清見潟
かくうちながめて行くほどに、はつあきかぜも身にしみて、いつしか野邊のけしきもあはれに、蟲の聲々おとづれ、たがことづてを待つとしもなきこしぢのかりもおとづれ、心細くおぼえて
秋立つと人は告げねど知られけりみやまのすその風のけしきに
おぼつかな秋はいかなるゆゑのあればすぞろに物の悲しかるらむ
白雲をつばさにかけて飛ぶかりのかどたの面の友慕ふなり
昔なりひらの中將、つたかへでに道迷ひ、夢にも逢はずなり行くとながめけむ、うづのやまべを過ぐるにも、むかしびと戀しきここちして、きよみが關に着きぬれば、沖のなみみぎはの岩に砕け、月の光に満ちたる有樣聞きしよりもわりなくおぼえければ
きよみがた沖の岩越すしらなみに光をかはす秋のよの月
※おぼつかな
367 第四 秋上
※白雲を
502 第五 秋下
※夢にも逢はず
904 第十 羇旅歌 在原業平