醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  205号   聖海(白井一道)

2016-02-10 15:04:27 | 随筆・小説

  「ヘイトスビーチ、許さない。」を考える

侘助 「ヘイトスピーチ、許さない。」この言葉が法務省の標語になったようだね。
呑助 「ヘイトスピーチ」とは何なんですか。
侘助 「ヘイト」と言う言葉は英語で「憎む」とか「嫌う」というような意味のようだ。
呑助 憎まれ口をきくというような意味ですか。
侘助 いや、もっと強い言葉で「憎悪する」言葉のようなんだ。
呑助 お役所がわざわざどうしてこんな標語を掲げるようになったんですかね。
侘助 ここ数年前からのことなんだけれどもね、主に在日韓国・朝鮮人を憎むような発言してデモをする人々が出て来たんだ。
呑助 そうなんですか。知りませんでしたね。
侘助 まぁー、恥ずかしい話でもあるしね、大手メディアである新聞やテレビが大きく報道することも無かったから知らない人がいても、しょうがないかもしれないけれどね。
呑助 まぁー、そうですね。
侘助 「朝鮮人は日本から出て行け」とかね、口に出すのが憚られるようなことを言うらしい。
呑助 へぇー、そんな日本人がいるんですか。
侘助 「在日特権を許さない市民の会」という団体を作っている人々がそうなんだ。
呑助 在日の韓国人たちにどんな特権があるんですか。
侘助 永住権という特権があると言っているんだけれども、在日韓国・朝鮮人の方々の大方は、日本で生まれ、育った方々だからね、やむを得ず日本に在住しているわけで、特権でも何でもない。それどころか朝鮮を日本は三五年間にわたって植民地支配したを詫びなければならない立場に日本はあると思うけれどね。
呑助 それで法務省が「ヘイトスピーチ、許さない。」という標語を掲げるようになったわけですか。
侘助 日本政府自らこのような行動を起こしたのかと言うとそうではなく、国連自由権規約委員会が日本政府にヘイトスピーチに対処しろという勧告があってね、このような標語を掲示することになったようだ。
呑助 政府と言うのは腰が重いんですね。
侘助 日本の人権団体が国連の自由人権委員会に提訴した結果、このような対処を日本政府はするようになったんじゃないかと思う。
呑助 正しいと信じることは言わなければ通らないんですね。
侘助 権利とは英語で正しいという意味だからね。無理が通れば道理引っ込むというからね。権利は主張しなければ、権利は権利で無くなってしまう。
呑助 そういうもんですか。
侘助 私が言いたいことは、「ヘイトスピーチ」というカタカナ文字を使うことに反対したいんだ。「間違った民族差別発言は許さない」とか「在日外国人に攻撃的な発言は許さない」というように日本語で標語を作った方が迫力が増すように感じるんだ。カタカナ文字にすると迫力をもって人の心に届かないように思うんだ。
呑助 私のように「ヘイトスピーチ」という言葉を知らない日本人もたくさんいるかもしれませんからね。
侘助 そうだよ。カタカナ文字が新聞や雑誌、ラジオやテレビに氾濫することは日本語の危機かな。