二日。天晴る。…略。巳の時、院に参ず。人々云ふ、当世の人の歌、多少を知ろし食さず。先づ之を注出して、御覧を経ベし。増減せしめんがためなりと云々。能書の人を以て、之を書かしむ。下官、只雑の部の三巻を見て詞等を直す(或人の進むる所の歌、非分の事多きに依りてなり)。又仰せて云ふ、巻の始め、大略故人を以て之を置く。然るべからず。定家、家隆、押小路の女房等三人を以て、各々一巻の始めに立つベしといへり。又之を継ぎ直す。家隆を以て仰せ秋下の始めとなし、女の歌を以て、恋の二の始めとなす。予が歌を以て恋第五の始めとなす。身の事たるに依り、態々末に入るべきなり。此の仰せ、尤も面目となす。但し、当時の如くは、卅一字を連ぬる人、未だ知らざる者多く之に入る。又昨今の未生等、十首に及ぶ。予が歌四十余り、家隆二十余りと云々。今の仰せ、頗る人を撰ぶに似たり。如何。夕に退出す。
秋歌下 藤原家隆朝臣
下紅葉かつ散る山の夕時雨濡れてやひとり鹿の鳴くらむ
恋歌二 皇太后宮大夫俊成女
下もえに思ひ消えなむけぶりだにあとなき雲のはてぞ悲しき
恋歌五 藤原定家朝臣
白栲の袖のわかれに露おちて身にしむいろの秋かぜぞ吹く
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