昨日の午後。
定期検診の結果がよかった。
気分がよかったので、量販店でiPadを見ようと思った。
蒸し暑かったが、カメラをぶら下げて歩いた。
通行人にレンズを向ける訳にはいかない。地下鉄への階段を撮ったり、ビルとビルの狭い隙間を撮ったりした。
交番の前で、若い警官に呼びとめられた。
「何を撮っているのですか?画像を見せてもらっていいですか?」
「なぜ見せなければいけないの?理由は何ですか?」 私は警官に質問をした。
「隠し撮りをしている人がいると、今、通報があったのです」 と、警官の答えだった。
見せる必要はないと思った。強制的に見るには、令状が必要なはずだ。
「いや、念のためです」
警官の言葉は、まるで答えになっていなかった。しかし、揉めたくなかったので、すべてを見せた。
「何かまずい写真がありましたか?」 不満だった私は、嫌味な質問をした。
「いや、特にありません」 若い警官はそのように答えた。
「じゃあ、これでいいですね!」 私は立ち去ろうとした。
「ちょっと待って下さい!」
と言いながら、若い警官は傍にいた中年警官に言った。
「ガードマンからの通報だったんです。ちょっと、そのガードマンに聞いてきますので、行ってきていいですか?」 職場を離れる許可を求めたようだ。
「ああ、いいよ」 中年警官は、若い警官に許可を与えた。若い警官は走って行った。
中年警官は、カメラの問題が多いという話をしていた。みんな神経質になっているらしいのだ。
しばらくして、若い警官が戻ってきた。その間、約10分くらいだったろうか。
「誰かがガードマンに、隠し撮りの人がいると言ったらしいのです。でも、もう結構です」
まったく理不尽な話だ。「もう結構です」で済む話ではあるまい。失われた私の時間を、どのように考えているのか。
怒りがこみ上げてきたが、揉めるのは嫌だった。決していい話にはならない。
そこへ、老人が怒鳴り込んできた。かなり興奮していた。
中年警官がうまく宥め、老人はしぶしぶ立ち去った。
自転車の運転が危ない。なぜ注意しないのか?そんな苦情だったらしい。
私はまた歩き始めた。
「また来て下さいよ」 中年警官がお愛想を言った。
(冗談じゃねー!、もう来るもんか!)
ムシャクシャしながら、しばらく歩いた。
JR駅付近で、60代男性に呼び止められた。
「オレだよ、Sです。どうもしばらく」 その男は私に握手を求めてきた。
Sという苗字はよくある。しかし、その男性に見覚えがなかった。
「競馬で当たっちゃった。そこでイッパイやろうよ!」
男は言いながら、ズボンのポケットから札束を引っ張りだした。束の厚みは5センチ以上ありそうだった。
たまたまその時、その男のうしろを、初老男性が通り過ぎた。そして、首を横に振りながら、口に指を当てた。「かかわるな!」 という相図に見えた。まるで、尾行の刑事めいていた。
私は手を振って、その場所を離れた。
どのような目的で、私に握手を求め、札束を見せたのだろうか。犯罪の仲間に引き込もうとしたのだろうか。それとも、私をカモにするつもりだったのだろうか。
相図をしてくれた初老男性は、何者なのだろうか。
嫌なことが続いたので、iPadへの興味も失せ、そそくさと帰路についた。
「李下に冠をたださず」の言葉が、私の脳裏をよぎった。不用心過ぎたのかもしれないと、反省をした。
私のような経験は、多くの人がしているかもしれない。しかし、女性にはないのではなかろうか。
痴漢の冤罪も出かねない。いい経験をさせてもらった。
街はイヤだ。やはり、山川草木がいい。
炎昼や逃げ場所求め歩きけり 鵯 一平
別館として、写真俳句ブログの「ひよどり草紙」を開いてます。
ご覧いただけると嬉しいです。
→ こちら