定年後10年間、PR業界に身を置いていたので、業界用語は素人よりは分かる。
「差別化」という用語がある。「差別」という語が嫌いなので、決して好きな言葉ではないが、さいたま市大宮のJACK大宮の11階を本拠とするこのFM局は、さしずめ“差別化の塊”と言っていいだろう。
「差別化」とは、「ライバル社と差別、つまり違っている」ということ。他の社と比べて「特徴がある」という意味である。
何がライバル社と違い、特徴があるのか。この局のホームページなどをのぞいて見るとよく分かる。
1988年に放送開始した当時は、「エフエム埼玉」と称していた。FM局としては全国で29番目。FMは県内には、NHK・FMしかなかった頃である。
西武鉄道が設立に深く関わり、今でも筆頭株主。埼玉県や読売東京本社、朝日、日経、中日、ニッポン放送、埼玉りそな銀行も株主だ。
2001年に「エフエムナックファイブ」と改称した。周波数が「79.5MHz」で開局当初からこの愛称で親しまれていたからである。「79.5」は確かに「ナックファイブ」と読める。
普通のFM局は音楽中心だ。この局では「しゃべり(トーク)」を重視していて、アナウンサーもおしゃべり上手である。
トーク番組は通常AM局に多いのに、この局では番組全体の7、8割を占め、FM局では異色である。
流す音楽の選択も他の局は、外国の曲「洋楽」が多いのに、この局では日本のJ-POPなど「邦楽」の割合が高い。演歌・歌謡曲をテーマにした番組もある。
プロ野球の西武ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)が関係していることもあって、1989年日本のFM局で初めてライオンズのスポーツ中継をした。
年間を通じて定期的にスポーツ中継をするFM局はほとんどないという。スポーツ情報番組も何本かある。
野球だけではなく、埼玉県にフランチャイズを置くサッカーのJリーグ「浦和レッズ」や「大宮アルディージャ」の実況中継もする。
さいたま市大宮公園サッカー場の命名権を取得していて、「NACK5スタジアム」と呼ばれる。
「大宮アルディージャ」のホームスタジアムであるこのサッカー場は、日本初のサッカー専用球技場で、現存するものとしては国内最古というから驚く。
県内で発行部数が一番多い読売東京本社が、西武鉄道に次いで持ち株が多いので、この局は愛県精神が極めて高い。
系列局ではなく、独立系局なのに、報道局「ニュースルーム」を持ち、ミニニュース番組や時事解説番組があるのも珍しい。
アナウンサーも局専属ではなく、他局番組にも出演するため、番組出演契約に近い形になっている。
インターネット・ラジオ「radiko」の配信地域は関東1都6県。14年4月から「radiko jp プレミアム」で日本全国へ配信されている。
このような特徴と配信地域の拡大で、18年10月31日で開局30周年を迎えたこの局はJ-WAVEとともに関東のFM局聴取率で1、2位を争うほどに成長した。特に東京駅を中心とする半径35km圏内では、男女20~34歳の聴取率はAM、FM曲中で1位だという。
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