憲法改正について(2)
侘助 憲法改正の本丸は9条だと民主党の岡田氏は言っていた。同じように共産党の志位氏も9条の改正が自民党の狙いだと言っていた。がしかし、弁護士の升永英俊氏はそうではないだろうと、主張しているんだ。
呑助 本当の自民党の狙いは何だとその弁護士の先生は言っているんですか。
侘助 それはね、現日本国憲法にはない「緊急事態」に関する条項だと言うんだ。
呑助 「緊急事態」というと東日本大震災とかの場合を言うんですよね。
侘助 そうなんだ。だから怖いと言うんだ。
呑助 なぜ、怖いんですか。
侘助 日本は地震国であると同時に台風災害の国だからね。「緊急事態」の宣言はやむを得ないと思う国民が多い。だからこの「緊急事態」の条項を憲法に規定することに抵抗感を覚える国民は少ないんじゃないかということなんだ。だから怖いと言うんだ。
呑助 どうして「緊急事態」の条項を憲法に書き込むことが怖い事なんですか。
侘助 升永弁護士さんはヒトラーが政権を取った過程を思い返し、「緊急事態」の条項を憲法に規定したら大変なことになると気付いたと言っている。
呑助 ヒトラーというのはユダヤ人虐殺をしたナチス党を率いた人ですよね。
侘助 そうなんだ。ヒトラーという人はワイマール共和国と云われた当時世界でも最も民主的な国から出てきたとんでもない政治家だった。
呑助 ワイマール共和国とはどこにあったんですか。
侘助 第一次世界大戦後のドイツの国をワイマール共和国と言うんだ。
呑助 どうしてドイツの国をワイマール共和国と言うんですか。
侘助 第一次大戦後、敗戦国ドイツはワイマールという町で憲法を起草した。この新憲法をワイマール憲法と言うんだ。世界で最も民主的な憲法だと云われた憲法を持つ国という意味でワイマール共和国と言うんだ。
呑助 そうなんですか。
侘助 世界で最も民主的な国の中からヒトラーのような最悪な専制的な政治指導者が民主的に選出されたと言われているんだ。
呑助 恐ろしい事ですね。
侘助 この民主的な憲法にはただ一つ欠点があったんだ。
呑助 それは何なんですか。
侘助 それが「緊急事態条項」だったんだ。この「緊急事態条項」の存在がヒトラーという巨悪を出現させてしまったんだ。そのことに升永弁護士さんは気付かれたんだ。
呑助 どうして「緊急事態条項」というのがそんなに恐ろしい条項なんですか。
侘助 首相であったヒトラーは1933年2月27日、国会議事堂に放火した。翌2月28日、大統領であったヒンデンブルクに緊急事態宣言を出させたんだ。その後、直ちに言論・報道の自由を停止し、真実の発信力を持つ者をおおよそ5000人、逮捕、投獄した。その中心人物としてコミンテルン書記長であったディミトロフがいた。ドイツ国民を恐怖が支配する。この恐怖に抵抗する術を失った国民の中には無力感と諦めが蔓延した。この中で1933年11月12日国会議員の選挙をするとナチス党の得票数が92.2%に達した。ナチス党の独裁政治の始まりだ。