くはうわうじをだきして、しじやうになかしむることなかれ。
なくときしやうがゆめをおとろかして、りやうせいにいたることをゑず。
鴬をおこして、には木のうへでなかずる。なくときゝて、こへてめをさませば、
おつとのいるりやうせい行夢でも見て、心をなぐさめよふと思ふに、行つかぬうち夢がさめると也
其二
打起黄鴬
児莫
教枝上
啼々時
驚妾夢
不得到遼西
伊州歌 其二
無名氏
黄鴬(こうおう)児を打起(だき)して、
枝上に啼しむること莫れ。
啼く時、妾が夢を驚かして、
遼西(りょうせい)に到ることを得ず。
鴬を追い払って、
枝の上で鳴かないようにして欲しい。
鴬が鳴く時、私の夢が覚めてしまうから。
せめて、あの人が出征している遼西へ夢で行こうとしているのに。
※伊州歌 伊州は、新疆ウイグル自治区の哈密。その地方の民謡で、唐の玄宗の開元時代に西涼節度使の蓋嘉運が報告した五首のうちの第三首。
※打起 打ち払って鳥を追い払うこと。
※黄鴬児 コウライウグイス。児は名詞の後につく物。
※教 使役を表す漢字。
※驚 目を覚ます。
※遼西 遼寧省西部から河北省東部。女性の夫が出征していると思われる。
唐詩選画本 巻第五 五言絶句