佐藤功の釣ったろ釣られたろ日誌

釣り・釣りの思い出・釣り界のこと・ボヤキ.etc

日本の磯の開拓者ー8

2022-07-16 19:55:28 | 釣り界の歴史

アラ2本

夕方から急に南西の風がつよくなった。空も暗雲が低く、どうやら今夜あたりからシケらしい。この調子では明日の出漁は到底難しい様子なので、一応帰投をかんがえたものの、クエが1本もないのはなんとしても寂しくそれで最後の夜釣りを決行することにした。午後6時、薄気味の悪い大きな洞窟の入り口のハエに上がる。水が古沼のように青黒くよどみ、ひたひたと足元を洗う波が夜光虫のせいか、蛍光灯のように青白く光る。空には月影もなく、生暖かい潮風が嵐の来るのを予告して、クエには絶好の晩である。

昼の疲れで、少しウトウトし始めた頃、ストップレバーを外してあったリールが、突如ジリジリと鳴る。「スワッ来た!」とばかり、飛び上がって

パチンとストップを入れ、手袋をした手で、グイと六分の道糸を引っ張った、しかし昼のヒサのことを思うと、ずいぶんと軽く頼りないことおびただしい。簡単に取り込んでランプに照らすと、二貫五百目あまりの小さいやつ、いささかガッカリする。

取り込むとき、余り強引にやり過ぎたので、竿の穂先が折れて、ダメ、それで今度はロープに仕掛けを結んで抛り込んだ。

この仕掛けはこの地方独特のもので、オモリがなく、従って底が取りにくいが、それでも魚の重みでどうにか沈む。ハリはこれがまた、この地方独特のものでゼンマイ型にくびれていて、絶対に根係する心配がなく、それでいて一旦魚が食い込んだら地獄という重要なもの。

こいつを抛り込んでしばらくすると、コマセた2貫の撒き餌が利いてきたのか、海底の辺りがポーッと青白く光ってきた。南宴の海は夜光虫が多いせいか物が動くと凄くよく光る。「アラです、来ましたヨ」林氏の声に緊張して待つ間もなく、手にしたロープがズルズルとゆっくりと引かれていく、これは絶対に波の引きではない、しめたッ、とばかり、ソロソロト2ヒロほども送り込んでやってから、グイと力一杯たぐると、何と浮遊物でもひっかけたようなズッシリ重いだけの感触、たぐり寄せると、ズルズルとついてきて、至極簡単に波の上に浮いてしまった。

ランプを当てると、それでも3貫4百余りのまあまあのヤツそれにしても味気ないことおびただしい。

この頃から,雷鳴しきり、それにボツボツ雨も落ちてきて、風が次第に強くなる,折角喰いが立って来たのに、と残念至極だったが、早々に切り上げて船に帰る、船頭も2貫2百ぐらいのを一つあげていた。

船の生け簀を開けて覗くと、石鯛やクエが運命を達観したように悠然と泳いでいる、誠に壮観であった。

 

 

 

 

 

 

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