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元「かばん持ち」が語る「マッドマン」の本当の人格>トランプ「クレイジー」戦略は今回も成功するのか

2024年09月11日 18時05分36秒 | 天候のこと
トランプ「クレイジー」戦略は今回も成功するのか 元「かばん持ち」が語る「マッドマン」の本当の人格






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目次


共和党全国大会の最終日、指名受諾演説を終えて、会場の支持者に語りかけるトランプ前米大統領=2024年7月18日、ミルウォーキー
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>トランプの「過激さ」は戦略
「トランプ節」――罵詈雑言を交えたトランプの「過激さ」は2015年、大統領選に出馬する直前に、公的人格として、戦略として意図的に採用されたものだ。

>トランプ氏のかばん持ちを務めたJohn McEntee氏。常に行動を共にしていたトランプは「協調性があり、公平に仕事をする」
  私が見たトランプは、誰とでも気軽に話し、協調性があり、差別的な言葉も使わないし、誰とでも公平に仕事をしていました。自分と意見が異なる人とも自ら進んで関わっていました。work ethic(「労働倫理」、特に労働は価値あるもので、 働けば働くほどよいとする考え)もしっかりしていました。



 ジョー・バイデンに代わりカマラ・ハリスが指名され、にわかに行方がわからなくなった米大統領選挙。「プロジェクト2025」をご存じだろうか。プロジェクトは、ドナルド・トランプが大統領に返り咲いたとき、政権移行がスムーズにいくように立ち上げられたとされる。その上級顧問を務め、トランプの個人秘書でもあったジョン・マッケンティー氏がインタビューに応じた。


【写真多数】トランプは協調性がある? ジョン・マッケンティー氏


*  *  *




弱冠25歳でトランプ陣営へ
 マッケンティー氏が上級顧問を務める「プロジェクト2025」は、ロナルド・レーガン政権を支えたとされる大手のシンクタンク、ヘリテージ財団が主導して進める米政府再編構想で、100以上の保守系団体が参加している。


 マッケンティー氏は、トランプ1期目の政権のときに個人秘書、つまりかばん持ちをしていた人物だ。政権末期には要職の大統領人事局長に就き、トランプのアジェンダに合わない政府高官を追放する役割を担っており、政権内で一目置かれる存在となっていた。


 2015年6月にトランプが大統領選出馬を表明したとき、マッケンティー氏はまだ25歳だった。


マッケンティー氏:トランプが出馬を表明したとき、私はちょうどフォックスTVでエントリー・レベルの仕事をしていました。出馬を知り、選挙運動に参加したいと思い、応募したら採用されました。スタートアップ・ビジネスと同じような感じで、非常に小さな規模でした。予備選挙を勝ち抜いていくにつれ、指数関数的に規模が大きくなっていったのです。


 私は初期に入っていたので、rise through the ranks(出世の階段を上ること)は簡単でした。



トランプと行動を共にし、状況を報告
 ボランティアから始めて、候補者(トランプ)のスケジュールを管理する地位になり、次に候補者だけではなく、スタッフのすべてのトラベルのブッキングをしました。


 2016年にはトランプの側近として、常に一緒に行動をするようになりました。いわばかばん持ちです。トランプが必要としたものをすべて用意し、状況を把握してトランプに報告する、かなり重要な立場でした。


――マッケンティー氏は、当時の環境をこう振り返る。


マッケンティー氏:間違いなく、ペースが速い環境でした。やるべきことが多かったのですが、常に状況を把握しなければなりませんでした。仕事の量に圧倒されてつぶれては何もなりませんので、常にやるべきことに集中していました。


――常にトランプのそばにいた、ということは、トランプの「本当の姿」を至近距離でずっと見ていたということになる。トランプは過激な発言や罵詈雑言を繰り返していたのか。




和党全国大会の最終日、指名受諾演説を終えて、会場の支持者らを見つめるトランプ前米大統領=2024年7月18日、米ウィスコンシン州ミルウォーキー


トランプ氏のかばん持ちを務めたJohn McEntee氏。常に行動を共にしていた
トランプは「協調性があり、公平に仕事をする」

 マッケンティー氏:それはpublic persona(公人としての人格)としてのトランプです。私が見たトランプは、誰とでも気軽に話し、協調性があり、差別的な言葉も使わないし、誰とでも公平に仕事をしていました。自分と意見が異なる人とも自ら進んで関わっていました。work ethic(「労働倫理」、特に労働は価値あるもので、 働けば働くほどよいとする考え)もしっかりしていました。


