産経新聞Web版にトヨタ・プリウスのリコールに至るトヨタの事情を描いた記事があったので、そのまま引用します。
産経新聞としては中々切迫した記事じゃないかい?
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【トヨタの苦悩】プリウス・リコール問題(上)「極限の燃費」落とし穴(産経新聞) - goo ニュース
2010年2月10日(水)08:05
【トヨタの苦悩】プリウス・リコール問題(下)迷走、消えたV字回復(産経新聞) - goo ニュース
2010年2月11日(木)08:05
【トヨタの苦悩】プリウス・リコール問題(上)
「極限の燃費」落とし穴
2010年2月10日(水)08:05
「品質のトヨタの信頼を取り戻したい」
“デジャブ(既視感)”。3年半前の平成18年7月20日、東京都港区の東京プリンスホテル。当時の渡辺捷昭(かつあき)社長(現副会長)は、リコール問題で会見を開き、こう誓った。
◆“教訓”生かせず
「品質はトヨタの生命線という考えを一層強化する」。9日の会見でこう語った豊田章男社長は、品質担当の副社長として3年半前の会見にも同席していた。
前回は、RV(多目的レジャー車)「ハイラックスサーフ」の部品に強度不足の欠陥があるのを知りながら、国土交通省にリコールを届け出ずに放置。熊本県内で5人が負傷する事故が起き、お客様品質部長ら3人が書類送検された。
なぜ、その教訓を生かせず、トヨタの技術の粋を集めた最先端「プリウス」のブレーキという安全の根幹で不具合が起きたのか。そこにはいくつもの落とし穴が潜んでいた。
当時のトヨタは販売台数世界一を目指し、海外に新工場を次々と立ち上げていた。トヨタ単独の世界生産台数は19年に853万台と、5年前に比べ1・5倍に膨らんだ。増加台数は、昨年の日産自動車の世界生産台数を超える。
当時の奥田碩(ひろし)会長(現相談役)ですら「兵站(へいたん)が伸びきっている」と危惧(きぐ)した拡大路線が、一連の品質問題の根底にあるとの指摘は多い。
もちろんトヨタも品質管理の強化を目的とした「CF(カスタマー・ファースト)活動推進委員会」を設立するなど、手をこまねいていたわけではない。
ただ、その視点は開発・設計段階よりも、生産工程での不具合を防ぐことに注がれていた。
トヨタが“世界最強の製造業”と呼ばれる秘密は、生産工程にある。高品質の維持と、「乾いたぞうきんを絞る」といわれる徹底的な効率化を両立。「トヨタ生産方式」は、世界の製造業のお手本になってきた。
今回のプリウスの不具合は、ソフトの設計段階で起きている。生産重視の風潮が盲点になってはいなかったか。
あるトヨタ幹部は「設計段階でのミスには対応しきれない」と、今の品質管理体制の限界を認めた。
◆複雑すぎる構造
ハイブリッド車(HV)は、“走る半導体”と呼ばれるハイテクの固まりだ。電気モーターとガソリンエンジンを最適のバランスで併用し燃費を向上させるため、さまざまな動きを制御する半導体が、ガソリン車の3倍以上の100個超も搭載されている。
「これまでの知識の延長線上では対応できない世界に突入している」。自動車メーカーの開発関係者は、こう漏らした。
しかも、トヨタは新型プリウスでガソリン1リットル当たり38キロという“極限の燃費”を追求した。
HVには、2種類の動力と同様に停止エネルギーで電気を起こし再利用するための「回生ブレーキ」と従来の「油圧ブレーキ」の2つを搭載。コンピューター制御で使い分けている。
トヨタは「改修を行っても、燃費性能は変わらない」と、燃費向上と不具合の因果関係を否定する。
だが、ライバルメーカーは「うちのHVは常時、回生と油圧ブレーキが同時に利くようにしているので、問題はない」と強調。燃費追求のための複雑なブレーキ制御とは一線を画す。
コンピューターの世界では、ソフトのバグ(不具合)は日常茶飯事だが、命を乗せて走る自動車には許されない。
「HVの構造は複雑で、すぐには理解できない」。トヨタのおひざ元、名古屋市内の販売店の担当者はため息を漏らした。
不断の技術の進歩と品質・安全性をどう両立させていくのか。トヨタが抱える問題は、日本の製造業に共通したテーマでもある。
◇
世界のトップメーカーのトヨタの最先端の新型車で起きたリコール。高い品質と安全性を誇ってきただけにその衝撃と影響は大きい。トヨタで何が起きているのかを探る。
◇
【用語解説】リコール
