新古今和歌集の部屋

新古今集切第十四 恋歌四 下段 玉英堂稀覯本書目

 
いはざりき今こんまでの空の雲
 月日へだてゝ物おもへとは           →摂政太政大臣
思い出よ誰かねごとの末ならん
 昨日の雲のあと山風       家隆
忘行人ゆへ空をながむれば
 絶/\にこそ雲もみえけれ           →刑部卿範兼
わすれなばいけらん物と思ひしに         物と→物かと
 それもかなはぬ此世なりけり   殷富門院大輔
うとくなる人を何とてうらむらん
 しら◯ずしらぬ折もありしに   西行    しら◯ず→しられず
今ぞしる思ひ出よと契りしは
 忘れんとての情なりけり     同
あいみしはむかしがたりのうつゝにて
 其かねごとを夢になせとや           →土御門内大臣
哀なる心のやみのゆかりとも
 みし世の夢を誰かさだめん    公経    みし世の→見し夜の
契りきやあかぬ別に露をきし
 暁斗かたみなれとは       通具
恨わびまたじ今はの身なれども
 思ひなれにし夕暮の空      寂蓮
七十
わすれじのことの葉いかに成にけん
 ◯めし暮は秋風ぞふく             ◯めし→頼めし →宜秋門院丹後
思ひかねうちぬるよひもありなまし
 吹だにすさめ庭の松風             →摂政太政大臣
さらでだにうらみんと思ふわぎもこが
 衣のすそに秋風ぞふく      有家
心にはいつも秋なるねざめかな
 身にしむ風のいくよともなく          →よみ人知らず
哀とてとふ人のなどなかるらん
 物おもふやどの荻の上風     西行
我恋は今はかぎりと夕まぐれ           今は→今を
 荻吹風の音づて行        俊恵    音づて→音づれて
今はたゞ心の◯にきく物を             心の◯に→心の外に
 しらずがほなる荻のうは風    式子内親王
いつもきく物とやひとの思ふらん
 こぬ夕暮の松風のこゑ             →摂政太政大臣
 
 
※◯読めない字
※下線は穂久邇文庫蔵本(岩波文庫)との差異。
 
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