今週は、この2冊。
黄昏の彼女たち(上・下)/煙に消えた男/
■黄昏の彼女たち(上・下)/サラ・ウォーターズ 2016.6.25
『黄昏の彼女たち(上)』は、映画を観ているように物語は進みます。
広い屋敷に住む母と娘は、生活の足しにするために下宿人を置くことにする。
そこへ越してきたのが、美しい妻と夫の若夫婦。
1920年代のロンドンでの日常が、映画を観ているように展開します。
これといって大きな事件が起こるわけではないのですが、何か起こりそうな予感が常に張り付いて離さず、不安にページを繰ります。
卑近な例のように、大家さんの娘と若く美しい妻の夫との不倫という展開になるのでしょうか........
物語にのめり込んでしまうのは、原文のうまさでしょうか、訳のうまさでしょうか。
両方なのかもしれません。
『黄昏の彼女たち(下)』は、ぼくが考えていたような、結末にはなりませんでした。
しかし、"血をみた"ことは確かです。
日々幸せになりたいと願っているのに、どうして、みな踏み外してしまうのでしょうか。
不思議です。
裏庭へ引き返しながら、自分の家や近所のあかあかと輝く窓の明かりを見ながら、みずからの手であの温かな、ごく普通の部屋を、もう二度と手の届かないところまで遠ざけ、まともで穏やかな日常から自分自身を永遠に切り離しているのだという、咽喉を締めつけられるような感覚に襲われた。
『 黄昏の彼女たち(上・下)/サラ・ウォーターズ/中村有希訳/創元推理文庫 』
■煙に消えた男/マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー 2016.6.25
「訳者あとがき」に、このミステリーが書かれた時代背景の説明がありました。
今回の『煙に消えた男』の舞台はハンガリーの首都ブダペスト。これは非常に特殊な、また微妙なセッティングである。一九六六年にスウェーデンでこの本が刊行された当時、まだハンガリーは共産党一党支配による人民共和国で、厳しいソビエト連邦支配下にあった。.....当時のハンガリーはまさに、"鉄のカーテン"の向こう側の国の一つだった。
こんな時代と社会状況を背景とした詩情豊かなミステリーでした。
古都ブダペストの美しい風景の描写、随所に描かれる料理の話、ドナウ川を行き交う美しく白い外輪式蒸気船の話など、ゆったりと時間が流れた時代のなごり、どれもこれも興味は尽きません。
この蒸気船の話で、ぼくの幼い頃、明け方によく耳にしたポンポン船の船出のポンポンを懐かしく思い出しました。
焼き玉エンジンの漁船が、その日の漁に出かける出発の音です。
こんなことも知りました.......ヴァレンベリ事件
『 煙に消えた男/刑事マルティン・ベック/マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー/柳沢由美子訳/角川文庫 』
黄昏の彼女たち(上・下)/煙に消えた男/
■黄昏の彼女たち(上・下)/サラ・ウォーターズ 2016.6.25
『黄昏の彼女たち(上)』は、映画を観ているように物語は進みます。
広い屋敷に住む母と娘は、生活の足しにするために下宿人を置くことにする。
そこへ越してきたのが、美しい妻と夫の若夫婦。
1920年代のロンドンでの日常が、映画を観ているように展開します。
これといって大きな事件が起こるわけではないのですが、何か起こりそうな予感が常に張り付いて離さず、不安にページを繰ります。
卑近な例のように、大家さんの娘と若く美しい妻の夫との不倫という展開になるのでしょうか........
物語にのめり込んでしまうのは、原文のうまさでしょうか、訳のうまさでしょうか。
両方なのかもしれません。
『黄昏の彼女たち(下)』は、ぼくが考えていたような、結末にはなりませんでした。
しかし、"血をみた"ことは確かです。
日々幸せになりたいと願っているのに、どうして、みな踏み外してしまうのでしょうか。
不思議です。
裏庭へ引き返しながら、自分の家や近所のあかあかと輝く窓の明かりを見ながら、みずからの手であの温かな、ごく普通の部屋を、もう二度と手の届かないところまで遠ざけ、まともで穏やかな日常から自分自身を永遠に切り離しているのだという、咽喉を締めつけられるような感覚に襲われた。
『 黄昏の彼女たち(上・下)/サラ・ウォーターズ/中村有希訳/創元推理文庫 』
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■煙に消えた男/マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー 2016.6.25
「訳者あとがき」に、このミステリーが書かれた時代背景の説明がありました。
今回の『煙に消えた男』の舞台はハンガリーの首都ブダペスト。これは非常に特殊な、また微妙なセッティングである。一九六六年にスウェーデンでこの本が刊行された当時、まだハンガリーは共産党一党支配による人民共和国で、厳しいソビエト連邦支配下にあった。.....当時のハンガリーはまさに、"鉄のカーテン"の向こう側の国の一つだった。
こんな時代と社会状況を背景とした詩情豊かなミステリーでした。
古都ブダペストの美しい風景の描写、随所に描かれる料理の話、ドナウ川を行き交う美しく白い外輪式蒸気船の話など、ゆったりと時間が流れた時代のなごり、どれもこれも興味は尽きません。
この蒸気船の話で、ぼくの幼い頃、明け方によく耳にしたポンポン船の船出のポンポンを懐かしく思い出しました。
焼き玉エンジンの漁船が、その日の漁に出かける出発の音です。
こんなことも知りました.......ヴァレンベリ事件
『 煙に消えた男/刑事マルティン・ベック/マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー/柳沢由美子訳/角川文庫 』
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