新古今和歌集の部屋

万葉集古義 鹿持雅澄 貧窮問答歌

 
萬葉集古義五巻之下
貧窮問答ノ歌ウタ一首ヒトツ并マタ短歌ミジカウタ

拾穂本には問答ノ二字なし、さて此ノ歌、貧困に窮れるさまをよめれば、貧窮と題せるなり、さて
問答といへるは、此ノ歌問答せるにあらず、歌ノ中に伊可爾之都都可汝代者和多流天地者云々、
と云て、七々の句を並べたるに、問答のすがたあれば、一首の體格の名なり、(自問自答たるに
はあらず、たゞ體格の名のみなり)此ノ上に云り、

カゼマジリ アメフルヨノ アメマジリユキフルヨハ スベモナク サムクシアレバ カタシホヲ トリツ
風 雜  。雨 布流欲乃。雨 雜  雪 布流欲波。為部母奈久。寒   之安禮婆。堅 塩 乎。取 都

ツシロヒ カスユザケウチススロヒテ シハブカヒ ハナビシビシニ シカトア
豆之呂比。糟 湯酒。宇知須々呂比弖。之叵夫可比。鼻 毘之毘之爾。志可登阿

ラヌ ヒゲカキナデテ アレヲオキテ ヒトハアラジト ホコロヘド サムクシアレ
良農。比宜可伎撫 而。安禮乎於伎弖。人 者安良自等。富己呂倍騰。寒之安禮

バ アサフスマ ヒキカガブリ ヌノカタキヌ アリノコトゴト キソヘドモ サムキヨスラヲ
婆。麻 被  。引 可賀布利。布 可多衣 。安里能許等其等。伎曾倍騰毛。寒  夜須良乎。

ワレヨリモ マヅシキヒトノ チヽハヽハ ウヱサムカラム メコドモハ コヒテナクラム コノトキハ イカ
和禮欲利母。貧   人 乃。父 母 波。飢 寒  良牟。妻子等 波。乞 弖泣 良牟。此 時 者。伊可

ニシツツカ ナガヨハワタル アメツチハ ヒロシトイヘド アガタメハサクヤナ
爾之都都可。汝 代者和多流。天 地 者。比呂之等伊倍杼。安我多米波。狭 也奈

リヌル ヒツキハ アカシトイヘド アガタメハ テリヤタマハヌ ヒトミナカ アノミ
里奴流。日月 波。安可之等伊倍騰。安我多米波。照 哉多麻波奴。人 皆 可。吾耳

ヤシカル ワクラバニ ヒトトハアラヲ ヒトナミニ アレモツクルヲ ワタモナ
也之可流。和久良婆爾。比等等波安流乎。比等奈美爾。安禮母作  乎。綿毛奈

キ ヌノカタキヌノ ミルノゴト ワワケサガレル カカフノミ カタニウチカケ フセ
伎。布 可多衣 乃。美留乃其等。和和氣佐我禮流。可可布能尾。肩 爾打 懸 。布勢

イホノ マゲイホノウチニ ヒタツチニ ワラトキシキテ チヽハヽハ マクラノカタニ メコドモ
伊保能。麻宜伊保乃内 爾。直 土 爾。藁 解 敷 而。父 母 波。枕  乃可多爾。妻子等母

ハ アトノカタ カコミヰテ ウレヒサマヨヒ カマドニハ ケブリフキタテズ コシキニハ クモ
波。足 乃方尓。圍  居而。憂  吟   。可麻度柔播。火 気布伎多弖受。許之伎尓波。久毛

ノスカキテ イヒカシグ コトモワスレテ ヌエトリノ ノドヨビヲルニ イトノキテ ミジカキ
能須可伎弖。飯 炊  。事 毛和須禮提。奴延鳥 乃。能杼與比居 爾。伊等乃伎提。短

モノヲ ハシキルト イヘルガゴトク シモトトル サ トヲサガコヱハ ネヤドマデ キタチヨバヒヌ
物 乎。端 伎流等。云  之如  。楚  取 。五十戸良我許惠波。寝屋度麻弖。来立 呼 比奴。

カクバカリ スベナキモノカ ヨノナカノミチ
可久婆可里。須部奈伎物能可。世 間 乃道。

○狭也は、サクヤと訓べし(セバクヤと訓はわろし)○日月ヒツキ
波ハ(日の下、拾穂本に波ノ字あるは、衍なり、)日月の事、此ノ上に云り、
○奴延鳥乃ヌエトリは咽喚ノドヨビといはむ料の枕詞
なり、○能杼與比居爾ノドヨビヲルニは、奴延鳥の鳴如く、咽聲に吟ひ嘆きつゝ居にのよしなり、
○楚取シモトトルは、和名抄に、唐令ニ
云、笞ハ大頭二分、小頭一分半、和名之毛度シモトとある、この笞杖を取持て、刑を行ふなり、拾遺集に老
はてゝ雪の山をば戴けどしもとみるにぞ身はひえにける、なほ楚は、一ノ卷人麻呂ノ歌に岩根イハガネノ
禁樹押靡シモトヲシナベ、とある下に具ク註ヘり、

ヨノナカヲ ウシトヤサシト オモヘドモ トビタチカネツ トリニシアラネバ
世 間 乎。宇之等夜佐之等。於母倍杼母。飛 立 可祢都。鳥 爾之安良禰婆。
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