――米大統領選に向けた共和党の全国大会は、7月18日にウィスコンシン州ミルウォーキーで最終日を迎え、トランプは同党の大統領候補指名を受諾する演説を行った。




 前半はかなり抑制されたトーンで7月13日の銃撃事件を振り返り、国民の結束を呼びかけたが、後半になるといわゆる<トランプ節>が復活した。


 マッケンティー氏に言わせれば、「前半がトランプの私的な人格で、後半が公的な人格」ということになる。


トランプの「過激さ」は戦略
「トランプ節」――罵詈雑言を交えたトランプの「過激さ」は2015年、大統領選に出馬する直前に、公的人格として、戦略として意図的に採用されたものだ。



 当時のトランプのアドバイザーの一人で弁護士でもあるサム・ナンバーグ氏は、「16人も立候補者がいれば、まるで議員選挙みたいになる」とトランプに言ったという。ナンバーグ氏はこうも言っている。「トランプは候補者の集団から抜け出すべく、挑発的な、言語道断とも言える方法に出るという意図的な決断をした」


 トランプ自身、ニューヨーク誌に「もし私が大統領らしい振る舞いをしていたら、他の候補と何ら差別化はできず、とっくに消えていただろう」という趣旨の
ことを語っている。


 普通はその逆だ。つまり私的な会話で罵詈雑言を吐いていたとしても、公的な場ででは洗練された言葉を使う。だが、トランプが罵詈雑言を吐くと、いかにも「トランプらしく」聞こえる。それが彼の人格である、と認識している人も多いだろう。


「暴言戦略」の広告効果は20憶ドル
 だが、暴言こそが、トランプの戦略だった。暴言を吐くとメディアが注目することを、トランプは熟知していた。トランプは自分のリアリティ番組「アプレンティス」で、“You’re Fired!”と怒鳴った方が面白いことをわかっていた。


 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、1期目の選挙戦でトランプが集めたメディアの注目を広告費として換算すると、2016年8月の時点で20億ドル近くにもなるという。


 対照的なのが、バイデンが大統領選からの撤退を決断し、バトンを渡した、副大統領のハリスだ。




バイデン米大統領から後継指名を受けた後、初めて集会で演説するハリス副大統領=2024年7月23日、米ウィスコンシン州ウェストアリス

ハリスのスタッフ43人が辞めた
 日本ではあまり報じられていないが、彼女は私的な会話では、いわゆるfour-letter word(4 文字からなる卑猥な単語: fuck, cunt, shit など)を連発することは、アメリカではよく知られている。けれども、公的な立場では絶対にfour-letter wordを言わない。


 ただし、ハリスは、公表されているハリスのスタッフの47人のうち43人が辞めている。「パワハラ」といっても過言ではない口調で、スタッフを問い詰め、その様子を目撃して辞める人もいたという。かつて検事であったことから来ているふるまいかもしれないが、トランプがプライベートで示した「協調性」とは対極にいるといっていい。




ビジネスマンのバックグラウンド

マッケンティー氏:政治についてはアウトサイダーであることが、トランプに他とは異なる視点を与えていたのだと思います。トランプは不動産業やテレビ界を席巻した人物です。その人が政治という新しい分野に挑戦し、しかも今までにない独自の方法で取りかかっている姿を見るのは、楽しく刺激的なことでした。明らかにビジネスマンのバックグラウンドがあったからこそ、「戦略的に暴言を吐く」という新しい戦略を選んで、奏功したのだと思います。


――トランプは「権威主義的である」とみている人は多い。実際はどうだったのか。


マッケンティー氏:権威主義的ではまったくありませんでした。1期目にはトランプのアジェンダに反対する人が政府にたくさん入っていました。もし彼らがもっとトランプと協力する気があれば、この国はもっとよくなっていたでしょう。私は、トランプが自分に反対する人に対して、権威主義的な態度をとっている姿を見たことがありません。




著者のインタビューに応じるジョン・マッケンティー氏
「クレイジー」であることの有効性
――トランプは「予測不能(unpredictable)」ともいわれるが、実際はどうなのか。


マッケンティー氏:その通りですが、トランプの予測不能性は長所として作用していると思います。いま、ウクライナやガザで戦争が起きていますが、もしトランプが大統領だったなら、起きていないと思います。トランプがどう出るか、予測がつかないからです


――歴史学者のニーアル・ファーガソン氏は、政権内部の人間から直接聞いたとして、筆者にこう話した。トランプは2022年、「自分が大統領であれば、プーチンはウクライナに侵攻していなかっただろう。『ウクライナを攻撃したらモスクワを爆破する』とプーチンに言ったからだ」と言ったのだという。


「トランプは、リチャード・ニクソンが最初に説いた『マッドマン・セオリー』(狂人理論)を象徴するかのようだ。もし相手が私をクレイジーだと思えば、相手の計画や行動を抑止できるという理論であり、戦略である。実際にトランプが大統領だった期間、ロシアも中国もアグレッシブな立場を一切取らなかったのである。みごとに『マッドマン・セオリー』の有効性が証明された」(ファーガソン氏)


(ジャーナリスト・大野和基)


※文中一部敬称略





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