■インターンズ・ハンドブック/シェイン・クーン 2018.8.20
今回読んだ、 『インターンズ・ハンドブック』 は、このようなミステリです。
きわめて優秀なヒットマンであるラーゴが、HR社の後輩のために執筆したインターン/ヒットマン手引き書兼サバイバルガイドが、『インターンズ・ハンドブック(ジョン・ラーゴ著)』だ。彼はこのハンドブックで、自分の最後の任務を詳述するとともに、おのれのヒットマン人生をふり返り、経験から得た貴重な教訓をヒットマン見習たちに伝授しようとしている。 (訳者あとがき)
ジョンは、話す。
この 『インターンズ・ハンドブック』 はおれの最後の仕事を詳しく記録し、おまけにシンプルで覚えやすいルールとその根拠となる実例をまとめた実践的リファレンスマニュアルにもなっている。
それでは、ジョンの 「経験から得た貴重な教訓」 とやらを見てみることにしましょう。
そうした疑問に対するシンプルな答えはこれだ。「なるに決まってる」最悪の悪夢が、想像したこともないやり方で現実になる。きみはそれを乗り越えるか、鹿弾をくらうかの、どちらかだ。どちらにしても悩みは解決する。
「皮肉屋とは、なんでも値段は知っているが、なんの値打ちも知らない人間だ」
だが欲と力はガンジーをもカーダシアンに変えるだろうし、弁護士ならなおさらだろう。驚くべきことではない。
見た目は最大の武器であり、ここは確実にキメることが重要だ。
犬は相手のケツのにおいをかぐだけでそいつを好きか嫌いかに判断できる。何が言いたいかっていうと、つまり、初対面の相手から愛情、憎悪、無関心のいずれの反応を引きだすかは、最初のおよそ六十秒間で決まるということだ。
昔PBS局で放送されたジム・レーラーがアンカーをつとめた『ニュースアワー』をダウンロードして、視聴してみることを勧める。彼は自分の意見を述べない。それにその口調は、株式市場が少し値下がりしたというニュースでも、大規模な民族浄化についてのニュースでもまったく変わらない。だから視聴者は、それを報道している人物ではなく、ニュースの内容に集中できる。
いつでも女の靴やハンドバッグをほめること。少し女みたいで、女心がわかる風に見える。それに彼女のからだは見ていない(まさか!)ということにもなる。女性はそれできみのことを、最初に話す前から決めつけていた変態ではないと思ってくれる。
おれは何も言わずに出ていった。どんな会話でも、かならず相手に最後のセリフを言わせるようにすること。役に立たない返事をしながら出ていったら、返事は「はい」だけでいいんだと、ムカつかれるのかオチだ。
殺し屋にとってうぬぼれは最大の敵だ。
うぬぼれは禁物だ。判断を曇らせる。
欲は満足することのない愛人なの。
強欲。どんな犯罪者でもそれが破滅の第一歩だということは、めずらしく映画でも正確に描かれている。
甘い考えは捨てろ。この仕事をするなら、自分を正当化しようとするな。きみは悪いやつで、それがきみの役割だ。それが存在しなかったら、いいやつを測る基準がない。
愛は人間の根源であり、基本的な生命維持より熱心に追求されるものだ。愛に夢中になると、もっとも聡明で炯眼な人間も軽率になる。
本気のセックスは、どの段階においても、自分にも誰かを愛し愛されることが可能だという希望をあたえる。偽物のセックスは、はらわたを抜かれた魚のように、自分がからっぽになる。
痛みで意識を集中させ、外の世界のことを忘れた。痛みはおれに、自分がひとりぽっちだということ、これまでもずっとひとりぽっちだったということを思いださせた。痛みはおれに、自分が何をすべきなのか、何をするために生まれてきたのかだけを考えさせた。
謙虚な人間はスポンジのように世界を吸収し、現実の知識で満たされる。プライドと傲慢はその反対だ。何も学ばない。そんなことはありえないのに自分は何もかも知っていると思いこむ。そういうまぬけは、誰かに撃たれて初めて驚いた顔をすることになる。
眠りに落ちながら、おれは自分にこれを覚えておくようにと命じた。なぜならすべてが失敗して惨憺たることになったとき、せめて幸福な記憶が必要だから。
そして最終的には、武器という言葉でだれもが連想するものに頼るとしても、ここまでおれが捕食者の真の武器----狡猾さ、ねばり強さ、そしてとりわけ重要な忍耐強さ----を駆使してこなければ、その普通の武器をつかう立場にもいなかっただろう。
きみたちへのアドバイスは、できるだけ早く出口戦略をもつことだ。これから大変になる。そのときに、とばっちりをうけないようにな。
自分の道を歩むんだ。それが生き残る唯一の方法だ。
謙虚になること、欲まみれにならぬこと。そして自分の道を歩む。
出口戦略をもち、だめなら逃げる。なかでも、とりわけ大切なのは忍耐強さ。
人間、生き抜くために 「せめて幸福な記憶が必要だ」 と言うのには泣かされます。
このミステリーは、映画の話が随所に出てきます。
忍者、武士道、柔術、刀など日本のことについても、映画から得た知識なのでしょうか。
映画に詳しい方は、より楽しめる内容だと思います。
『 インターンズ・ハンドブック/シェイン・クーン/高里ひろ訳/扶桑社ミステリー』
