「七郎ちゃんは、大人になったら、何になりたいの」
「そうだなあ、清原みたいな・・・」
「ああ、清原選手みたいな天才的な野球選手になりたいのね」
「かあさん、違うよ、清原みたいな悪いやつを捕まえる仕事がしたいんだ」
「七郎ちゃん、それは間違っています。
清原選手は皆と同じかわいそうな人間です。
悪いのは、この世界と人間をお創りになった神です。
捕まえるなら、神様を捕まえて、こらしめてやりなさい」
「神様を捕まえるような、そんな仕事ってあるのかなあ」
「あります。四郎お父様がやられていた『ブレッドランナー』という職業です。
お父様は、パンとワインで生活していたキリスト教徒たちを次々と、
ご飯と日本酒の生活へと改宗させていったのです。
しかし、一部の信者たちは、五島列島へと渡り、隠れキリシタンとなったのです。
だから、あなたも、ブレッドランナーとなって、五島列島へ向かいなさい。
オラショを唱える者はすべて隠れキリシタンです」
「カンザス州から五島列島までって、けっこう遠いよね」
カンザス州上空で浮かんだままのノアの方舟で、母子は久しぶりに人生を語りあった。
青春期につまずき、打ちどころが悪くて、落としどころが無くなった人生を送る人は多い。
そういう人々は、神様を恨みながら、目的地の無い白い無限回廊を死ぬまで歩き続けるのだという。