っぱの間のごみを落として、30秒ほど湯がき、冷水へ
・葉を外して、軽く洗ったら、湯がいて
・水にさらして
即戦力のおひたしになります
・冷蔵庫に残っていたコゴミ140gとヤブカンゾウの残り150gを混ぜて
・ごま油と塩とネギのみじん切りを和えるとナムルになります
※ちょっと多すぎなので、半量をナムルに(ごま油小さじ2に塩一つまみで調味)
なかなか美味しいです
醤油を2~3滴加えると風味が増すと思う。
こちらは山菜うどん
ナムルとおひたし以外は、鶏肉出汁のうどんに入れて、山菜うどんにしました。
1年ぶりのコゴミは、さすがに香りはほとんどないんです。だけど、その分をカンゾウが補充してくれるので、すっかり春の香りと味わい、そして、彩になりました。
いやあ、面白い半日になった。うどんを食べた後、身支度を整えて夜勤に出発!
こんな日は、多分、仕事も充実するんじゃないかな。
山の神様、A氏、本日も、ありがとうね!!