くらのうえ市丸歯科ブログ

お口の健康を守りたい

歯科における院内感染対策の理論・実践と苦悩について講演しました。

2014年12月07日 | Weblog

先日、佐賀県保険医協会の歯科研究会にて、「歯科における院内感染対策の理論・実践と苦悩」について院長の市丸、副院長の山口、衛生士の小川で講演をさせて頂きました。

 

約7割の歯科医院において、切削器具の滅菌がされずに使い回しされているという報道が読売新聞に掲載され、約半年が経過しました。当院では開院当初より、スタンダードプレコーションに従い、滅菌、消毒をしてまいりました。

医療行為で感染リスクが高く、注意を要する感染症には、B型肝炎、C型肝炎、HIVが挙げられます。国内のB型C型肝炎の感染者は400万人と言われています。B型肝炎は、日本国民の100人に1.4人、C型肝炎は100人に2.3人です。

C型肝炎の感染経路を国立感染症研究所が調べていますが、「不明448症例を除く」270症例の中で、医療行為に関連するものが35%です。この中には医療従事者が針刺しの事故で感染したものも含まれ、歯科治療ももちろん含まれています。問題なのは、不明が448症例もある事であり、中でも歯科治療が強く疑われている事です。

報道では「切削器具」とありましたが、歯科で使われる道具の殆どは口の中に入ります。口の中に入る道具は全て、スタンダードプレコーションに従って、滅菌されなければなりません。

唾液はもちろん感染源となります。また、口の中はやわらかい粘膜です。歯ブラシによる傷であったり、大きな虫歯があれば神経より、歯茎の検査をした時に出血したり、そのような所から感染するという事は大いに考えられます。

また、米国医療疫学学会のガイドラインでカテゴリー1~3と分けられています。カテゴリー1(血液媒介ウイルス伝播の危険性がほとんどない処置)カテゴリー2(伝播の可能性が起こりそうにない処置)カテゴリー3(確定的な危険性、曝露しやすいと過去に分類された処置)

この中の、カテゴリー3確定的な危険性の分類に、一般口腔外科手術が含まれており、これは心臓胸部外科と同等の扱いです。一般口腔外科とは、親不知の抜歯などもそれに当たります。これを滅菌されていない器具で行っていたとしたら、非常に怖い話です。

では、歯科における院内感染対策のありかたとは、どのように行うべきなのでしょうか。当院では下の図のような流れで行っております。

 

一度、口の中に入った物は、高圧蒸気滅菌にかける、かけられない器材はディスポーザブルにして廃棄し、プラスチック類は高水準消毒薬(グルタラール)を使用します。よく活用されている、アルコールでさえ芽胞・HBV(B型肝炎ウイルス)には効果がありません。ですので、アルコールで拭いたから大丈夫!という事はないのです。

講演の中でもお示ししましたが、下の画像で何かおかしいことに気がつきますか?もう印がついていますね。

 

ペーパータオルの上に滅菌された器材が乗っています。紙は血液や唾液など濡れた物が触れると下の台にまで浸みこむ事になります。台はもちろん滅菌できません。薬の瓶と綿花の入った缶も置いてあります。これらはどうやって使用するのでしょうか。もしかしたら、患者さんのピンセットを使って中の綿花を取っているかもしれません。それは汚染に繋がりますので、やめた方が良いですね。ですので、下のようにメタルのトレーに乗せて使用する、患者さま毎に取り替えた、清潔なピンセット(当院では直のピンセットと呼んでいます)を使用します。

 

 

 

また、今回話題となった切削器具ですが、口の中の洗浄や乾燥させる「スリーウェイシリンジ」という物もあります。これももちろん、患者さま毎に交換します。

 

赤い丸がついている器材は全て取り外し可能、滅菌可能です。全て滅菌します。患者さまを導入する時は、全て取り外されていなくてはいけません。

 

 

 

 

「悪習慣」についてもお話させて頂きました。

 

折角、滅菌された切削バーを手で取ってみたり、患者さまのピンセットで取ってみたり、薬の瓶に直接汚れたピンセットを入れてみたり、詰め物の材料を直接、口の中で使用した道具で取ってみたり…これらも全て感染源となります。では滅菌対策下ではどうするかというと、下の図のようになります。

 

 

 

患者さまには、少し分かりにくく難しく感じるかもしれませんね。当院では、このような見えない所での感染対策には非常に力を入れております。普段、見えない消毒室では、高圧蒸気滅菌のルート、薬液滅菌のルートを確保し、汚染された器具と滅菌された清潔な器具が混ざらないように徹底しています。汚染された器具を触ったグローブで清潔エリアの道具を触らない事も大切です。

「苦悩」について、市丸より講演させて頂きました。滅菌対策に力を入れる事は、本当に費用がかかります。今回、詳細な費用を調べる事で、院長の苦悩が更に理解できました。保険費用は、全国同じです。滅菌対策をする事は非常にコストがかかります、手を抜けば費用は安くなります。そのコストがどれくらいかかるのかをきちんと計算し、現在、滅菌対策ができてない歯科医院はそのことをきちんと訴えるべきだとのお話でした。

当院のスタッフも毎日忙しく器材を洗浄し、滅菌し、時には厳しく私から言われる事もありますが(笑)その厳しい「意味」が分かってくれていると信じています。本当にスタッフ一丸となって頑張っているなと改めて感じております。皆がいないと成り立ちませんね♪

最後までお付き合いくださって、ありがとうございます。患者様には当院のシステムが少しだけご理解頂けたら嬉しいです。安心して治療をお受け頂けるシステムとなっております。治療内容に関しましても、常に最新の情報を仕入れ、エビデンスに基づいた治療を行っております。ご不明な事、また治療でお悩みの方もお気軽にご相談くださいませ。

 

 

(医)くらのうえ市丸歯科 新鳥栖インプラント・歯周病センター(佐賀県鳥栖市)

 

   TEL:0942-81-5410      歯科衛生士 小川希和子

 

 

 

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