よく/\くふうして納得すべき事なり。
同
○ものおもはでかゝる露やは袖におくながめてけりな秋の夕暮
秋のゆふべをながめやるにさしてそれとしも悲
しきゆへもなし。されども袖をみれば露のあ
まるばかり。われは秋の夕べをながむるともおもはね
ど夕感にひかれて覚えず袖のしほれたるかと
ふしんしてさてはながめけるにわれはなかむとも
おもはざりつるにといひさしたる哥なり。作意
ふかくこもりて風情末代にもありがたく言
語道断不思議の御哥なるべし。題は秋の夕べ也。
※さしてそれとしも→さしてそれとして(常縁聞書、幽斎補筆本より)
※露のあまるばかり→露のあまるばかり也(常縁聞書、幽斎補筆本より)
※夕感に→夕の感に(常縁聞書、幽斎補筆本より)
※さてはながめけるに→さてはながめけり。(常縁聞書、幽斎補筆本より)