宇治群島の釣りつづきー6
死闘・馬乗り碆
新しいしかけを結んで投げ込んだ。
すると、シズが底に着くかつかぬかに、やけにリールの回転が速くなり、いくらでも糸が出る、これは不思議と慌ててストップをかけてみると、なんとこれが「落ち込み喰い」でそのまま穂先が一気に舞い込んだ。ところがこやつも前回と同じで、どうにも竿が立たず、完全な力負けで道糸を引ちぎって逃げられた、それから後は連続4回、来る奴来る奴が皆、ナイロンを切って逃げてしまう、私はただ使役のように、餌をつけかえては抛り込み腕も折れんばかりの力比べを奉仕するだけのぜんぜん翻弄された形になった。
新品の百メートル銀鱗を巻き込んだリールの道糸も二つながら殆どなくなった、もう完全なノックアウトである。
私すっかりノボセ、頭に来てしまい、力んだのと恥ずかしいのとで真っ赤になりながら、クエ用の六分の道糸を巻いた61型リールを、船から持ってきてもらうように頼んだ「鶏をさくの牛刀を以て・・・」の例えながら、もうこうなれば、手段や方法を選んでおれない。さればと言って、今更場所を替えるのも、いささか業腹である。この場所はハエの真下がゴボッと入り込んでそこがヒサの巣にでもなっているのか掛けたやつがみな沖へ走らずに手前の穴へ突っ込むように逃げ込もうとする。
これでは糸が高切れするのも無理はないが、船頭氏や林氏の手前もある、何とかこの難所でたとえ1枚でも、モノにしないことにはOACの名誉に関わる、そう考えてその場所にへたりこみ、イライラしながら、新しく強力な援軍=リールと糸=がつくのを待った。
船頭氏と林氏は慰めの言葉もないような憐みの顔つきで、時々チラリと私の方を見る。ところが皮肉なもので、深みを釣る私に引かえ、浅場しかつれない船頭氏の竿にはてんでアタリすらもない。
続く