新古今和歌集の部屋

歌論 無名抄 大輔小侍從一雙事



近く女哥よみの上手にては、大輔、小侍從とてとり/\にいはれ侍き。大輔は今少し物など知りて、根強くよむ方は勝り、小侍從ははなやかに、目驚く所よみ据ふることの優れたりしなり。中にも哥の返しする事、誰にも優れたりとぞ。
本歌にいへることの中に、さもありぬべき所をよく見つめてこれを返す心ばせの、あふかたきもなき
とぞ俊惠法師は申し侍し。


○大輔
殷富門院大輔 平安末期の女流歌人。藤原信成の娘。後白河院皇女亮子内親王(殷富門院)に仕えた。歌林苑の会衆の一人。
○小侍從
小侍従 平安末期の女流歌人。紀光清の娘。二条天皇、太皇太后多子、高倉天皇に仕えた。恋歌三 1191の歌により待宵の小侍従と呼ばれた。
○俊惠法師
(1113~?年)源俊頼の子。東大寺の歌林苑の月次、臨時の歌会を主催。鴨長明は弟子にあたる。
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