今回読んだ、 『インターンズ・ハンドブック』 は、このようなミステリです。
きわめて優秀なヒットマンであるラーゴが、HR社の後輩のために執筆したインターン/ヒットマン手引き書兼サバイバルガイドが、『インターンズ・ハンドブック(ジョン・ラーゴ著)』だ。彼はこのハンドブックで、自分の最後の任務を詳述するとともに、おのれのヒットマン人生をふり返り、経験から得た貴重な教訓をヒットマン見習たちに伝授しようとしている。 (訳者あとがき)
ジョンは、話す。
この 『インターンズ・ハンドブック』 はおれの最後の仕事を詳しく記録し、おまけにシンプルで覚えやすいルールとその根拠となる実例をまとめた実践的リファレンスマニュアルにもなっている。
それでは、ジョンの 「経験から得た貴重な教訓」 とやらを見てみることにしましょう。
そうした疑問に対するシンプルな答えはこれだ。「なるに決まってる」最悪の悪夢が、想像したこともないやり方で現実になる。きみはそれを乗り越えるか、鹿弾をくらうかの、どちらかだ。どちらにしても悩みは解決する。
「皮肉屋とは、なんでも値段は知っているが、なんの値打ちも知らない人間だ」
だが欲と力はガンジーをもカーダシアンに変えるだろうし、弁護士ならなおさらだろう。驚くべきことではない。
見た目は最大の武器であり、ここは確実にキメることが重要だ。
犬は相手のケツのにおいをかぐだけでそいつを好きか嫌いかに判断できる。何が言いたいかっていうと、つまり、初対面の相手から愛情、憎悪、無関心のいずれの反応を引きだすかは、最初のおよそ六十秒間で決まるということだ。
昔PBS局で放送されたジム・レーラーがアンカーをつとめた『ニュースアワー』をダウンロードして、視聴してみることを勧める。彼は自分の意見を述べない。それにその口調は、株式市場が少し値下がりしたというニュースでも、大規模な民族浄化についてのニュースでもまったく変わらない。だから視聴者は、それを報道している人物ではなく、ニュースの内容に集中できる。
いつでも女の靴やハンドバッグをほめること。少し女みたいで、女心がわかる風に見える。それに彼女のからだは見ていない(まさか!)ということにもなる。女性はそれできみのことを、最初に話す前から決めつけていた変態ではないと思ってくれる。
おれは何も言わずに出ていった。どんな会話でも、かならず相手に最後のセリフを言わせるようにすること。役に立たない返事をしながら出ていったら、返事は「はい」だけでいいんだと、ムカつかれるのかオチだ。
殺し屋にとってうぬぼれは最大の敵だ。
うぬぼれは禁物だ。判断を曇らせる。
欲は満足することのない愛人なの。
強欲。どんな犯罪者でもそれが破滅の第一歩だということは、めずらしく映画でも正確に描かれている。
甘い考えは捨てろ。この仕事をするなら、自分を正当化しようとするな。きみは悪いやつで、それがきみの役割だ。それが存在しなかったら、いいやつを測る基準がない。
愛は人間の根源であり、基本的な生命維持より熱心に追求されるものだ。愛に夢中になると、もっとも聡明で炯眼な人間も軽率になる。
本気のセックスは、どの段階においても、自分にも誰かを愛し愛されることが可能だという希望をあたえる。偽物のセックスは、はらわたを抜かれた魚のように、自分がからっぽになる。
痛みで意識を集中させ、外の世界のことを忘れた。痛みはおれに、自分がひとりぽっちだということ、これまでもずっとひとりぽっちだったということを思いださせた。痛みはおれに、自分が何をすべきなのか、何をするために生まれてきたのかだけを考えさせた。
謙虚な人間はスポンジのように世界を吸収し、現実の知識で満たされる。プライドと傲慢はその反対だ。何も学ばない。そんなことはありえないのに自分は何もかも知っていると思いこむ。そういうまぬけは、誰かに撃たれて初めて驚いた顔をすることになる。
眠りに落ちながら、おれは自分にこれを覚えておくようにと命じた。なぜならすべてが失敗して惨憺たることになったとき、せめて幸福な記憶が必要だから。
そして最終的には、武器という言葉でだれもが連想するものに頼るとしても、ここまでおれが捕食者の真の武器----狡猾さ、ねばり強さ、そしてとりわけ重要な忍耐強さ----を駆使してこなければ、その普通の武器をつかう立場にもいなかっただろう。
きみたちへのアドバイスは、できるだけ早く出口戦略をもつことだ。これから大変になる。そのときに、とばっちりをうけないようにな。
自分の道を歩むんだ。それが生き残る唯一の方法だ。
謙虚になること、欲まみれにならぬこと。そして自分の道を歩む。
出口戦略をもち、だめなら逃げる。なかでも、とりわけ大切なのは忍耐強さ。
人間、生き抜くために 「せめて幸福な記憶が必要だ」 と言うのには泣かされます。
このミステリーは、映画の話が随所に出てきます。
忍者、武士道、柔術、刀など日本のことについても、映画から得た知識なのでしょうか。
映画に詳しい方は、より楽しめる内容だと思います。
『 インターンズ・ハンドブック/シェイン・クーン/高里ひろ訳/扶桑社ミステリー』