古今和歌集 巻第十六 哀傷歌
811-819
よみ人しらす
それをたに思ふ事とてわかやとを
みきとないひそ人のきかくに
あふ事のもはらたえぬる時にこそ
人のこひしきこともしりけれ
わひはつる時さへ物の悲しきは
いつこをしのふなみたなるらむ
藤原おきかせ
うらみてもなきてもいはむ方そなき
鏡に見ゆるかけならすして
読人不知
夕ざれは人なきとこをうちはらひ
なけかんためとなれるわかみか
わたつみのわか身こす波立かへり
あまのすむてふうらみつるかな
あらを田をあらすきかへしかへしても
人のこゝろを見てこそやまめ
ありそ海の濱のまさことたのめしは
わするゝ事の数にそありける
葦邊より雲ゐをさして行鳫の
(いやとほさかるわか身かなしも)
「夕ざれは」に濁点があり「わかやとを」、「わひはつる」に濁点は無し。
平成28年3月15日 壱