第三十九帖 夕霧
例の妻戸のもとに立ち寄りて
(語らひ)
たまはず。なをちかくてを。なはなち
給そ。かく山ふかくわけいる心ざしは
□□ての□るべくやは。きりもいとふか
し□とてわざともみいれぬさまに
山□□□をながめて猶/\とせちに
の□□へばにびいろのき□をすだれ
の□□よりすこしをしいでヽすそを
ひ□□□めつヽゐたり。やまとのかみの
□□□□なればはなれたてまつらぬ
(参考)
新日本古典文学体系(大島本)翻刻前
給はず。なをちかくて。なはなち
給そ。かく山ふかくわけ入心ざしは
へだてのこるべくやは。きりもいとふか
しや。とてわざともみいれさまに
山のかたをながめてなを/\とせちに
の給へば、にびいろのき丁をすだれ
のつまよりすこしおしいでヽすそを
ひきそばめつヽゐたり。 山とのかみの
いもうとなればはなれたてまつらぬ
日本古典文学全集(大島本)
なほ近くてを。な放ちたまひそ。
校正
日本古典文学体系(三条西実隆筆青表紙証本)
なほちかくてを。なはなち給ひそ。
源氏物語大成
ちかくてを…横山本、池田本、肖柏本、三条西家本、河内本、別本御物本、別本陽明家本、保坂本、國冬本
なはり給そ…七毫源氏
なはち給そ…別本御物本、保坂本
なさしはち給そ…別本陽明家本
物なはち給そ…麥生本、阿里莫本
なはなち(なはちイ)…高松宮本
こヽろ(ざし)…國冬本
へだて〈の〉こる…加持井宮家旧蔵本
のこるべうやは…三条西本
ふかや…別本御物本
さま(に)…阿里莫本
かたなを…國冬本
なを(/\)…麥生本、阿里莫本
(すこし)さしいてヽ…麥生本、阿里莫本
(すだれのつまよりすこしおしいてすそを)…池田本
(すそを)…別本陽明家本、保坂本、國冬本
すへ…麥生本、阿里莫本
ひきそはみて…別本陽明家本
ひきそはめて…保坂本、國冬本、…麥生本、阿里莫本
やまとのかみ(の)…三条西本、加持井宮家旧蔵本
やまとのかみか…大島河内本
なりければ…別本陽明家本、保坂本、國冬本
( )内は、欠落部分
考察
各諸本の内、「ちかくてを」とし、他の箇所も一致する
横山本(横山敬次郎氏蔵)、
池田本(桃園文庫本)、
肖柏本(桃園文庫本)、
河内本(七毫源氏を除く。)から書写したものの可能性が高い。
なお、原文が「なを」なのか「なほ」かは見る必要がある。
尾州河内本は、なをちかくてを…なほ/\と(44オ)
飯島本は、猶ちかくてを…なを/\と(56オ)
その他参考書
河内本源氏物語校異集成
尾州河内本源氏物語
飯島本源氏物語
源氏物語榊原本(夕霧は欠)
15.8cm×14.8cm裏面は無字
平成27年8月7日 貮 羇旅歌 旅の夜風 連
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