新古今和歌集の部屋

光る君へ 藤原惟規斎院中将の許へ 今昔物語集

 

をしへて! 佐多芳彦さん ~斎院の中将のもとへ! 塀を乗り越えた藤原惟規 - 大河ドラマ「光る君へ」

をしへて! 佐多芳彦さん ~斎院の中将のもとへ! 塀を乗り越えた藤原惟規 - 大河ドラマ「光る君へ」

NHK公式【大河ドラマ「光る君へ」】風俗考証を担当する佐多芳彦さんに、斎院などについて伺いました。<ドラマをもっと楽しむコラム>

大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 

こんな話がある。

むかしむかし、大斎院と申し上げるのは、村上天皇の皇女選子内親王樣におはします。和歌などを特に上手に読まれました。

その斎院樣がおはしける時、紫式部の弟に藤原惟規という者が、斎院の蔵人であった時に、彼の斎院樣に仕えている女房の斎院の中将に、忍んで通おうとして、夜な夜なその局に行ったのですが、斎院の侍どもが、惟規が局に入るのを見かけて、怪しく思って、「お前は誰だ!」と尋問すると、局に入る時だったので、誰とも言う事が出来なかったので、侍たちは、御門などを閉じてしまい、出る事も出来なくなって、その通っていた女房が思い悩んで、斎院樣に、「これこれこう言う事です」と申し上げたら、御門を開けて出させましたが、惟規が出て行こうとして、この樣に歌った。

  神垣は木の丸殿にあらねども名告りをせねば人咎めけり
 (斎院は御神域なのに、天智天皇の朝倉宮の木の丸殿の樣に、名告りをして入らないと人に咎められてしまう)

と。後に、斎院樣が、この歌を自ら御聞き召して、大変良い歌だと思はれまして、
「木の丸殿の御歌と故事の事は、自分こそ聞き伝える者なのです」と仰せらました。

この惟規の子孫に、盛房という者が伝え聞いて、他の人に語ったものだった。彼の惟規は、極めて和歌の上手であったとなむ語り伝へられましたと。

今昔物語集巻第二十四 藤原惟規読和歌被免語 第五十七
今昔、大斎院と申すは邑上天皇の御子に御座す。和歌をなむ微妙く読せ給ける。其の斎院に御座ける時、藤原惟規と云ふ人、当職の蔵人にて有ける時に、彼の斎院に候ける女房に忍て物云はむとて、夜々其の局に行たりけるに、斎院の侍共、惟規局に入ぬと見て、怪がりて、「何なる人ぞ」と問ひ尋けるに、隠れ初にければ、否誰とも云はで有けるを、御門共を閉てければ、否出でで有けるに、其の語ひける女房思ひ侘びて、院に、「此る事なむ候ふ」と申ければ、御門を開て出しけるに、惟規出とて、此なむ云ける、

  かみがきはきのまろどのにあらねどもなのりをせねば人とがめけり

と。後に、斎院、此れを自然ら聞食して、哀がらせ給て、
「木の丸殿と云ふ事は、我れこそ聞し事なれ」とぞ仰せられける。彼の惟規が孫に盛房と云ふ者の伝へ聞て語りし也。彼の惟規は、極く和歌の上手にてなむ有けるとなむ語り伝へたるとや。
 
 

新古今和歌集巻第十七 雜歌中
 題しらず
            天智天皇御歌
朝倉や木のまろ殿にわがをれば名のりをしつつ行くは誰が子ぞ

よみ:あさくらやきのまろどのにわがをればなのりをしつつゆくはたがこぞ

意味:筑前の丸太で仮に作った宮殿に朕がいると自分の名前を告げながら入ってくるものは、何所の家のものであろうか

備考:斉明天皇の御時百済救済の西征の際、皇太子として同行したと伝えられている。神楽歌が天智天皇作と伝えられたもの。十訓抄第一 可施人惠事一ノ二には伝承話を掲載。

 
大河ドラマ 光る君へ第三十五回では、まひろの弟惟規が、斎院に居る中将の君(小坂菜緒さん)に忍び込んで、院の侍に見つかり、捕らえられた。これを、和歌を詠んで、大斎院が解き放ったと自慢するシーンがあった。
以前、このネタで使われるとは知らず、藤原惟規と言う人物紹介の意味で、十訓抄で紹介した。これは、今昔物語集にもあるので、今度は意訳して紹介する。
日向坂46と言うのも、小坂さんも初めて拝見した。

 

第三十五回「中宮の涙」に小坂菜緒さんが斎院の中将役で出演! - 大河ドラマ「光る君へ」

第三十五回「中宮の涙」に小坂菜緒さんが斎院の中将役で出演! - 大河ドラマ「光る君へ」

NHK公式【大河ドラマ「光る君へ」】第三十五回「中宮の涙」に小坂菜緒さんが斎院の中将役で出演。コメントをご紹介します。

大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 

 

27:42
惟 規  はあ、はあ、はあ。 
斎院の侍 まて~!いたぞ~!まて~!
惟 規  はあ、はあ、はあ。
中将の君 惟規樣。
惟 規  はあ、はあ、はあ。
斎院の侍 何をしておる!
惟 規  中将の君~!
中将の君 惟規樣。
惟 規  ああ~。はあ、はあ。
 
まひろ  斎院の塀を越えたというの?
惟 規  そうだよ。
まひろ  男が足を踏み入れてはならない斎院の女房に?
惟 規  禁忌を犯すからこそ、燃え立つんでしょう。
まひろ  なんて事を。
惟 規  姉上だって、そうだったもんね。
まひろ  私は、禁忌を犯してなんかいません。
惟 規  身分の壁を越えようとした癖に。
まひろ  そんな昔の事も忘れたは。
惟 規  昔の事なのかな~。
まひろ  浮かれるんじゃありません。
まひろ  それで、どうやって解き放たれたの。
惟 規  それがさあ。捕まった時、とっさに歌を詠んだんだ。
       神垣は木の丸殿にあらねども名告りをせねば人咎めけり
     て。そしたら、斎院の選子内親王樣が俺の歌を見て、良い歌だから許してやれと仰せ下さったんだよ。
まひろ  そんな良い歌とは思えないけど。
惟 規  天智天皇の引き歌故、内親王樣の御心を掴んだのかもなあ?俺も中々のもんだよ。
まひろ  何が中々なのよ。
惟 規  姉上の弟故。歌が上手んだよ。
まひろ  もう、斎院には近づかない事ね。
惟 規  そうはいかないよ。俺の事をまっている女子がいるのだから。
まひろ  そういう事をやっていると、罰が当たって早死にするはよ。貴方も、貴方の思い人も。
 
参考
新潮日本古典文学集成 本朝世俗部一 阪倉篤義、本田義憲、川端善明 校注
 
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「平安ミステリー」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事