【住職の法話。考え方を少し変えるだけで、苦しい人生が、楽しい人生に】 時折「戒名はいるか、いらないか」の話が。自分の家のルーツを知る為の手立てとして、これ以上の資料はない。戒名に使用されている漢字で。
【 今日、2月15日(恐らくこの日)は、釈尊入滅の日。所謂、涅槃会。投稿写真は、わが寺の『釈迦涅槃像(青銅造、長さ5メートル)』 】
檀家男性が「SNS の中の知人のチェックをしてると、他界された人達の名前が何人か。名前まで消去するは、寂しい感じがして。住職はその様な人達をどうされてますか」と。「そのまま消去せずに残してるよ。名前を見たら、その人達を思い出す事が出来るし、もしかしたら、向こう(浄土)から、メールや電話が来るかもしれないし」「んっ、えっ、メールが、ですか」「ロマンだよ。ロマン。拙僧にとっては、お墓や仏壇も、同じ意味合いなんだよな。その前に座ったら、故人を思い出す事が出来るでしょ。その場所に霊魂が『宿っている、宿っていない』などは、そう大きな問題ではないかな」と。
この檀家男性が「ところで住職。戒名(送り名)って、必要なんですかね」と。「例えば、拙僧の俗名は、山本博文でして、『山本博文位』では、どんな人生を歩んだ人か、さっぱりわからんでしょ。わが寺には、江戸時代後期から過去帳に戒名が残っている檀家が。これは、何を意味するかといえば、誰1人として代々の子孫が、親を粗末に扱わなかった、という証拠なんだよね。拙僧の山本家は、明治初期からの戒名しか、過去帳に残ってない。恐らくその頃に、親不孝者がいた、という事かもね。戒名に使われている漢字を見ると、この人は、武士だったのか、百姓、漁師、車引き、坊主だったのか、とか、いつ頃、どの様に他界されたのか、までわかる事が。建前は、向こうには浄土があり『名無しの権平』で逝かせる訳にはいかないので、住職は戒名を授けているが、そんな想像上の事よりも、私達の家のルーツを知る為の資料としては、これ程に参考になる物はないよね。
更に、この檀家に拙僧「時折『家のルーツを知りたい』と若い人達が『過去帳を見せて下さい』とお寺に来られる事が。先祖の職業、その他様々を戒名から知る事で『本当に存在してたんだ』と、グッと先祖が身近なものに。拙僧は坊主の仕事で、何が最も好きかと言えば、戒名を付けてあげる事。その人(故人)の人生を熟考し、100年後の子孫にまで、先祖の生き様が想像出来る様な戒名付け(授戒)を。所謂『虎は死して皮を留め、人は死して名を残す』ですよね。戒名は、生き様を子孫に伝える役目も担ってるんだよね」と。
更に、この檀家男性が「ところで、戒名料って、高額過ぎると思いませんか、住職」と。「拙僧のお寺は、戒名は無料。全て『〇〇院〇〇〇〇居士(大姉、不生位)と授けているよ。お寺によれば、100万円、50万円は、ザラに。『こんな高額なら、戒名など貰わんでいい』と言う人達が増加しても仕方がない事だよね。ただ、戒名料が高額になったは、お寺側から出てきた話ではないんだよな。戒名の『院号、居士、大姉』は、昔は、お寺に貢献(お布施、米、野菜などの奉納、境内掃除、法要の奉仕など)された人達だけが貰えたもの。貢献されてない人達は、幾らお金を積んでも与えられなかった。ところがこの国は、経済繁栄(昭和の時代)と共に成金さん達が。その人達の子孫が『私の父は、社会的地位も財産もある人間。その人の戒名が、〇〇〇〇、の4文字では、葬儀の時に恥を』と、お寺側に申し立てを。昔は、戒名を見たら、欲得なしにお寺に貢献された人(人徳者)かどうかが、一目瞭然の時代。そこでお寺側が『そこまで、院号、を望むなら、お寺に貢献して、院号、の戒名を頂いた他家の檀家から文句が出ない様に、それなりの戒名料を払いなさい』が高額戒名料の始まり。つまり、在家の見栄っ張りから始まったもの。それを後々坊主が逆手を取って、お金儲けに走り出し、現在の様な高額戒名料に。それぞれのお寺さんの事情もあるでしょうが、まあ、そろそろ見直された方がいいかな。政界(憲法を含む)も、財界も、教育界も含め、そろそろ様々、見直す時期に来ている様に思えますな」と。
【余談】
檀家90代爺様が拙僧に「戒名は生きてる内に貰うが、本当なんだろ。戒名くれや」と。横にいた婆様が「住職。遠慮せず、名付けて下さいませ」と。「じゃ、『天寿院好色一代居士位』ってえのは、どうだい」と。爺様絶句、婆様爆笑。すると爺様「婆さん。今すぐにわしと別れて、またすぐにわしと結婚してくれ。やり直す。そげな戒名貰ったら、100年先の子孫にまで『この先祖、よっぽど、色ボケだったんだね』と笑い者に。どうにかならんか、住職。じゃ、今日から死ぬまでの爺様を見て、戒名を付けようかね。『天寿院伴侶一途居士位(生涯、奥様一筋の人生)』と付けられる様な晩年にせにゃよ」「任せとけ」と爺様が。
次回の投稿法話は、2月20日です。