「映画で読む 秋の始まりは、文芸映画から」
「ブリキの太鼓」1979年 西独・仏 監督:フォルカー・シュレンドルフ
DIE BLECHTROMMEL
ギュンター・グラス原作。1924年ダンツィヒに生まれたオスカルは驚異的に早熟な乳飲み子で、明晰な懐疑的態度でもって周囲の意見を受け入れていた。3歳の誕生日に-絶対的拒絶をもって-オスカルは乱暴に自分の肉体的成長に終止符を打つ。成長が止まってしまうという驚くべき現象もオスカルが転落したことで家族も医師たちも納得せざるを得なかった。太鼓を叩きながら自分の存在を揺るがす全ての出来事を指揮するオスカル。反逆者オスカルは遠くのガラスを割ることのできる叫び声をあげる。誘惑者オスカルは義理の母となる娘を孕ませる決心をし、魅惑的な小人のロズビーダ・ラグナに夢中になる。芸術家オスカルはサーカスの仲間とともに軍隊劇場に出演し、さらに大西洋の壁の舞台にも上がる。二人の父親を墓場へと送り出し、母親の奇妙な最期には全く関心がないオスカルはやはり悪魔だったのか?フォルカー・シュレンドルフが計画していたフィルムは長すぎて当時の配給の要請には応えられず、30分短縮せざるを得なかった。このディレクター カット版(デジタルリマスター)は監督がもともと表現したかった内容を明らかにしてくれるだろう。
公開時、カンヌやアカデミーの受賞など相当話題になっていましたが当時はわざわざ映画を観る事がほとんど無かったので未見でした。
いづれきっとDVDで見るか思い切って原作に当たってみようかと思っていた作品がまさに「映画で読む」という特集で劇場上映となりましたので朝の回に行ってきました。
ディレクターズカット版164分、エロ・グロの表現や戦争の悲惨なシーンはありながらも全体的にはロー・テンションの落ち着いた雰囲気だったのは意外。かといってダレるとか厭きるという事はありませんでした。
3歳の子供の視点で追ったドイツ・ポーランドの史実という意味でもドイツ・ポーランドの方々にとって重要な位置を占める作品だと想像されます。
大人の嫌らしくも汚い世界を見て成長を自ら止めてしまい、冷静で残酷な視点を持つオスカルは不気味で好みではありませんが、その大人達の営みが生々しく描かれていて、これが本作の一つの魅力ともなっていますね。特に可哀想な母親アグネスのアングラ・ヴィンクラーの凄まじい演技、エロくて良いです。
成長を止める(抵抗)事とガラスを割る声帯超能力(抗議)と捉えられると思いますが、やはり本当の武器はブリキの太鼓。コミュニケーションでありアジテーション。
ラスプーチンとゲーテ
オスカルのブリキ太鼓がナチスのマーチをシュトラウスのワルツに変えてしまうシーンが皮肉たっぷりで痛快。
遠足、離れた所に父親。母親と叔父がいちゃついているのを見つめる息子。ドロドロ。
冴えたグロテスク表現。
ホルマリン標本のガラスが破裂して標本の散乱する床、壁に滴るホルマリン液。
おしっこ入りカエルのスープ。
馬の首から鰻がぞろぞろ。
魚の貪り食う、精神を病んだアグネス。
冴えたエロ表現
母と叔父のピアノ演奏、遠足でのいちゃつき。
子供をおもちゃ屋に預けて30分、安ホテルでの性急な逢瀬。
3歳の肉体のまま思春期を迎える後半は当然オスカル自身の性的表現が増えて行きます。
同い年16歳のマリアへの初恋。
しかしマリアも性に貪欲な牝。
早漏アルフレートを水鉄砲呼ばわり、マリアは義母となり義弟を産むが、弟は実は我が息子であると確信しているオスカル。
本物の小人と本物の子供の共演も見ものです。
読唇術の彼女はいくつ年上だったのでしょう。
小人慰問団の活躍は動画で。ドノヴァンの曲に乗せて。
CPV The Tin Drum - Sunshine Superman
オスカルは3歳にしては大きすぎて6,7歳にしか見えませんが、そこは子役の事情であまり気にしない方が良いでしょう。
ポーランドにナチス・ドイツの影、第二次世界大戦、ソ連軍による支配と、オスカルの周りの人々はどんどん退場して行きます。
とにかく長い年月の物語の随所でエピソードが盛り込まれていく。
原作者のギュンター・グラスの元には多くの映画化のオファーがあったそうですが、それまで全て断っていました。それは物語の断片エピソードをテーマにした物ばかりだったからだとか。
フォルカー・シュレンドルフ監督作の本作企画はほぼ物語全編の映画化であっため了承したんだそうです。
確かに一部のエピソードを抜き出しても面白そうな物が出来上がりそうです。
わざわざ祖父母の代から語られる本作。長いけどそこが肝なのかもしれません。
朝っぱらから164分、堪能しましたが疲れもしました。
池袋 新文芸座
「ブリキの太鼓」1979年 西独・仏 監督:フォルカー・シュレンドルフ
DIE BLECHTROMMEL
