昨夜、仮想イラク戦ともいえるテストマッチ・シリア戦が行われ引き分けました。試合の勝った負けたより、13日に迫ったイラク戦(開催地はイラン・テヘラン)にどう臨むか、どこを修正して、どこをストロングポイントにしていくか、たった1試合ではありますが、見極めなくてはなりません。
指揮官も言います。選手たちも言います。そしてジャーナリストたちも口を揃えて言います。「イラク戦がロシアW杯への道を拓く天王山、まだ先があると考えたら絶対に道は拓けない、何が何でもイラク戦を勝ちに行く」と・・・。
それだけ重要なイラク戦に向けた実戦テストのシリア戦、今日の主人公はハリル監督でもなく、得点源の前線攻撃陣でもありません。
日本代表の精神的支柱と長らく言われてきた長谷部誠選手のあとを引き継いでキャプテンマークを巻いている吉田麻也選手です。
なぜなら、ハリル監督は、この重要な意味を持つイラク戦と、それに先立つシリア戦を前にして吉田麻也選手と組むセンターバックのパートナーを、長らく努めてきた森重真人選手から昌司源選手に変えるという決断を下したからです。
これは明らかに吉田選手に対する絶大な信頼に基づいているということです。この2試合のキーマンは吉田選手であることを内外に示したといえる選考です。
実は、シリア戦に先立つこと1週間前、Number誌928号が発売されました。「サッカー日本代表35人の物語」と銘打った連続インタビュー特集の表紙とトップ記事を飾ったのが吉田麻也選手だったのです。
Number誌を手にとった私は「確かにキャプテンマークを彼が巻いているので表紙か」という程度の認識でページを繰りましたが、トップ記事となった彼へのインタビュー記事を読んで、大変な感銘を受けたのです。
今回のインタビューはNumber誌編集部の松本宣昭さんという記者が行なったようですが、私は記者自身も「麻也ってスゴイなぁ」とリスペクトしながらペンを進めたのではないかと思うほど、よく書けていると思いました。
書き手というのは、ともすれば読者に「いい選手」だと思って欲しいと、大仰に書きたくなるものですが、そうせずに、ちょうど過不足のない表現で書き上げたことで、一層彼の素晴らしさを引き出せたように思います。
今回この記事を読んで痛感したのは、日本を代表する、しかもキャプテンマークを巻く立場にあることの価値がいかに大きなものであるか、単に選手として、あるいはアスリートとして体力的、技術的に優れているだけのことではなく、精神的に、あるいは人柄というか人格的なものが、一般人とは比べ物にならないほどのレベルにあるということです。
彼は30歳ですが、同年代の若い皆さんとの比較どころか我々人生の大半の時間を費やしてきた一般人の多くの人間と比べても、はるかに自己を直視し足らざるを戒め、鍛え、学び、努力している結果として、人間的に成長し、日本代表として長くプレーし続ける中で、更なる成長を重ねていることが感じられます。
彼は、決して10年前からそうした水準にあったわけではないと思います。この10年の間に、海外でのレベルの高い環境で戦い続けている中で、一つはコミュニケーション力、一つはモチベーターとしての能力、一つは逆境に陥った時の脱出力、そういった能力を身に着け、さらにその質を高めていったのです。
そのような彼の進化について、彼らしい表現の仕方で受け答えしている部分がありますので紹介します。
「数か月前、リーグ戦で安定したパフォーマンスを続ける彼に『現在の状態は、吉田史上最高なのでは?』と訊ねたら、怒られてしまった。『今年が吉田史上最高』なのではなく、『これまでも、常に吉田史上最高を更新してきたんだ』と。」
また英語力の上達については、なるほどと思わせる次のようなやりとりがあります。
「日本の義務教育って、やっぱりちゃんとしているんですよ。特に文法。僕は中学の頃から、英語だけは勉強していたから、文法はわりと頭に入っている。だから、とにかく単語を覚えて、その文法にあてはめればいい。・・・・」
リスニングに関しては「これが一番しんどいんですけど(中略)例えば日本語をうまく話せないイギリス人が、日本人が盛り上がっている会話にポツンと入ることを想像してみてください。その人つらいでしょ?でも、これが一番大事。自分から会話に入って、もしも話題の中心になれば、聞く力も、話す力も一気に鍛えられますから」
優れたアスリートに共通することですが、一つひとつの体験を決してゆるがせにせず、成長の糧にして次の局面に生かす姿勢。吉田麻也選手にもその姿勢が貫かれており、それが長い時間の中で確実に自分自身を成長させていることがわかります。
そして、その結果として、我々の比ではない、はるか高みのステージで人生を送っているのです。成長に成長を重ねた人間しか存在が許されない、高みの世界で仕事することを許されていると言ってもいいと思います。
リスペクトします。敬意の念を抱かずにはいられません。私は相当高齢ですが、まだまだ、その生き方に学びたいと思います。もちろん比べ物にはならないレベルですが、自己を直視し足らざるを戒め、鍛え、学び、努力する、そのことを見習うことはできます。
そう思いませんか? はなから「彼らとオレらは違う、そもそもムリ」と言ってしまわずに。
