ある本に、面痩せは、「この作者の特に好んだ審美眼である。」(角川ソフィア文庫 玉上琢彌著)とあったので、新体系の索引から調べてみる。なお帖名の横の数値は、面痩せの記載のあった新体系の頁と行を示す。
桐壺 7頁12行
限りあれば、さのみもえ留めさせ給はず。御覧じだに送らぬ覚束なさを、言ふ方なく思ほさる。いとにほひやかに美しげなる人の、いたう面痩せて、いとあはれと物を思ひしみながら、言に出でても聞こえやらず。
対象:桐壺更衣
夕顔 137頁8行
九月二十日の程にぞ、おこたり果て給ひて、いといたく面痩せ給へれど、なか/\、いみじくなまめかしくて、ながめがちに、ねをのみ泣き給ふ。見奉り咎むる人も有て、「御物の怪なめり」など言ふもあり。
対象:源氏
若紫 178頁11行
七月になりてぞ參り給ひける。めづらしうあはれにて、いとどしき御思ひのほど限りなし。少しふくらかになり給ひて、うち悩み、面痩せ給へる、はた、げに似るものなくめでたし。
対象:藤壺宮
若紫 188頁14行
「夜昼恋ひ聞こえ給に、儚き物もきこしめさず」とて、げにいといたう面痩せ給へれど、 いとあてに美しく、なか/\見え給ふ。
対象:紫の上
葵 237頁2行
院へ參り給へれば、
「いといたう面痩せにけり。精進にて日を經るけにや」と、心苦しげに思し召して、御前にて物など參らせ給ひて、とやかくやと思し扱ひ聞こえさせ給へる樣、あはれにかたじけなし。
対象:源氏
須磨 12頁15行
「位なき人は」とて、無紋の直衣、なか/\、いと懐かしきを着給ひて、うちやつれ給へる、いとめでたし。御鬢かき給ふとて、鏡台に寄り給へるに、面痩せ給へる影の、我ながらいとあてに清らなれば、
対象:源氏
明石 82頁13行
男の御容貌、有樣はた、更にも言はず。年ごろの御行なひにいたく面痩せ給へるしも、言ふ方なくめでたき御有樣にて、心苦しげなる気色にうち涙ぐみつゝ、哀れ深く契り給へるは、
対象:源氏
真木柱 113頁14行
やう/\、細やかなる御物語になりて、近き御脇息に寄り掛りて、少し覗きつゝ、聞こえ給ふ。いとをかしげに面痩せ給へる樣の、見まほしう、らうたいことの添ひ給へるにつけても、「よそに見放つも、余りなる心のすさびぞかし」と口惜し。
対象:玉鬘
若菜上 282頁12行
御息所は、御暇の心やすからぬに懲り給ひて、かかるついでに、しばしあらまほしく思したり。程なき御身に、さる恐ろしき事をし給へれば、少し面痩せ細りて、いみじくなまめかしき御樣し給へり。
対象:明石女御
若菜上 282頁15行、
「かやうに面痩せて見え奉り給はむも、なか/\哀れなるべきわざなり」など宣ふ。
対象:明石女御
若菜下 376頁3行
いかなるわざをして、これを救ひかけ留め奉らむとのみ、夜昼思し歎くに、ほれ/"\しきまで、御顔も少し面痩せ給ひにたり。
対象:源氏
若菜下 396頁2行
と宣ふに、恥ぢらひて背き給へる御姿も、いとらうたげなり。いたく面痩せて、もの思ひ屈し給へる、いとゞあてにをかし。
対象:女三宮
若菜下 398頁9行
「霜月は自らの忌月なり。年の終りはた、いと物騒がし。又、いとゞこの御姿も見苦しく、待ち見給はむをと思ひ侍れど、さりとて、さのみ延ぶべき事にやは。むつかしく物思し乱れず、明らかにもてなし給ひて、このいたく面痩せ給へる、つくろひ給へ」
対象:女三宮
柏木 8頁15行
宮も物をのみ恥づかしうつゝましと思したる樣を語る。さてうち湿り、面痩せ給へらむ御樣の、面影に見奉る心地して、思ひやられ給へば、げに憧れがるらむ魂や、行き通ふらむなど、いとゞしき心地も乱るれば、
対象:女三宮
蜻蛉 276頁6行
そのころ、式部卿宮と聞こゆるも亡せ給ひにければ、御叔父の服にて薄鈍なるも、心の内に哀れに思ひよそへられて、つき/"\しく見ゆ。少し面痩せて、いとどなまめかしき事まさり給へり。人々まかり出でて、しめやかなる夕暮なり。
対象:薫大将
蜻蛉 302頁8行
その日は暮らして、又の朝に大宮に參り給ふ。例の、宮もおはしけり。丁子に深く染めたる薄物の単衣を、細やかなる直衣に着給へる、いと好ましげなる女の御身なりのめでたかりしにも劣らず、白く清らにて、猶ありしよりは面痩せ給へる、いと見るかひあり。
対象:明石女御
手習 337頁11行
心には、「なほいかで死なむ」とぞ思ひ渡り給へど、さばかりにて、生き止まりたる人の命なれば、いと執念くて、やう/\頭もたげ給へば、物参りなどし給ふにぞ、なかなか面痩せもていく。いつしかと嬉しう思ひ聞こゆるに、
対象:浮舟
対象
桐壺更衣 1
源氏 5
藤壺宮 1
紫の上 1
玉鬘 1
明石女御 3
女三宮 3
薫大将 1
浮舟 1
合計 17