新古今和歌集の部屋

新古今集聞書他古注書写本 秋歌上 重家 蔵書

                      たかまど   まと
廿二三日比を下弦と云り。高円山を的によみ
                         なせり。

        従三位頼政

こよひたれすゞ吹風を身にしめて吉野ゝたけの月
                         をみるらん

すゞ吹とはちいさき竹の事なり。山伏のすゞかけ

など云説はわろし。このよしのゝたけの月を

誰か見るわれよりは身にしめてみれとよめる。いく

いくり然ばわれのみかゝる所の月を見るとしさん

のやうなればよしのゝたけの月を思るやりて

よめると見て可然をや此心にて猶作者のすゞ

ろおもしろきをや。

      重家

○月みればおもひぞあへぬ山たかみいづれのとしの雪にか
                                 なるらん

秋のよの月さゑたるを見るに遠山万里の更行

有さま只雪のふりつみたるがごとし。更に月

とも雪とも分ぬよしなり。思ひぞあへぬとは

てんざんずわきまへいづれのとしのゆき かつほべくまよいつきうじつのたま
天山不弁何年雪 合浦可迷旧日珠といふこゝろを

よめる哥なり。月をば雪にも玉にもたとへ

侍るなり。

 

※出典 常縁聞書

※天山不弁何年雪 合浦可迷旧日珠
和漢朗詠集 月
 禁庭翫月 三統理平
天山不弁何年雪 天山に弁(わき)まへず何れの年の雪ぞ、
合浦迷旧日珠 合浦には応(まさ)に迷ひぬべし旧日の珠に
ただし、当該本は常縁聞書のまま記載。

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