自動車の構造や性能に欠陥が見つかった場合、道路運送車両法に基づき自動車メーカーなどが国土交通省に届けて無料で回収し修理する制度。国交省はリコールの内容を公表し、メーカーは顧客に通知して速やかに修理する必要がある。リコール以外にも、保安基準は満たしているが、安全上放置できない場合の「改善対策」と、品質改善が目的の「サービスキャンペーン」がある。
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【トヨタの苦悩】プリウス・リコール問題(下)
迷走、消えたV字回復
2010年2月11日(木)08:05
トヨタ自動車が新型「プリウス」などハイブリッド車(HV)4車種のリコール(回収・無償修理)を9日に届け出た問題は、「品質のトヨタ」という看板だけでなく、トヨタという企業自体への信頼を揺るがした。最大の原因は問題発覚以降の対応のまずさだ。
「お客さまの感覚と車両の挙動がずれている。(国の)保安基準に合致すると認識している」(4日、横山裕行常務役員=品質保証担当)。
「すでに改善を実施している。購入車両についても早期の改善を指示している」(5日、豊田章男社長)。
プリウスの問題をめぐる会見はリコール発表以前に2回行われたが、顧客にとって最大の関心事である安全問題について具体的な説明はなく、プリウスの欠陥を認めることもなかった。しかも1月末以降の出荷分に改修を施していたことを当初は積極的に公表する姿勢もみせなかった。
「その都度、的確な説明をしなかったため、内部の意思統一が図れず、対応が遅れた。外部にも混乱している印象を与えた」(共立総合研究所の江口忍主席研究員)のは確かだ。迷走の原因はどこにあったのか。
◆創業家社長を守る?
「昨年6月の就任時から1期でも早い黒字化をと申し上げてきた。とにかく一生懸命やる」。1月8日、豊田社長は報道陣に笑顔で業績回復を誓った。その1カ月後の2月9日、黒字化を目指したシナリオはもろくも崩れ、豊田社長は厳しい表情でリコール発表の会見に臨んだ。
今回のリコール問題では経営トップの説明が遅すぎたことに批判が集中した。昨秋に米国で大規模な自主改修に発展したフロアマット問題以降、豊田社長が報道陣の前に姿をみせる機会は何度もあったが、リコール問題について自分から説明しようとはしなかった。
経営トップの顔が見えなかった理由については、「会社全体で14年ぶりの創業家出身である豊田社長を守ろうとしたのではないか」(証券系アナリスト)との見方が強い。
こうした指摘に反省したのか、豊田社長は9日の会見で「社長然とするのではなく、一人の担当として現場に出る。自分の言葉で語っていこうと思う」と態度を一転させた。「私流のカイゼンと理解してほしい」。米議会での公聴会を意識してか、部分的に英語を交えて海外メディアにも気配りも見せた。
トヨタは平成22年3月期決算で当初、本業のもうけを示す連結営業損益を8500億円の赤字と見込んでいたが、赤字額の見通しは200億円にまで縮小した。「プリウスで販売を伸ばし、章男社長の下での奇跡のV字回復」(関係者)がトヨタの描いたシナリオだが、看板車種のリコールで特別損失の計上が避けられず、このシナリオはもはや存在しない。
トヨタに詳しい東海東京調査センターの加藤守調査部副部長は「就任後から悲願の営業黒字転換に向けてまっしぐらに進もうとする豊田社長に、マイナス要因となる話を周囲が切り出せなかった」とみる。事実、プリウスのリコール発表に先立つ5日時点の会見で、豊田社長は状況を把握できていないのか、具体性に欠ける発言に終始した。
◆米の感情読みきれず
「トヨタは大きくなりすぎて、お客さまからずいぶん遠いところにきてしまった」。豊田社長は昨年10月、日本記者クラブの講演でこう語った。
そんなトヨタの迷走に厳しい反応を示したのは米国だ。世界販売台数で米ゼネラル・モーターズ(GM)を追い越したトヨタへの注目度は高く、3月末に迫ったGMとの合弁工場の閉鎖では従業員解雇が確実視されている。そこに相次いだ不祥事は、対トヨタ感情を悪化させる結果となった。
トヨタは米共和党との関係が深いとされる。民主党のオバマ政権の発足で「結果的に議会でのロビー活動がおろそかになり、米国政府の意図を見抜けなかった」(銀行系アナリスト)ことが、米国での「トヨタたたき」の過熱につながったようだ。
業績悪化や米国での対トヨタ感情の悪化など、重い課題を突きつけられたトヨタの苦悩は深い。(この連載は松村信仁が担当しました)
引用終わり
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