■ここから先は何もない/山田正紀 2017.11.6
国語の先生はこれがいかに感動的な物語であるかを強調したが、それは鋭二にはどうにも納得できないことだった。
この『最後の一葉』こそはまさに偽りの希望ではないだろうか? 人はそうした偽りの希望に惑わされ、欺瞞のうちに一生を終えるのではないか。
久しぶりに、SFを読んでみました。
山田正紀著 『ここから先は何もない』 です。
山田さんのSFは、若いころ夢中で読んだ記憶があります。
しかし、いつ頃からか、どのような理由でかは覚えていないのですが、SFから離れてしまいました。
彼は、1950年生まれですから、ぼくとほぼ同年代ですが、ずっとSFを書き続けて来ました。
書くのが難しいだろうなあと思い、頭が下がります。
頭が悪いせいか、ぼくには面白さがよく分からなかった。
SFから離れてしまったのも、この頭の悪さかも知れないと思い至る。
これは端的にいって、いまの日本の状況そのままではないか。
従属を強いられ、服従させられながら、それを意識しないように、忘れているように、マインドコントロールされている。目に見えない、しかし確実にそこにある手錠で、拘束されているのだ。何もいまここであらためてそれを意識するまでもないことだ。
人は誰もが大人になれば、自分はなんのために生きているのか、という問は忘れてしまう。しかし、子供時代、あるいは思春期のある瞬間、風が吹き抜けるようにフッとそうした疑問にかられたことは、いつまでも胸の底に残される。それがその人間の生のあり方を決定づけるといってもいいほどだ。何か郷愁めいた思いとともに----
「神の前ですべてを告白なさい」
任転が照れながら言った。
「あなたのことが」とマリアは言った。「好きなの」
この小説、SFではあるが、内容はなかなか多岐にわたっているのです。
筆者は、ジェイムズ・P・ホーガンの 『星を継ぐもの』 を意識している。
ぼくも読んでみよう。
『 ここから先は何もない/山田正紀/河出書房新社 』
ジェイムズ・P・ホーガンの 『星を継ぐもの』 を読んでみました。
それなりに面白かった。
ぼくが読んだのは、創元SF文庫で奥付は、1980年5月初版となっていました。
読んで面白く感じたのは、「煙草」の扱い。
SF作家でも、 「『煙草』の扱いに対する近未来は、予想できなかった」 のかと。
「やたら何処ででも、タバコをプカプカ吹かす場面に出くわすのです。」
たいていの動物は、絶望的状況に追い込まれるとあっさり運命に身を任せて、惨めな滅亡の道を辿る。ところが、人間は決して後へ退くことを知らないのだね。人間はありたけの力をふり絞って、地球上のいかなる動物も真似することのできない粘り強い抵抗を示す。生命の脅威を与えるものに対しては敢然と戦う。かつて地球上に人間ほど攻撃的な性質を帯びた動物がいただろうか。この攻撃性ゆえに、人間は自分たち以前のすべてを駆逐して、万物の霊長になったのだ。
『 星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン
/池央耿訳/創元SF文庫 』
朝日新聞 2017.10.18
月に50キロの地下空洞
JAXA 探査基地に利用期待
月の地下に、長さ約50キロに及ぶ長大な空洞があることが、日本の月探査機「かぐや」の観測データから判明した。
過去の火山活動で生じたとみられる。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が18日、発表した。
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空洞があるのは、月の表側にある「マリウス丘」と呼ばれる領域。
かぐやが撮影した画像には、直径と深さがそれぞれ50メートルの縦穴が写っていた。
電波を使って得た周辺の地下構造のデータを詳しく調べたところ、この縦穴から西に向かって、幅100メートルほどの空洞が約50キロにわたって続いていることがわかった。
内部は崩壊しておらず、地中の岩石などに氷や水が存在する可能性もあるという。
月では約10億年前まで大規模な火山活動があったと考えられている。
火山活動で溶岩が流れ出ると、表面は冷えて固まるが、内部は熱いまま流れ続ける。
発見された空洞は、溶岩の通り道となった「溶岩チューブ」とみられる。
将来、月の有人探査でこの空洞を基地に利用できれば、宇宙放射線や厳しい温度環境の影響を和らげることができ、氷や水を燃料などに活用できる可能性がある。 (田中誠士)
国語の先生はこれがいかに感動的な物語であるかを強調したが、それは鋭二にはどうにも納得できないことだった。
