JUNSKY blog 2015

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マクローリン & ヒメノ

2006-10-16 00:40:19 | 映画レビュー
ベトナム戦争三部作でアメリカ帝国主義を問い続けて来た
オリバー・ストーン監督が取上げた
「ワールド・トレード・センター」(WTC)
  を見た。

他のサイトでは厳しい評価もあったが、私は評価したい。

亡くなった消防士や警察官を英雄視する国威発揚映画ではない。
 彼らを利用して、アフガニスタンやイラクに無実の罪を着せ
  戦争を仕掛けた、ブッシュ大統領とは全く反対の立場である。

多くの亡くなった人達の最後の瞬間に至る思いと苦悩を
 生還した二人を描くことによって、描いているのである。

「ユナイテッド93」
  では、主として機内で闘った乗客の視点から描かれていたが、
こちらでは、現場で救出活動中に行方不明となった警察官の家族
の心配し、心が動揺するさまを描いている。



映画の主人公 マクローリンとヒメノ は最後に満身創痍ながら
救出されるが、映画の冒頭でWTC現場に向かう大勢の警察官や
消防士達を描いており、彼らは帰らぬ人となったことを想起させる。

マクローリン & ヒメノ に家族との生活があったように、
911で亡くなった2千人を超えるそれぞれの人々に家族や生活が
あったことを、この映画は忘れてはいない。



このテロを起こしたのが誰であるかなどの犯人探しは一切無い。
一般的なテロに対する怒りは表現されるが、アルカイダやイラクなど
を特定することも無い。 
冷静な表現である。

生き埋めになった仲間を救うために、命懸けで救出活動をするという
人間愛と、それを待つ家族との家族愛がもう一つのテーマであった。
こういう表現を嫌う人も居るようだが、私は否定しない。

「大津留公彦のブログ2」では
【海兵隊員がアクション映画の主人公よろしく振舞う安易な作り方にいたく失望した。】
と書いているが、これは極めて浅薄な捉え方だと思う。
海兵隊が世界中で侵略行為を行なっているという事象だけから物事を見ている。
そういう面を持っている海兵隊の中にあって、命を賭して自らの意志で
救出に向かった海兵隊員が実際に少なからず居たということに注目するべきだ
と、私は思う。


一方、ブッシュ大統領のTV演説を市民らが見ている場面が挿入され、
それが極めて空虚なものであることを明示している。
その場面の次には、ブッシュが大統領専用機で飛び立ったという
TV映像が挿入され、「ユナイテッド93」でもそうであったように
警察官や消防士が命懸けで救出活動をしている時に
「ブッシュ大統領は逃げた!」という印象を強く与えるものとなった。

映画の最後に犠牲者の数が出てくる。
そして、現場から救出された人達は僅か20名であり、マクローリン
とヒメノは18・19番目の生き残りであることを記す。

エンドクレジットでは「ユナイテッド93」 のときのような
As Himself(本人)という表示はなかったが、
ホームページの解説によれば、実際に現場で作業をした多数の人々が
エキストラとして出演しているという。

そのエンドクレジットに流れる音楽は鎮魂にふさわしい落ち着いた
ものであった。

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