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映画『東京家族』について

私の芝居見物記(二) 『メルシー! おもてなし(志の輔らくごMIX)』

2016年05月29日 | 映画『東京家族』
 六月は中井貴一である(笑)。



 五月は歌舞伎だったので、次は落語に関係する舞台にしよう、と思った訳ではなく、実を言うと何も考えていないのである














〔2016.6.12 追記〕


 中井貴一といえば映画『ビルマの竪琴』(1985)をはじめ数知らずの代表作があるけれど、私のなかではテレビドラマ『徹と由紀子』(1984)が最高峰の特別な位置にある。私が真底熱中し、次の週の放映を心待ちにした最初のドラマであり、これ以後テレビドラマというジャンルはほとんど観る機会がなくなったから、私にとっては止めのドラマともなるのである。
 しかしこれほどの作品が私の周りではあまり知る人がなく、DVDは勿論、ユーチューブにも映像の断片が残っていない。僅かに中井貴一の主題歌『青春の誓い』が配信で販売されているが、残念ながら私はCD派なので買わなかった。なにか手掛りになればと思い、アマゾンの古書で多分ドラマのノベライズだろうと注文した本が、なんと脚本のジェームス三木氏の完全版シナリオで、驚き、欣喜雀躍した。








Pretend Nat King Cole






 たしかにビデオデッキの普及前に、気に入った映像作品を手元に置いておきたい時、シナリオは重要な手段だったのだ。シナリオは場面の設定と最小限のト書、それに登場人物の会話のみで構成されている。読者はそれを読んで映像を思い出したり想像したりするのだが、これは落語を聴く体験に似ている。事実今回このシナリオ『徹と由紀子』を読みながら夜中に私は何度も大爆笑をしていまい、近所迷惑を心配したほどである。後で簡単な人物相関図を付けておくが、配役のポイントは印刷屋の主人役の小林亜星である。その息子役の中井貴一が、今回の舞台『メルシー! おもてなし』では時を隔てて薬屋の主人になったような不思議な感覚に陥った。
 この舞台は立川志の輔の四本の落語を再構築して一編の物語としている。つまり志の輔師匠の「言葉」を、俳優の体と舞台美術,照明,衣装,音響,音楽で実体化するという途轍も無い作業なのだ。フランス公使の娘が帰国する前日の晩に急に雛人形が見たいと言い出し、それに外務省の職員と通訳、そして成田空港に近いという理由で選ばれた商店街の人々が右往左往するという、なさそうでありそうなやはりなさそうな設定の物語である。舞台は企んで面白さを出そうとするものではなく、俳優がそれぞれ荒唐無稽な物語の役に没入しきって出す笑いの爽快さが極上である。
 6月26日まで、パルコ劇場。






 『徹と由紀子』 人物相関図

〔元吉印刷所〕 戦前から続く印刷屋。
元吉征二 (小林亜星) 元吉印刷所の主人。
   弥生 (坂本スミ子) その妻。しかし征二は婿である。
   徹 (中井貴一) (名門でない学校の)大学生。好青年だが、物事を深く考えることはしない楽天的な面もある。
   妹,姉


〔今岡家〕
今岡高雄 (伊東四郎) 将棋棋士。
   加奈 (吉行和子) その妻。
   由紀子 (石原真理子) 神田の経理学校で税理士の資格を取るべく勉強中。芯が強い。
   弟

安中芳之 (小倉一郎) 高雄の弟子の若手棋士。由紀子の婚約者だが由紀子はそれほど思っていない。

〔喫茶ピーターパン〕
耕平 (大門正明) 喫茶店のマスター。徹の友人。
早苗 (遠藤京子) 耕平の妹。徹の中高時代の同級生で、徹を思っているが徹の気持ちはわからない。

〔DIK興信所〕
井沢伝 (小野ヤスシ) 興信所所長。


〔物語〕
ある日突然、元吉征二と今岡加奈がいなくなる。駆落ちしたのではないか? 周囲は慌てるが吉行和子はいいとして、相手は小林亜星である。そんなはずはない。それぞれの親を探す過程で徹と由紀子は出会う。

〔ジェームス三木の「あとがき」から〕
“書きはじめたのは、年が明けてからである。ハッピーエンドか悲恋のラストかは、わざと決めずに書いた。作者にさえ展開が分からないのだから、いくらドラマ馴れした視聴者にも先を読まれる気づかいはない。 第三話ぐらいから早くも登場人物がひとりでに動きはじめた。あとはその軌跡を追えばよかった。ラストは第十一話を書き終えるころ(全十三話) 自然に見えてきた。”

















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