新古今和歌集の部屋

源氏物語 浮舟 をちの長雨

源氏物語 浮舟

         薫

水勝る遠の里人
       如何ならむ

晴れぬながめに
 かき
   暮らす
       比


よみ:みづまさるをちのさとびといかならむはれぬながめにかきくらすころ

意味:春の長雨で、宇治川の水嵩が増している、遠くの宇治にいるお前は、どうしているだろうか?晴れない景色を眺めて、心までも暗くなってしまう頃だよ。

備考:彼方(をち)と宇治の京阪宇治駅辺りの地名乙方、長雨と眺めの掛詞。

      浮舟

里の名を

 我が

  身に知れば

      山城の

 宇治のわたりぞ

  いとど

    住み憂き


よみ:さとのなをわがみにしればやましろのうぢのわたりぞいとどすみうき

意味:里の名前を私の身に置き換えてみると、山城の憂し気分を思わせる宇治の辺りはいっそう住んでいるのが辛くなります。

備考:宇治と憂しの掛詞。「世をうぢ山と人は言ふなり」(古今集 喜撰)を本歌とする。

     浮舟

 徒然と
   身を
    知る雨の
  小止まねば

     袖さへ

 いとど

   水嵩勝りて


よみ:つれづれとみをしるあめのをやまねばそでさへいとどみかさまさりて

意味:身を知る雨である涙が長雨と共に止まないので、袖まで一層濡れてしまいます

備考:本歌 伊勢物語百七段

つれ/"\の詠にまさる涙川袖のみひぢて逢よしもなし(古今集 業平の朝臣の家に侍りける女のもとによみてつかはしける 藤原敏行

数/"\に思ひ思はずとひがたみ身をしる雨はふりぞ増れる(古今集 かの女にかはりて返しによめる 在原業平


読癖入伊勢物語 百三〜百七段 - 新古今和歌集の部屋

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