新古今和歌集の部屋

鴨長明方丈記之抄 治承の辻風1 吹きまくる間に

 


吹まくる間に其中に籠れる家共
なるもちいさきも一としてやぶれざるは
なし。さながらひらにたふれたるもあり
けたはしらばかり残れるも有。又門の上
を吹はなちて四五町が程にをおき又垣を
ふきはらひて隣とひとつになせり。いは
んや家のうちのたから、かずをつくして空
にあがり。桧皮ぶき板の類ひ、冬の木の
葉のかぜに乱るゝがごとし。塵を煙のご
くふきたてたればすべて目もみえず。をび
たゞしくなりどよむ音に物いふ声も
 
 
まくるに、その中に籠れる家ども、
大なるも小さきも一として破れざるなし。
さながら平にたふれたるもあり。桁柱
ばかり残れるも有。の上を吹はなち
四五町が程にをおき又垣をふきはらひて
と一つになせり。いはんや家のうちの
たから数を尽くして空あがり。桧皮
き板の類ひ冬の木の葉の風に乱るる
が如し。塵を煙のごく吹きたてたれば、
全て目も見えず。をびただしく鳴りど
む音に物いふ声も
 

(参考)前田家本
吹きあぐる間に、その中に籠もれる家ども、
大きなるも小さきも一つとして破れざるは無し。
さながら平に倒れたるもあり。桁柱
許り残れるもあり。門の上を吹き払ひて
隣と一つに為せり。況や家の内の
資財、数を尽くして空にあり檜皮、
葺板の類は、冬の木の葉の風に乱るゝ
が如し。塵を煙の如く吹き立てたれば、
全て目も見えず。夥しく鳴り響
む音に物言ふ声も
 

(参考)大福光寺本
フキマクルアヒタニコモレル家トモ
ヲホキナルモチヰサキモヒトツトシテヤフレサルハナシ
サナカラヒラニタフレタルモアリケタハシラ
ハカリノコレルモアリカトヲフキハナチ
テ四五町カホカニヲキ又カキヲフキハラヒテ
トナリトヒトツニナセリイハムヤイヱノウチノ
資財カスヲツクシテソラニアリヒハタ
フキイタノタクヒ冬ノコノハノ風ニ乱
カ如シチリヲ煙ノ如ク吹タテタレハ
スヘテ目モミエスヲヒタゝシクナリトヨ
ホトニモノイフコヱモ
 



頭注
 してそのさま身におはす
 いはゞあさ人のかききぬ
 きたらんがごとし。
あるは露おちて 露を
 あるじにたとへ花を住家に
 たとへたり。この心はある
 じは死ぬれ共家は残れり。
 また家のこれるかと思へ
 共またその家もやがて
 くづれあるひはすみかは
 くづれなどすれ共猶ある
 じのこれり。これも又その
 あるじもつゐにむなしく
 なるとをいへり。
朝日にかれゆふべをまつ
 ことなしといへるは朝がほと
 
 
 
 
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「方丈記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事