2月15日撮影の紅梅。もうかなり咲いているはずなので、早い内に行ってきたい。
仕事場の帰り、東京駅前のブックセンターに寄り道をした。
目当ての本を買い求め、二階にある珈琲ショップで一休み。休みというより、少しでも早く本を読みたい気分だったのだ。私にはそんな癖がある。とにかく早く読みたい。
本を眺めながら二十分ほど休憩し、気合いを入れ直して重い腰をあげた。
階段を降りきったところで、女性に声をかけられた。
「あらっ、お久しぶり!」
茶系のコートを身につけ、四十歳ちょっとくらいの男好きのする顔が、満面の笑み。
「………?」
とっさに私は身構えた。知らない女性だ。いかに美人相手でも、顔見知りでなければ、話の接ぎ穂も作れない。
「冷たいわァ、もうお忘れですか!」
ひどく馴れ馴れしいところ、一見して水商売。咎め立てをしている気配で私を見つめる。ぎくっ!
「………?」
人慣れしているはずの私でも、とっさには返す言葉が出ない。
「十一月、お店にお出で下さったではありませんか!」
「十一月ですって……?」
「沼川さんとお出で頂いたでしょ!」
怪訝そうな顔をしながら、女性は名刺を出した。
「荒木町の『かほり』ですよォ!」
たしかに名刺は、新宿・荒木町のスナック『かほり』のママとなっている。
「申し訳ありませんが、沼川さんって方、私は存じあげておりません。残念ながら人違いですよ!」
「▲□さんではないのですか?」
「いいえ、違います。私は▲□ではありません。人違いです!」
せっかくの美人だが、私としてはそのように言わざるをえない。▲□さんを演じ通すことはできない。
一瞬、女性の顔が朱に染まった。
「ご免なさい、ご免なさい。てっきり▲□さんと思い込んでしまい……」
女性はひとしきり詫びてから、逃げるように去って行った。
「惜しかったな」
女性を見送った私の胸中である。
あれほどドギマギしたのに、あとで残念がっているのだから、我ながら情けない男。
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きっともう咲きましたね。
人間違い、あるのですね。
私も「あら、○○さん、こんにちは」と見ず知らずの人に言われました。
私はつじつまを合わせて、「こんにちは、久しぶりね、それではまた」
私は人が悪いですね。世の中には自分とそっくりな人が3人はいるそうですが、私がその中の一人だったのだと思いました。
お出で頂き、ありがとうございます。
今朝、紅梅を見に行ったのですが、まだ満開にはなっていませんでした。
仮に相手が男性だったら、「やっ、どうも、どうも……」と言いながら、観察できたかもしれません。
女性だったので(つまり、通常の私にはあり得ないことだったので)、ドギマギした次第です。
いい年をして、胆が据わっていませんね。
はっきり人違いだと判ればいいけど、顔は覚えがあっても、どこでだか、誰だかわからない時は、困ります。
向こうは私のことしっかり覚えているから、体裁が悪いです。ふらふらしていた罰でしょうか。
1度会った人を忘れない特技の持ち主もいますね。
女性がわざわざ声をかける位だから、ひよどりさん似の
▲□さんも素敵な人だったのでしょう。
刺激てきなお話ですね
その方が綺麗な方でよかったですね
でなければ・・・残念ですもの
ところでひよどりさん体の調子がもっと良くなって
お酒が美味しく飲めるようになったらそのお店にいきますか?
馬鹿な質問ですね
実は私は20歳のころ人を間違えて知らない人の車に乗ってしまいふと横を見てギクッとしたことあります
幸いいい方でしたので良かったけれど。
あわてて降ろしてくださいというとそっち方面に用があるのでいいですよ~
ちゃっかりそうさせてもらいました
その当時はそんな時代だったような・・・今では考えられません
紅梅はまだ十分ではありませんでした。
人違いなのか、こちらのモノ忘れか。
モノ忘れならまだいいのですが、認知違いだったら大問題です。私など、起こしかねません。
多くの人たちと接した時代があったのですが、その時は、写真をじっくり眺め、顔と名前を一致させようと努力しました。
向こうの方が知っていて、こちらが知らないのは、本当に具合が悪いですよねえ。
几帳面そうなささゆりさんでもありましたか?
モテ過ぎなのですから、半分は罰ありですね。
ひろこーぼさんの凄い一面を見ている感じがします。
20歳の女性が、見知らぬ男性の車に乗ってしまうとは驚きです。
その男性はどのように思ったでしょうねえ。
内心、シメタ!と思ったか、弱ったなあと思ったか。
私なら、「シメタ!」ですよ。
跳んで火に入る夏の虫。
「そっちの方に用事がある」なんてセリフ、危ないですよねえ。
でもまあ、何事もなく、ようございました。
私、体調が戻ったら、興がのれば行くでしょうね。
ひと頃、よく出没していた界隈でした。
とっさの時ってなかなか嘘がつけないですよね~
ひよどりさんのどぎまぎぶりが目に浮かぶようです。
どうぞどうぞいってらしゃーい
梅はやっぱりそちらは早いですね。
きれいな紅梅ですね~
私ももっと若かったら、アバンチュールにかける応対も出来たでしょうが、そんな元気が出なかった。
珈琲ショップに戻るくらいの芝居ができれば、まだまだ現役ですが、「ドギマギ」ではサマになりませんね。
店を探してブラリと寄って、「アレっ」などと、偶然を装って行ってみるなんて芝居をして見たいです。
誰か仲間と連れ立って行くのは、意気地なしのすること。
でも、やっぱりそんな行動にはなりませんね。
こちらの梅はやはりそちらより早いのでしょうか。
2~3日後に、また行ってみるつもりです。
ほんの少しの時めき?チョット残念...残念なり...
納得!!
良い出会いのチャンスだったかもねぇ。
ここ数年は目が歳を取ってしまって、遠くも近くも見づらくなってしまい、こちらからの人違いはしなくなりました。
それまでは中途半端に見えていましたから、間違いはしゅっちゅうだったですよ。