
追ふごとく追はれるごとく桜狩
朝日俳壇でこんな句を見た。桜キチの気持ちをズバリ表現している。「追はれるごとく」という中七が見事だ。この数日、まさに追われるような気持ちで、さいたま県の桜を追いかけた。
「三寒四温」とはこんな気候を言うのだろうか。一日暖かいと次の日は真冬並みの寒さの繰り返しで、満開の桜が未練がましく枝にしがみついている。
さいたま市の近辺では、2010年の桜まつりは4月4日の日曜日に終わったというのに、1週間後の11日にも満開が続いていた。
東上線柳瀬川駅から徒歩で行ける「長勝院ハタザクラ」は、昔から気になっていた。なにしろ「世界に一本」との触れ込みだから、桜キチとして見たい見たいと思いながら、毎年チャンスを逃していた。やっと見られたのは、この度重なる寒の戻りのおかげで、運良く満開だった。
桜は花弁が5枚。ところが、一重咲きの大きな花に目を近づけてよく見ると、花の中にもう一、二枚花弁のようなものが見える。雄しべの一部が花弁のように変化したもので、旗のように見えるので「旗弁」と呼ばれる。
よく観察すると、どの花にも旗弁があるわけではなく、のぞきこんで旗弁を見つけるのも楽しい。ハタザクラの名前のいわれである。
隣に満開の染井吉野があるので、比べてみると、花つきは似ているが、ハタザクラの方が白っぽい感じだ。1998年、新種と認められ、市民の木に指定されている。樹齢は400年以上、樹高11.2m、目通り3.07mでヤマザクラの変種だという。
今は一本ではなく、近くにも植わっているし、志木市の市役所前にもある。さいたま市桜区の区役所の構内でも開花前のを見かけた。
長勝院と言っても、寺は解体されて無い。城だったというこの地の昔を偲ばせるのはこの老桜だけである。寺には源頼朝の妻政子、桜には在原業平にちなむ話も伝わる。
柳瀬川に近いが、その堤の約1.8kmにわたる190本の染井吉野も満開で壮観だった。
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