新古今和歌集の部屋

鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震4 心の濁りも薄らぐかと

こゝろのにごりもうすらぐかとみし程

に、月日かさなり年越しかば、後は言の

葉にかけていひ出る人だになし。すべて

世の有にくき事、我身と栖との、はか

なくあだなる様、かくのごとし。いはんや所に

より、身の程にしたがひて、心をなやま

すこと、あげてかぞふべからす。もしをのづか

ら、身かなはずして権門のかたはらに居

る者は、ふかくよろこぶ事はあれども

大にたのしふにあたはず。歎ある時も

聲をあげて泣く事なし。進退やすか

 
 
心の濁りも薄らぐかとみし程に、月日重なり、年越しかば
後は言の葉にかけて、いひ出る人だになし。
すべての有にくき事、我が身と栖との、はかなくあだな
る様、かくの如し。いはんや、所により、身の程に従ひ
心を悩ますこと、あげてかぞふべからす。もし、をのづか
、身かなはずして、権門のかたはらに居る者は、深く喜
ぶ事はあれども、大にたのしふにあたはず。歎ある時も、
声をあげて泣く事なし。進退やすか
 

(参考)前田家本
心の濁りも薄□□かとみ□□月日重な□□□
のちには言の葉に掛けて言ひつる人だにな□
すべて世中□ありにくゝわが身と□□□はか□きあたな
るさ□□かくの□□□いはんや、と□ろ□□□□□したかひつゝ
□□なや□□事はあけて数ふべか□す。□しおのが
身□して権門の□□におるは、深くよろ□
□事あれども、大きもおほに楽しむ事あたはず。嘆き切なる時も
声を上げて泣くことなし。進退やすか
 
注:□はかすれにより見えなくなったもの。
 

(参考) 大福光寺本
心ノニコリモウスラクミエシカト月日カサナリ年ヘニシ
ノチハ事ハニカケテイヒイツル人タニナシ。
スヘテ世中ノアリニクゝワカミトスミカトノハカナクアタナ
ルサマカクノコトシ。イハムヤ所ニヨリ身ノホトニシタカヒツゝ
心ヲナヤマス事ハアケテ不可計。若ヲノレカ
身カスナラスシテ権門ノカタハラニヲルモノハフカクヨロコ
フ事アレトモヲホキニタノシムニアタハス。ナケキセチナルトキモ
コヱ ヲアケテナクコトナシ。進退ヤスカ
 

 
いさゝか すこしのこと也。
ふかくよろこぶことはあれども
大にたのしふにあたはず
 ふかくよろこぶとは、身の與(トモ)
 位のたかきことをいへり。大
 にたのしぶとは、たらざ
 るともたのみ侍られ
 はましてあまりあるをや
なげきある時もといへる
 よりないがしろにせると
 いふまでとあるものゝ、お
 ごりまづ、えきものへつ
 らひ、いきどほるありさ
 まなり。
 
 
平家物語熱田本 巻第十一 
 
 
 

コメント一覧

jikan314
@3948thankyoufoureight Shanxi様
コメント有難うございます。
私は、ただの会社員なので、国文学を勉強しているだけなんですよ。
趣味の日本の俳句、短歌には感性が重要で昔の歌を勉強しよう、勉強にはひたすら読んで行こう、物覚えが悪いので書いて覚えようとしていたら、原文のくずし字で読んでみようと欲を掻いて今苦労しております。
皆さんに拙いblogを見ていただいて、とても嬉しいです。
これからも、本を買って勉強しますので、又お時間がございましたら御来室頂ければ幸いです。
拙句
さみだれに書き写してやけふの空
(五月雨の今日の天気のようにぽつりぽつりです)
3948thankyoufoureight
先生、こんにちは。
以前、良いねとコメントさせて貰いましたShanxiです。
日本のいにしえの国文学を手掛けておられて尊敬しています。

崩し字の解読が特に難しいと思います。
また、先生のブログ見させて戴きますので、先生、これからも頑張ってくださいね。
楽しく見させて戴きます。
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