八雲抄巻第一 正義部
序代
昔は、可然哥合などには、多く假名序代にて、真
名はすこし也。たゞやうもなく、ふみなどの樣にかくなり。
それが、さすがに又和語をぐしたるなり。貫之大井序代
などにても、見るべし。昔より、いたく秀逸の事みえ
ず。集序も同事也。古今序は哥の眼なれば、不及子細。
後拾遺、千載などの序はさる程なり。新古今の序は、首
尾かきあひて、詞つゞき尤神妙に有がたき程也。たゞ
の序代は、かまへてみじかくて、いたく詞がちには、有
べからぬ物也。をめたる詞頻まじるところ、有べからぬ
物也。返〃見苦。よく/\心えてかくべきこと也。清
輔曰、匡房、真名序もたゞ詞に任て書といへり。まし
て假名序はたゞ口にまかせて可誦之。
※読めない部分は、国文研鵜飼文庫を参照した。