新古今和歌集の部屋

歌論 無名抄 哥をつくるにをとる事

覺盛法師が云
「哥はあら/\しくとめもあはぬやうなるひとつのすがた也。それをあまりさいくみてとかくすればはてにはまれ/\物めかしかりつる所さへうせてなにゝてもなきこものになるなり。」
と申しき。さもときこゆ。
秀經公哥に、
  としをへてかへしもやらぬおやまだは
  たねかす人もあらじとぞおもふ
この哥ゑんなるかたこそなけれどひとふしいひてさる躰の哥とみ給べき。としへてのち彼集のなかに侍をみれば、
  しづのをがかへしもやらぬをやまだに
  さのみはいかがたねをかすべき
これはなをされたりけりにや。いみじうけをとりておぼえ侍也。よく/\心すべきことにこそ。

 

※秀経→季経

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