被疑者とされた人の年齢は映画とこの事件とでは相当離れているが、容疑は同じである。
冤罪事件の中でも最も泣き寝入りさせられるケースが多いものの一つがこの種の事件である。
いわゆる「白い目で見られる」と言う点で、被疑者の真実の訴えも“弁解”として多くの人々は聴く耳を持たない。
そして、被疑者は職場も仕事も友人も恋人も失う可能性が高いと言う人権上の問題も大きい。
映画「それでもボクはやってない!」でも一審で、多くの友人の協力も得て、現状再現実験まで行った被疑者の訴えは無視されて有罪判決が下された。
映画は、この有罪判決で終わり、観客に思考を求めている。
今回の最高裁での無罪判決は、今後の捜査や裁判に少なくない影響を与えるだろう。
一方では、痴漢被害者にとっては、「訴えにくい」状況となったかも知れない。
適切な捜査や証拠固めが行われずに、被害者の訴えだけで安易に逮捕してきた捜査のツケが回って来たのである。
女性を利用した痴漢事件を敢えて起こして金銭を要求すると言ういわゆる 「ツツモタセ」的脅迫事件 も多発していると言う。
捜査や取り調べは人権も配慮した上で慎重且つ綿密にして頂きたいものだ。
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以下、朝日新聞記事より
痴漢事件で防衛医大教授に逆転無罪 最高裁が判決
朝日新聞 2009年4月14日19時7分
無罪判決を受けての会見後、逮捕当時の様子を
記者に説明する名倉正博さん
=14日午後、越田省吾撮影
電車内で女子高校生に痴漢をしたとして強制わいせつ罪に問われた名倉正博・防衛医大教授(63)=休職中=の上告審判決で、最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は14日、懲役1年10カ月の実刑とした一、二審判決を破棄し、無罪を言い渡した。一、二審の判断は「必要な慎重さを欠いていた」と指摘し、結論を覆した。最高裁が事実誤認を理由に自ら無罪を言い渡すのは異例。5人の裁判官が審理し、3対2の小差だった。
判決は、満員電車内の痴漢事件について、客観的な証拠が得にくい一方、犯人と特定されると被告には有効な反論が難しいという特徴を指摘し、「特に慎重な判断が求められる」と述べた。最高裁がこう言及したことで、被害者の供述しか証拠がないような場合に起訴するかどうかや、限られた証拠に基づく検察官の立証をどう認定するかなど、捜査や裁判の実務に与える影響は大きいとみられる。警察にとっても、繊維片や体液の採取など科学的な証拠の収集をこれまで以上に求められることになりそうだ。
検察側は、名倉教授が06年4月18日朝、東京都世田谷区内の小田急線で女子高校生(当時17)の下着に手を入れて下半身を触ったとして起訴した。目撃証言などはなく、証拠は女子高校生の「被害を受けた」という供述だけだった。名倉教授は一貫して無罪を主張したが、一審・東京地裁、二審・東京高裁はいずれも女子高校生の供述の信用性を認めて有罪とした。
第三小法廷は、名倉教授にこうした犯行をするような性向が認められないと指摘した。そのうえで(1)女子高校生は痴漢の被害が始まってから一度電車を降りたにもかかわらず、再び同じ車両に乗って教授の隣に立った(2)痴漢行為が執拗(しつよう)なのに車内で積極的に避けていない――などと、女子高校生の痴漢被害に関する供述には疑いがあると判断。「名倉教授が犯行を行ったと断定するには、なお合理的な疑いが残る」と結論づけた。すでに検察官による立証が尽くされていると認め、審理を差し戻さずに無罪と判断した。
無罪の結論は藤田宙靖、那須弘平、近藤崇晴の3裁判官による多数意見。一方、田原裁判長と堀籠幸男裁判官は「女子高校生の供述には信用性が認められる」として、それぞれ反対意見を述べた。
弁護団によると、痴漢事件では98年以降、各地の下級審で30件以上の無罪判決が出たが、最高裁が無罪の判決を言い渡したのは初めて。
朝日新聞(中井大助)
痴漢捜査のあり方検討 無罪判決受け警察庁長官(共同通信) - goo ニュース
共同通信 2009年4月16日(木)19:03
電車内の痴漢事件で、最高裁が14日に無罪判決を言い渡したことに関連し、警察庁の吉村博人長官は16日の定例記者会見で「痴漢事件の捜査のあり方について、多角的に検討していく必要がある」と述べた。警察庁と首都圏、近畿圏の警察本部で痴漢事件捜査の実態を把握し、検討会などを開く。吉村長官は無罪判決に「被害者供述の信用性の問題であり、痴漢事件への捜査に影響があるとは言えない」と指摘。
最高裁、痴漢事件で逆転無罪 「被害供述に疑いの余地」(共同通信) - goo ニュース
防衛医大教授に逆転無罪=電車内痴漢「慎重な判断を」-事件捜査に影響も・最高裁(時事通信) - goo ニュース
痴漢事件 最高裁初の逆転無罪 「司法への不信ぬぐえた」(産経新聞) - goo ニュース