コロナ禍で廃業寸前のバー店主、ジム経営者の絶望「もう家賃が払えない
4/20/2020
長引くコロナショックで、個人事業主、特に店舗を構える飲食店、サービス業の生活基盤がいよいよ脅かされてきている。筆者の周辺から漏れ聞こえてくる当事者たちの悲鳴と現状についてお伝えしていきたい。
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バー経営者(47歳)「ダメージが少ないうちの廃業も視野に…」
コロナウイルスの自粛要請によって、居酒屋やバーなど夜の酒場は壊滅状態に陥っている。東京世田谷区でカジュアルなバーを営む小森昭典さん(仮名・47歳)によると、3月中旬までは営業が成り立っていたという。
「もちろん売上は落ちていましたけどね。それでも『こういうときだからこそ……』と支えてくれる常連のお客様もいたんです。だけど3月30日に小池百合子都知事がバーやナイトクラブの自粛要請をしたじゃないですか。あれで万事休す。4月7日の緊急事態宣言を前に店を閉めました」
いち早く休店へ踏み切ったのは理由がある。休業支援や貸付を店側が実際に手にできる権利は、休業したのが早い順だという話があったからだ。ちなみにこの説は税理士と相談する中で出てきたという。
「うちは家賃が20万円弱。店を開けなくても、水道、ガス、電気、ネットなどの光熱費はある程度かかる。つまり固定費だけで30万円くらいは飛ぶんですよね。今は家賃の支払いを待ってもらえないか大家に懇願書を提出したり、金融公庫に相談したりしている最中。とはいえ金融公庫も常に長蛇の列で、カオス状態ですから。精神的に疲弊しています。
一番の問題は収束するメドが見えないことなんですよね。GW明けには普通に営業できるようになっているなら、なんとか持ちこたえられる。だけどこの状態が半年~1年続くようなら、ダメージが小さいうちに店を畳みたいというのが本音です」
小池都知事は会見の中で「飲食店での酒類の提供時間は午前5時から午後7時まで(営業は夜8時まで)」とするよう要請した。夜間の3密を避けるため夜7時までというのはわかるにせよ、朝5時というのがまったく腑に落ちない。 「夜間に外出しなくても、昼間に3密していたら本末転倒ですよ。実際、高円寺などは週末は昼間から営業している焼き鳥屋がゴロゴロあります。経済的に追い詰められ、破れかぶれになった居酒屋オーナーがどんどん昼営業に踏み切ることだって考えられる。
そうなった場合、ストレスが溜まった客で賑わうはずです。いくらコロナが騒がれても、子供は公園で遊ぶじゃないですか。はけ口を求める大人が酒場に行くのも同じこと。飲み屋は大人の公園ですからね」 繁華街に活気が戻るのはいつの日か……。
スポーツジム経営者(52歳)「行けないのに金を払う会員はいない」
東京都から「クラスターが派生しやすい場所」とを名指しで休業要請されたスポーツジム。経営はどこも火の車だ。ジムの月謝は銀行から自動引き落としされるため、売り上げへの影響は少ないというイメージがあるが、話はそんな単純ではないという。都内の超一等地でジムを運営して20年以上になる太田忠司さん(仮名・52歳)が語る。 「大手の定額ジムと違って、うちの場合は引き落としが会費だけですから。インストラクターがつく指導料は月によって変えていきたいというお客さんがほとんどだし、スポット会員だっている。それに休会や退会だって多いですからね。ジムへ行かないのにお金だけ払うのは当然みんな嫌でしょう。 2月まではよかったんですよ。会員さんも1~2か月は我慢してくれます。でも政府が長期戦になるとコメントを出したものだから、辞める動きがどんどん加速した。外出禁止の要請が続くと、やっぱりみなさん考えますよね」 経済産業省は「持続化給付金」として法人200万円、個人事業者で100万円の給付を発表している。ただしこれは収入を証明する銀行通帳の写しが必要で、手続きは単純ではない。情報も錯綜しており、担当部署にも電話が繋がらないという。個人事業者給付の道を模索する太田さんも「来店が基本」「予約はできない」「4~5時間待ちの状態」と関係者から聞き、みるみる気持ちが萎えていった。 「支給条件は『前年同月比50%の減収』。あくまでも収入減であって、利益減じゃダメというのがネックになる。うちの場合、家賃がかなり高いですから。政府もこんな非常時に補償渋りしている場合じゃないでしょう。財源確保ができないと言い訳するけど、議員報酬や歳費、あるいは公務員の人数を削ってまで財源を確認する覚悟がない。結局、他人事なんですよね。
今までのところ、政府の対応には不満しかありません。でも、さすがにこのまま進むとは思えない。この調子じゃ日本経済が崩壊してしまいますしね。一刻の猶予もないのは事実ですが、行政がどういう動きをするのかしっかり様子を見たいです」 先の震災のときは「ピンチはチャンス」と気持ちを切り替えて踏ん張ったが、「今回のピンチはピンチでしかない」と肩を落とす太田さん。自身の分身ともいえるジムを閉鎖して、新たなビジネス展開も考え始めているという。
嘆きは止まらないが、それでも生きていくためには自ら動くしかないということか。コロナ騒動が収まったところで、経済がガタガタになったら弱肉強食の生存競争が一段と激化するはずだ。事業主の暗中模索は続く。