新古今和歌集の部屋

読癖入清濁付伊勢物語 十段〜十三段 武蔵野 蔵書


喜多川歌麿 見立伊勢物語 武蔵野

 

 

 

 

 

 

 

昔、男、むさしの国までまどひありきけり。扨其国にある女を、よ

ばひけり。ちゝはこと人にあはせんといゝけるを、母なんあて成人に心付たり

ける。父はなを人にて、母なん藤原成ける。扨なんあて成人にと思ひける。此

むこがねによみておこせたりける。住所なんいるまの郡、みよしのゝ里成ける

  みよしのゝたのむのかりもひたふるに君が方にそよるとなくなる
むこかねかへし
  わがかたによるとなくなるみよしのゝたのむのかりをいつかわすれん

と、なん人の国にても、なをかゝる事なん、やまざりける。
               ともだちども
十一むかし、男、あづまへ行けるに友達共に、道よりいひをこせける
拾遺
  わするなよ程はくもゐに成ぬともそら行月のめぐりあふまで

十二昔、男、ありけり。人のむすめをぬすみて、むさしのにゐてゆく
                           くさむら
程に、ぬす人成ければ、国のかみにからめられにけり。女をば草村の
                          ひ
中にをきて、にげにけり。道くる人、此野はぬす人あなりとて、火つけんとす女わび
古今            わかくさ                 
  むさし野はけふはなやきそ若草のつまもこもれり我もこもれり

と、よみけるときゝて、女をばとりて、ともにゐでいにけり
              もと
十三昔、むさし成男、京なる女の許に、きこゆればはづかし。聞えねばくるしと
かき うは むさしあぶみ かき   のち をと
書て、上がきに武蔵鎧と書ておこせて後、音もせず成にければ、京より女
               たの
  むさしあぶみさすがにかけて頼むにはとはぬもつらしとふもうるさし

と、あるを見てなん。たえがたきこゝちしける

  とへばいふとはねばうらむむさしあぶみかゝるをりにや人はしぬらん

 

埼玉県川越市三芳野神社

コメント一覧

jikan314
@chisei 遅生様
江戸時代の浮世絵の構図は、驚くものが多いですね。
見立も、粋なものが多いです。
難しそうな本で、中身は古文と、つまらない拙blogを、何時も御覧頂いている方々にも少しでも興味頂けるように、と拙コレクションを自慢しつつ、紹介しております。
伊勢物語は、本の挿し絵も多く、拙コレクションも多数有るのですが、現在書き溜めている源氏は写真ネタが少なく、使いまわして行くしか無いなあと思っております。
又御覧頂ければ幸いです。
拙句
武蔵野は行けども人のかれぬとき
(枯れぬと離れぬの掛詞。人混みのクリスマスです。それでも例年より遥かに少ない東京ですが)
chisei
見立て源氏はよく見ますが、伊勢物語にも見立てが
あるのですね。
巨大な月を背景にした大胆な武蔵野図が見事です。
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