この『最後の一葉』こそはまさに偽りの希望ではないだろうか? 人はそうした偽りの希望に惑わされ、欺瞞のうちに一生を終えるのではないか。
久しぶりに、SFを読んでみました。
山田正紀著 『ここから先は何もない』 です。
山田さんのSFは、若いころ夢中で読んだ記憶があります。
しかし、いつ頃からか、どのような理由でかは覚えていないのですが、SFから離れてしまいました。
彼は、1950年生まれですから、ぼくとほぼ同年代ですが、ずっとSFを書き続けて来ました。
書くのが難しいだろうなあと思い、頭が下がります。
頭が悪いせいか、ぼくには面白さがよく分からなかった。
SFから離れてしまったのも、この頭の悪さかも知れないと思い至る。
これは端的にいって、いまの日本の状況そのままではないか。
従属を強いられ、服従させられながら、それを意識しないように、忘れているように、マインドコントロールされている。目に見えない、しかし確実にそこにある手錠で、拘束されているのだ。何もいまここであらためてそれを意識するまでもないことだ。
人は誰もが大人になれば、自分はなんのために生きているのか、という問は忘れてしまう。しかし、子供時代、あるいは思春期のある瞬間、風が吹き抜けるようにフッとそうした疑問にかられたことは、いつまでも胸の底に残される。それがその人間の生のあり方を決定づけるといってもいいほどだ。何か郷愁めいた思いとともに----
「神の前ですべてを告白なさい」
任転が照れながら言った。
「あなたのことが」とマリアは言った。「好きなの」
この小説、SFではあるが、内容はなかなか多岐にわたっているのです。
筆者は、ジェイムズ・P・ホーガンの 『星を継ぐもの』 を意識している。
ぼくも読んでみよう。
『 ここから先は何もない/山田正紀/河出書房新社 』
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ジェイムズ・P・ホーガンの 『星を継ぐもの』 を読んでみました。
それなりに面白かった。
ぼくが読んだのは、創元SF文庫で奥付は、1980年5月初版となっていました。
読んで面白く感じたのは、「煙草」の扱い。
SF作家でも、 「『煙草』の扱いに対する近未来は、予想できなかった」 のかと。
「やたら何処ででも、タバコをプカプカ吹かす場面に出くわすのです。」
たいていの動物は、絶望的状況に追い込まれるとあっさり運命に身を任せて、惨めな滅亡の道を辿る。ところが、人間は決して後へ退くことを知らないのだね。人間はありたけの力をふり絞って、地球上のいかなる動物も真似することのできない粘り強い抵抗を示す。生命の脅威を与えるものに対しては敢然と戦う。かつて地球上に人間ほど攻撃的な性質を帯びた動物がいただろうか。この攻撃性ゆえに、人間は自分たち以前のすべてを駆逐して、万物の霊長になったのだ。
『 星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン
/池央耿訳/創元SF文庫 』
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朝日新聞 2017.10.18
月に50キロの地下空洞
JAXA 探査基地に利用期待
月の地下に、長さ約50キロに及ぶ長大な空洞があることが、日本の月探査機「かぐや」の観測データから判明した。
過去の火山活動で生じたとみられる。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が18日、発表した。
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空洞があるのは、月の表側にある「マリウス丘」と呼ばれる領域。
かぐやが撮影した画像には、直径と深さがそれぞれ50メートルの縦穴が写っていた。
電波を使って得た周辺の地下構造のデータを詳しく調べたところ、この縦穴から西に向かって、幅100メートルほどの空洞が約50キロにわたって続いていることがわかった。
内部は崩壊しておらず、地中の岩石などに氷や水が存在する可能性もあるという。
月では約10億年前まで大規模な火山活動があったと考えられている。
火山活動で溶岩が流れ出ると、表面は冷えて固まるが、内部は熱いまま流れ続ける。
発見された空洞は、溶岩の通り道となった「溶岩チューブ」とみられる。
将来、月の有人探査でこの空洞を基地に利用できれば、宇宙放射線や厳しい温度環境の影響を和らげることができ、氷や水を燃料などに活用できる可能性がある。 (田中誠士)
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