新古今和歌集の部屋

百人一首拾穂抄 藤原清輔 蔵書

 

 

 

 

藤原清輔朝臣

 左京大夫顕輔子。母能登守能遠女。太皇大后宮大進。正

 四位下長門守。奥儀抄、和哥初学抄、袋草子等述作の物也。

 續詞花集、此人の撰集也。奏覧に及ばずして先朝崩御

 のよし奥書にみえたり。鵜本云つら/\おもふに学ぶ

 べき人の哥の様は清輔亡父卿などにて侍るべし。其姿

 むかし今に通じてよろしき体也。幽玄の様にてしかも有

 心体を存せり。これに讀似せんとあひかまへてたしなみ

 学ふべし。それぞよもあしからじとおぼへ侍る云云。無明抄

 云勝命云、清輔朝臣哥の弘才は肩ならぶ人なし。いまだ

 よみも及ばじと覚ゆる事を、態かまへて求め出て尋れ

 ば、皆々もとより沙汰しふるされたる事どもにて

 なん侍し。はれの哥よまんとては大事はいかにも古集

 を見てこそと云て万葉集を返す/"\見られ侍し云云

ながらへばまた此ころやしのばれんうしとみし世ぞ今は恋しき

新古今雑下、題しらず云云。哥心は御抄云、次第/\に

 

 

※鵜本 愚秘抄のこと。藤原定家に仮託された偽書

※態 わざと

※無明抄云…見られ侍りし 無名抄 清輔宏才事

※御抄 細川幽斎の幽斎抄

むかしをおもふほどに、今のうきとおもふ時代をも

是より後に忍ばんずるかとの心也万人の心に観ぜん哥ぞと也

には理をつめずして心にもたせていへる常の事也。かやうに理を

せめて面白きも一体なるべし。いひつめたる歌なれども餘情ある

 

頭書
 山谷詩云
 老色曰上

 面歡悰日
 去心今既
 不如昔後
 當不如今
 此詩の心相
 似たり。

 

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