ギュンター・グラス原作。1924年ダンツィヒに生まれたオスカルは驚異的に早熟な乳飲み子で、明晰な懐疑的態度でもって周囲の意見を受け入れていた。3歳の誕生日に-絶対的拒絶をもって-オスカルは乱暴に自分の肉体的成長に終止符を打つ。成長が止まってしまうという驚くべき現象もオスカルが転落したことで家族も医師たちも納得せざるを得なかった。太鼓を叩きながら自分の存在を揺るがす全ての出来事を指揮するオスカル。反逆者オスカルは遠くのガラスを割ることのできる叫び声をあげる。誘惑者オスカルは義理の母となる娘を孕ませる決心をし、魅惑的な小人のロズビーダ・ラグナに夢中になる。芸術家オスカルはサーカスの仲間とともに軍隊劇場に出演し、さらに大西洋の壁の舞台にも上がる。二人の父親を墓場へと送り出し、母親の奇妙な最期には全く関心がないオスカルはやはり悪魔だったのか?フォルカー・シュレンドルフが計画していたフィルムは長すぎて当時の配給の要請には応えられず、30分短縮せざるを得なかった。このディレクター カット版(デジタルリマスター)は監督がもともと表現したかった内容を明らかにしてくれるだろう。
公開時、カンヌやアカデミーの受賞など相当話題になっていましたが当時はわざわざ映画を観る事がほとんど無かったので未見でした。
いづれきっとDVDで見るか思い切って原作に当たってみようかと思っていた作品がまさに「映画で読む」という特集で劇場上映となりましたので朝の回に行ってきました。
ディレクターズカット版164分、エロ・グロの表現や戦争の悲惨なシーンはありながらも全体的にはロー・テンションの落ち着いた雰囲気だったのは意外。かといってダレるとか厭きるという事はありませんでした。
3歳の子供の視点で追ったドイツ・ポーランドの史実という意味でもドイツ・ポーランドの方々にとって重要な位置を占める作品だと想像されます。
大人の嫌らしくも汚い世界を見て成長を自ら止めてしまい、冷静で残酷な視点を持つオスカルは不気味で好みではありませんが、その大人達の営みが生々しく描かれていて、これが本作の一つの魅力ともなっていますね。特に可哀想な母親アグネスのアングラ・ヴィンクラーの凄まじい演技、エロくて良いです。
成長を止める(抵抗)事とガラスを割る声帯超能力(抗議)と捉えられると思いますが、やはり本当の武器はブリキの太鼓。コミュニケーションでありアジテーション。
ラスプーチンとゲーテ
オスカルのブリキ太鼓がナチスのマーチをシュトラウスのワルツに変えてしまうシーンが皮肉たっぷりで痛快。
遠足、離れた所に父親。母親と叔父がいちゃついているのを見つめる息子。ドロドロ。
冴えたグロテスク表現。
ホルマリン標本のガラスが破裂して標本の散乱する床、壁に滴るホルマリン液。
おしっこ入りカエルのスープ。
馬の首から鰻がぞろぞろ。
魚の貪り食う、精神を病んだアグネス。
冴えたエロ表現
母と叔父のピアノ演奏、遠足でのいちゃつき。
子供をおもちゃ屋に預けて30分、安ホテルでの性急な逢瀬。
3歳の肉体のまま思春期を迎える後半は当然オスカル自身の性的表現が増えて行きます。
同い年16歳のマリアへの初恋。
しかしマリアも性に貪欲な牝。
早漏アルフレートを水鉄砲呼ばわり、マリアは義母となり義弟を産むが、弟は実は我が息子であると確信しているオスカル。
本物の小人と本物の子供の共演も見ものです。
読唇術の彼女はいくつ年上だったのでしょう。
小人慰問団の活躍は動画で。ドノヴァンの曲に乗せて。
CPV The Tin Drum - Sunshine Superman
オスカルは3歳にしては大きすぎて6,7歳にしか見えませんが、そこは子役の事情であまり気にしない方が良いでしょう。
ポーランドにナチス・ドイツの影、第二次世界大戦、ソ連軍による支配と、オスカルの周りの人々はどんどん退場して行きます。
とにかく長い年月の物語の随所でエピソードが盛り込まれていく。
原作者のギュンター・グラスの元には多くの映画化のオファーがあったそうですが、それまで全て断っていました。それは物語の断片エピソードをテーマにした物ばかりだったからだとか。
フォルカー・シュレンドルフ監督作の本作企画はほぼ物語全編の映画化であっため了承したんだそうです。
確かに一部のエピソードを抜き出しても面白そうな物が出来上がりそうです。
わざわざ祖父母の代から語られる本作。長いけどそこが肝なのかもしれません。
朝っぱらから164分、堪能しましたが疲れもしました。
池袋 新文芸座
新文芸坐はたまに良いプログラムがあるのですが、1日限りの上映が多くて、スケジュールの都合が付きにくい。
今回は観たいものが土曜だったので良かったです。
先週の朝一の回でした。
こうしてimaponさんのブログにて紹介されているお写真やストーリーに接していると懐かさをかんじます。
本作と『愛と哀しみのボレロ』で俳優のダニエル・オルブリフスキーを知ったのが今となっては30数年前。それがアンジェリーナ・ジョリー主演のスパイ映画『ソルト』に出演していたのを観た時は「この人,もうこんなに老けたか」とビックリしてしまいました。
馬の首のシーンにはギョッとしてしまいましたし,お婆ちゃんのスカートの中に隠れるシーンとか印象的でした。
でも長かったなァ。
コメント嬉しいです。感謝感謝。
月日が経つのは早いものですね。30年ですもんね。
当時は映画にほとんど興味が無かった者ですから
懐かしの名画が劇場で上映される機会にお好みと思われる物を鑑賞するのが楽しみです。
朝からたっぷり164分はホント、長いですよ~。