今日は、Number誌の中身からの引用はほとんどしませんでしたが、ぜひ読んでみてください。
さすがにトップ記事になっているだけの価値があります。
では、また。
指揮官も言います。選手たちも言います。そしてジャーナリストたちも口を揃えて言います。「イラク戦がロシアW杯への道を拓く天王山、まだ先があると考えたら絶対に道は拓けない、何が何でもイラク戦を勝ちに行く」と・・・。
それだけ重要なイラク戦に向けた実戦テストのシリア戦、今日の主人公はハリル監督でもなく、得点源の前線攻撃陣でもありません。
日本代表の精神的支柱と長らく言われてきた長谷部誠選手のあとを引き継いでキャプテンマークを巻いている吉田麻也選手です。
なぜなら、ハリル監督は、この重要な意味を持つイラク戦と、それに先立つシリア戦を前にして吉田麻也選手と組むセンターバックのパートナーを、長らく努めてきた森重真人選手から昌司源選手に変えるという決断を下したからです。
これは明らかに吉田選手に対する絶大な信頼に基づいているということです。この2試合のキーマンは吉田選手であることを内外に示したといえる選考です。
実は、シリア戦に先立つこと1週間前、Number誌928号が発売されました。「サッカー日本代表35人の物語」と銘打った連続インタビュー特集の表紙とトップ記事を飾ったのが吉田麻也選手だったのです。
Number誌を手にとった私は「確かにキャプテンマークを彼が巻いているので表紙か」という程度の認識でページを繰りましたが、トップ記事となった彼へのインタビュー記事を読んで、大変な感銘を受けたのです。
今回のインタビューはNumber誌編集部の松本宣昭さんという記者が行なったようですが、私は記者自身も「麻也ってスゴイなぁ」とリスペクトしながらペンを進めたのではないかと思うほど、よく書けていると思いました。
書き手というのは、ともすれば読者に「いい選手」だと思って欲しいと、大仰に書きたくなるものですが、そうせずに、ちょうど過不足のない表現で書き上げたことで、一層彼の素晴らしさを引き出せたように思います。
今回この記事を読んで痛感したのは、日本を代表する、しかもキャプテンマークを巻く立場にあることの価値がいかに大きなものであるか、単に選手として、あるいはアスリートとして体力的、技術的に優れているだけのことではなく、精神的に、あるいは人柄というか人格的なものが、一般人とは比べ物にならないほどのレベルにあるということです。
彼は30歳ですが、同年代の若い皆さんとの比較どころか我々人生の大半の時間を費やしてきた一般人の多くの人間と比べても、はるかに自己を直視し足らざるを戒め、鍛え、学び、努力している結果として、人間的に成長し、日本代表として長くプレーし続ける中で、更なる成長を重ねていることが感じられます。
彼は、決して10年前からそうした水準にあったわけではないと思います。この10年の間に、海外でのレベルの高い環境で戦い続けている中で、一つはコミュニケーション力、一つはモチベーターとしての能力、一つは逆境に陥った時の脱出力、そういった能力を身に着け、さらにその質を高めていったのです。
そのような彼の進化について、彼らしい表現の仕方で受け答えしている部分がありますので紹介します。
「数か月前、リーグ戦で安定したパフォーマンスを続ける彼に『現在の状態は、吉田史上最高なのでは?』と訊ねたら、怒られてしまった。『今年が吉田史上最高』なのではなく、『これまでも、常に吉田史上最高を更新してきたんだ』と。」
また英語力の上達については、なるほどと思わせる次のようなやりとりがあります。
「日本の義務教育って、やっぱりちゃんとしているんですよ。特に文法。僕は中学の頃から、英語だけは勉強していたから、文法はわりと頭に入っている。だから、とにかく単語を覚えて、その文法にあてはめればいい。・・・・」
リスニングに関しては「これが一番しんどいんですけど(中略)例えば日本語をうまく話せないイギリス人が、日本人が盛り上がっている会話にポツンと入ることを想像してみてください。その人つらいでしょ?でも、これが一番大事。自分から会話に入って、もしも話題の中心になれば、聞く力も、話す力も一気に鍛えられますから」
優れたアスリートに共通することですが、一つひとつの体験を決してゆるがせにせず、成長の糧にして次の局面に生かす姿勢。吉田麻也選手にもその姿勢が貫かれており、それが長い時間の中で確実に自分自身を成長させていることがわかります。
そして、その結果として、我々の比ではない、はるか高みのステージで人生を送っているのです。成長に成長を重ねた人間しか存在が許されない、高みの世界で仕事することを許されていると言ってもいいと思います。
リスペクトします。敬意の念を抱かずにはいられません。私は相当高齢ですが、まだまだ、その生き方に学びたいと思います。もちろん比べ物にはならないレベルですが、自己を直視し足らざるを戒め、鍛え、学び、努力する、そのことを見習うことはできます。
そう思いませんか? はなから「彼らとオレらは違う、そもそもムリ」と言ってしまわずに。
今日は、Number誌の中身からの引用はほとんどしませんでしたが、ぜひ読んでみてください。
さすがにトップ記事になっているだけの価値があります。
では、また。