藤生野
ふぢふのの、かたち、かたちがはらを、しめはやし、ナヨヤ、しめはやし、ナヨヤ
しめはやし、いつき、いはひししるく、ときあへるかもや、ときにあへるかもや
藤生野の、かたち、かたちが原を、標めはやし、なよや、標めはやし、なよや
標めはやし、いつき いはひし著く、時にあへるかもや、時にあへるかもや
※藤生 未詳。
婦与我 拍子九
いもとあれと、いるさのやまの、やまあららぎ、てなとりふれ、ソヤ、かほまさるがにや、とくまさるがにや
妹と我と、いるさの山の、山蘭、手な取り触れそや、貌まさるがにや、疾くまさるがにや
奥山 拍子九
おくやまに、ききるやをぢ、きやはけづる、まきやはけづる、きけづる
奥山に、木切るやをぢ、木やは削る、真木やは削る、木削る
奥山 拍子十二
おくやまに、きながす、さかきがをぢ、こやこやと、まきやはけづる、きやはけづる、きけずるをぢ
奥山に、木流す、さかきがをぢ、木やと木やと、真木やは削る、木削るをぢ
鷹山 拍子十六 二段各八
たかやまに、たかを、たかをはなちあげ、をぐをなみ、アハレ、をぐむなみ、ハレ
をぐみなみ、わがす、わがするときに、あへるせな、かもや、あへるせなかもや
鷹山に、鷹を、鷹を放ちあげ、召ぐをなみ、あはれ
召ぐをなみ、我がす、我がする時に、逢へる夫かもや、逢へる夫かもや
紀伊国 拍子十六 二段 一段九 二段七
きのくにの、しららのはまに、ましららのはまに、おりゐるかもめ、ハレ、そのたまもてこ
かぜしもふけば、なごりしもたてれば、みなぞこきりて、ハレ、そのたまみえず
紀伊国の、白らの浜に、ま白らの浜に、下りゐる鴎、はれ、その珠持て來
風しも吹けば、余波しも立てれば、水底霧て、はれ、その珠見えず
石川 拍子十五
三段 一段六 二段六 三段三
いしかわの、こまうどに、おびをとられて、からきくする
いかなる、いかなるおびぞ、はなだのおびの、なかはいたれなるか
かやるか、あやるかや、なかはたいれたるか
石川の、高麗人に、帯を取られて、からき悔する
いかなる、いかなる帯ぞ、縹の帯の、中はたいれるか
かやるか、あやるか、中はたいれたるか
葛城 拍子二十三
三段 一段六 二段七 三段九
かつらぎの、てらのまえなるや、とよらのてらの、にしなるや
えのはゐに、しらたましづくや、ましらたましづくや、オシトト、トオシトト
しかしてば、くにぞさかえむや、わいへらぞ、とみせむや、オオシトト、トシトント、オオシトント、トシトント
葛城の、寺の前なるや、豊浦の寺の、西なるや
榎の葉井に、白璧沈くや、真白璧沈くや、おしとと、とおしと
しかしてば、国ぞ栄えむや、我家らぞ、富せむや、おおしとと、としとんと、おおしとんと、としとんと
※歌論 無名抄 榎葉井事に鴨長明が、葛城を本歌取りした経緯が記載されている。
此殿 十六 二段各八
このとのは、むべも、むべもとみけり、さきくさの、アハレ、さきくさの、ハレ
さきくさの、みつばよつばのなかに、とのづくりせりや、とのづくりせりや
この殿は、むべも、むべも富みけり、三枝の、あはれ、三枝の、はれ
三枝の、三つば四つばの中に、殿づくりせいりゃ、殿づくりせりや
此殿西
このとのの、にしの、にしのくらがき、はるひすら、アハレ、はるひすら、ハレ
はるひすら、いけど、いけどもつきず、にしのくらがきや、にしのくらがき
この殿の、西の、西の倉垣、春日すら、あはれ、春日すら、はれ
春日すら、行けど、行けども尽きず、西の倉垣や、西の倉垣